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23歳・白露 ー愛するひとー
2.瀬戸、再来。
しおりを挟む『RRRRRRRーーー…』
「!」
静まり返ったリビングに突然鳴り響いた着信音に、二人は同時に肩を震わせる。
(もう!次はなんだよーーー!?)
そう思い速生が音の鳴る方へ目をやると、すぐ側、ソファの横のサイドテーブルに無造作に置かれたスマホ。
突然のコールが鳴っていたのは、夕人の携帯だった。
液晶画面が明々しく光っている。
『RRRRRRRー…RRRRRRRー…』
「夕人、電話、鳴ってる……よ…、………
…………ーーー!」
天井を向いた液晶画面の、“着信”の文字。
見ようとせずともつい目に入ってしまった、そこに映し出されている発信者の名前を見た瞬間。
速生は思わず身体が硬直した。
『着信
瀬戸 和樹 』
(ーーーー………瀬戸?)
ーーー忘れるはずはなかった、この名前。
(瀬戸、って……あの、“瀬戸さん”ーーー?
あのーーー…)
あの、高校生だった当時の自分のーーー…
その頃の記憶が蘇る。
そう、それはーー……
常に仏頂面で他人に塩対応な夕人が、まるで心を許しているかのように、柔らかく、あのキュートな笑顔を向けて話していた……唯一の…相手。
元美術部部長・天才と謳われた、瀬戸。
そう、まさにーーー…強敵。
嫉妬の炎にメラメラと燃えていた、その時の自分を思い出す。
そして今でもやっぱり……
(瀬戸ぉぉおおぉぉ?)
「RRRRRRR………RR、ーーー…」
コール音が途中で切れ,静かになるスマホ。
すぐさま画面に、
“不在着信1件 瀬戸和樹”
と、チカチカ表示される。
「……………」
速生は黙って、なんとも言えない表情でその画面を見下ろしている。
「えっ、切れた?
ーーー電話、誰だろ……」
夕人が急いで速生の座るソファに駆け寄ってくる。
「………………」
サイドテーブルのスマホを手に取り、静かに手渡す。
その鬼のような形相の速生に、夕人はまったく気づかない。
「えっ?あっ…。瀬戸さんからだーーー…。
何だろう、こんな時間に……」
スマホ画面を見て不思議そうな顔をした、すぐ隣に立つ夕人を見て、
速生は『ふぅぅぅぅーーーーっ』と、細く長く重い息を吐く。
なんとも言えない不安と嫉妬と焦燥感に、湧き上がる謎の怒りでぱんぱんになってしまった胸の中の空気を、少しずつ少しずつ抜くように……。
「ふぅぅぅうぅ。……夕人ぉーー?
この際だからもう、はっきり聞くけど。
瀬戸さんと、今もつながってんの?関わってるの?電話したり、会ったりしてんの?」
「えっ………?
な、なんで??
えっ、あ、会ったのは……いつだっけ、あ、確かあの………
速生とまた繋がれた、あの日。
あれが、一番最近かな…」
言った後で、あっうわ、やばい…言わない方が良かったかも?と夕人は青ざめたが、時すでに遅し。
速生の顔がみるみる内に、どんどんと引き攣っていく。
「へ、へぇ~~。ふぅーーん…。
あ、そうなんだぁ……。ああ、あの日ねぇ。
俺との感動の再会を果たした、あの日に?
5年ぶりにやっと会えた俺といろんなこと致したあの日にぃ?
瀬戸さんと、会ってたんだぁ……へ、へぇ~~」
「な、何だよ?なに怒ってんだよ……速生?
別に、俺、瀬戸さんとは何も……」
「夕人さぁ…。
俺のことは、“嫌い”で“顔も見たく無い”で?それからさらに5年も放置しといた癖に?
瀬戸さんとは、その間も会ってたんだぁ?
そ、そう……、うわぁ、ショックすぎる…
な、泣きそう……なにそれ……。
ふぅーん、へぇ~~~~…」
「いや、だから、そんなんじゃないって。
会ってないよ、偶然、たまたまでしか……。
ーーってか、ちょっとかけ直すから黙ってて?」
「……………」
普段やり取りの無い瀬戸からの突然の着信。
ーーもしかしたら急用かもしれない。
そう思い、速生への説明も半ば途中に、夕人は急いでスマホの着信履歴から発信をタップする。
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