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23歳・白露 ー愛するひとー
3.一緒に、帰ろうよ。 -2-
しおりを挟む「夕人。
もう地元へ何年も帰ってないんだろ?
……帰れなかった理由はなんとなく察するけどさ。
ーーーけど今は、違うだろ?」
速生はすべて、わかっていたのだ。
自分が負い目を感じ、会ってしまうことを恐れて帰省出来ずにいたその5年間のことを。
避けてしまっていたこと。
それを責めるわけでも無く、寧ろ、疎遠になってしまった自分を止まなく愛してくれている、その家族との関係の修復もひっくるめて。
どうにかしようとしてくれている。
なんて、激甘なんだろう?と思う。
ーーーもっと、責めたっていいのに。
俺に対して甘々な、ほんと、まるで、ホールケーキの上に乗っかった砂糖菓子みたいなやつだ。
しつこいくらい甘ったるくて本当に鬱陶しいほどの癖をして、そこに必ず居なくてはならない、たくさんめいっぱい愛したくなる存在。
ーーー…なぁ、速生?
今この瞬間はきっと、お互いにとって一世一代の、とても大切な場面かも知れないというのに。
不謹慎で場違いなことばかり考えてしまうのは、動揺のあらわれであり。
深い深い愛情を受け、限りなく捧げていくことを誓うための、この、尊い時間、速生とのやりとりを。
すべて、余すことなく、胸に刻んでおきたいと願うからだ。
「ーーーどう、かな?夕人。
…………帰省ないか?一緒に。」
この、いま目の前にいる、誰よりもいとしく想う、速生というひとを前に。
彼と共に生きていくことを決めたからこそ、数年ぶりに、帰ることをやっと決められるだなんて。
結局、長い長い、これまでと、そしてこれから。
速生に翻弄され続けていくんだろう。
だけどそれでいい。
ーーーそうありたいと、強く願ったから。
「………うん、わかった。
帰るよ、ーーーー………一緒に。」
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