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23歳・白露 ー愛するひとー

2.Come on! Royal my cat

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「あの……」「あのさ……」


またもやかぶってしまった声に、お互い見つめ合い、探り合う、大きなソファの上の二人。

「なっ、な、何だよ………?」


夕人が恐る恐る訊ねる。
何を言われるのだろう。聞きたくない、いやだいやだ、バカ、ふざけんなよ。変なこと言ってきたら許さないからな。と目で訴えながら。


「んんっ。えぇっと………、その。
とりあえずさ、夕人は、そのままでいてよ?」


「ーーーえ、っ……?」


「あ、いや……。俺、全部するからさ。
えーっと、何でも。
家借りる時の手続き関係とか、家事だって、別にそういうの……全く苦じゃないし。
その、むしろ夕人は、俺のそばにいてくれるだけで良くて……。
……とりあえずそのままでいて?無理しなくていいから、変わらないで欲しい。そのままの夕人がいいんだ、俺」





そこに存在するだけで、まわりから好かれ,愛され、望まなくとも、何だって与えられてしまう、罪なひと。



偉そうでいて、自信家のようで。

本当はただ威勢を張って見せているだけの。

小心者で意地っ張りの、

ちいさなか弱い子猫ちゃんな、きみ。



きみがいいんだ。

変わったり、しなくていいから。


そのままで、
もっとずっとたくさん、愛させてよ。






「………………そ、そうなんだ…?」

どこかほっとした表情の夕人を、少し不思議そうに一瞥すると、もう一度、その白くて柔らかい頬を手で優しく撫でてみる。


「だから。
どこにも行かないって、俺から離れたりしないって…約束だけ、してくれる?」




愛想を尽かされていたのではなかった…とほっと胸を撫で下ろした瞬間に、きざな言葉と熱い眼差しで真っ直ぐ見つめられたので、唐突すぎてなんだか困ってしまう。

よくよく考えてみると、“前にも同じようなこと、約束させなかったか?”と思いつつもーー…。


ーーまあ。しつこいのは、今に始まったことじゃ無いし。


それで、少しでも不安な気持ちが安らぐなら。

そんな小さな約束くらい、

いくらでもしてやるよ。








「……………うん、わかった」
  


きちんと真面目な表情で、見つめ返して。

小さく頷いた。












「ああ……好き。夕人、マジで好き。
………大好き。」


ーーーぎゅっ……


もう片方の膝もソファの座部につき、夕人の体を抱きしめる速生。

さあ。
いざ、戦闘体制ーーー…と、思ったその時。




『シューーーーッ!』

「………!」


キッチンのガスコンロから聞こえてきた、ケトルの注ぎ口から出続ける湯気と煮沸音。

「あっ、……お湯っ…!」

速生に淹れるお茶のために火にかけていたステンレスケトルの存在を、すっかり忘れていた。



「あの、ちょっとごめん……火、止めてくる」


「あっ……あーーー……うん…」


夕人は速生の腕からするりとすり抜けて、キッチンへ向かった。



ーーカチッ…

ガスコンロの火が消される。


「…………」

このまま紅茶を淹れてあげるのか、それともすぐにソファへ戻って、をするべきなのか、
今から一体どう行動を取ればいいのか……とまたぐるぐると考えながら、夕人はちらっと目の前へ視線をうつす。



広々としたオープンキッチンからは、目の前のリビングがよく見渡せてしまう。

ソファの背もたれ部にしっかりと腰掛けてしまった速生の、肩から上の後ろ姿が目に入る。



なんだか、まるで。

忠実に、黙って静かに、自分のことを待っている大型犬に見えてくる……。



ーーーうわぁ。

ーー…なんか、すごい待たれてる…気がする




その時だった。






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