アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

オガタカイ

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23歳・白露 ー愛するひとー

2.さあ躾の時間だ子猫ちゃん

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「………ふぅーーーっ。」


ーーードスンッ!

速生は勢いよくソファに腰を下ろした。
脚を広げて、腕を組む。
人の部屋にいるというのに、とても横柄な態度。
わざとらしく、
『俺マジで怒ってるよ?』
と言わんばかりの顔つきで、立ち尽くした夕人の顔を下から見上げる。


「夕人から、よ。」

「………は、はぁっ……?な、何を…」

「何って、なんだろうな?
自分で考えてよ。
ほら、俺のこと好きなら、出来るだろ?」

「……………っ…」

「あれ?それとも、嫌い?
帰って欲しい?
こんな意地悪するやつとは……
……もう一緒に居たくもない?」

「そ、そんな、わけ……っ…ない、けど…」

夕人はそれだけ呟くと俯いて、涙ぐむ。




ーーーなんでこんな意地の悪いことばかり言うんだろう。
俺、そんなに信用ないのかな……。
確かに、あの日、いくら偶然でも…瀬戸さんと会ってお茶したことを黙ってたのは、本当だけど……

あれ、?これって……俺が悪いのかな…?

速生の言う通りにしないと…だめなやつ……?

ど、どうしよう………?



悲しそうに涙ぐんだまま下を向いて思い悩む夕人の姿を目にして感じるのは、謎の背徳感、優越感。

速生の中に、ゾクゾクと、サディスティックな感情が湧き上がる。





(ーーそんな可愛い顔で困ったふりしたって、許してあげないよ。
ほら、考えてーー…)


昂るあまりにやついてしまいそうになる顔をこらえて、うつむく夕人の目をじっと見る。


「俺いま、めちゃくちゃ不安なんだけど?
夕人がもしかして、さっき俺がああして電話切らせてなかったら、瀬戸さんとご飯行っちゃってたのかなって……俺といるより瀬戸さんの誘いの方優先してたんじゃないかって、不安で、すごく、腹立ってるんだけど?」


「そっ、そんなわけないじゃん……速生、何言って…」

「すごく心配されてたね?
『大丈夫か?』って。優しいなぁ?
ーーなぁ夕人、どう思ってんの?」

「……………っ…」






女々しくてうざい?
いいよ、別に。
なんとでも言えばいい。

だって不安なんだよ。

ほかの誰かにられるかも、なんて。
思わせるきみも悪いだろ?


だからちゃんと、教えてよ。


“俺だけ”だって。
信じさせてよ?
 











「ーーどうしたら、信じてくれる……?」


潤んだ目で見つめて、問いかける。

初めて見る、こんなにも怒りを露わにする速生の態度と表情に、どうすればいいのかわからなくて。

がっちりとした体格の良い身体が、いつもよりやたらに大きく見えて、ソファから向けられる重い威圧感にただ萎縮してしまう。




「夕人が俺のことをちゃんと『好き』だって、わかったら…かな。
だから、わからせてよ?」

「そんな、の……ど、どうやって…」


「いつも、俺が夕人にしてることだよ。
好きなら、できるよな?
ーーーほら、……乗れよ」

速生はそう言って、目線を下へーー…ソファの座部の、自分の両膝に目配せする。


「…………………っ………」


恥らいを堪え真っ赤に染まる頬。

潤んだ瞳で伏せ目がちに、夕人はゆっくりと速生の座るソファへ1歩,2歩、近寄る。




ーーーギシ……
 

皮革素材でできた肌触りの良い、高級なソファ。

スプリングがしっかり入っているためか沈みすぎない作りのその、白い座面にゆっくりと、恐る恐るーー…片方の膝をつき、少し、体重を掛ける。

「……………………」


ーーギッ、ギシ……


背持たれに寄りかかる速生の肩に手を乗せ、もう片方の膝も、ソファへ。

速生の身体を跨いで、膝の上へ、おずおず、と少しだけ,座るようついた膝の力を抜く。



「ーーーー………っ……」


恥じらいのあまり,言葉が出なくて。

すぐすぐ至近距離にあるお互いの身体。

このよくわからない何ともたとえようのない息苦しさを伴う感情を一体どうすればいいんだろう?

そう考えながら悶々としてしまう。




まるで夕人が、ソファに座る速生に乗り掛かり、

『これから

と迫っているように見えるその光景。





ぞくぞく、うずうず。


(だめだめ、まだ。まだ触っちゃだめだ。
もっと、欲しい。
夕人からーーー…)


「ああ、ーーーいい眺め。
ほら、いまから、どうする?
これで終わり?ーーー…違うよね?夕人。」

「~~~~っ………ど、どうしたら、っ…」



「ーーーやらしいことしてよ。
……夕人、?」


「ーーーっ……、最悪、……っ」


苦し紛れの抵抗の言葉。
夕人は瞳に涙を浮かべて、すぐすぐ目の前にある速生の顔を睨んだ。



そして目をぎゅ、と瞑り、速生の肩に置いた手に少し力を添えてそのまま、顔を近付ける。



ーーー……ちゅ、っ…



微かに震えた唇がゆっくりと、速生の唇にふれる。

「ーー、っ……」




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