アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

23歳・白露 ー愛しいひとたちー

3.手紙 -3-

その、まるで頭の中へ語りかけてくるような手紙の文字に、夕人は………ただ震えて。

怖い、続きを読むのが…だけど、目を離すことができない、離してはいけないのだと言い聞かせる。






『僕はその頃、中学校の教師をしていたんだ。
だけど、なかなかうまくいかなくて。
受け持つクラスの反抗的な態度の生徒たちに、何を教えていけばいいのかわからなくなって。
注文の多い保護者たちから、まるで叱責するよう問い詰められる毎日。
本来仲間であるはずの教職員達からも、何の助けも得る事はできなかった。
いや、助けてほしいと、求める事をしていなかった、それは僕の方だったのかもしれない。

一人で考え、悩み、ただ答えのない問いに自問自答を続け、出口のない迷路を彷徨った。

そして、もう疲れてしまった。
ーーー生きるということに』




「…………………」



なんて、相変わらず達筆な文字と、生々しくリアルな文章。

まるですぐそこで、過去の出来事を思い出しながら、すぐ隣に座った彼が語りかけているような，そんな感覚に襲われる。





まさか…

区立総合病院……



あの、頃………？


ーーーーー…




……あの、ときの…………