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23歳・白露 ー愛するひとー
2.リッチなきみ下僕とすれ違い気味
しおりを挟むーーーちゅっ…
「んっ、んぅーーっ…は、っ…」
少し口付けて舐め回しては、また唇を離して、夕人の顔をじ、っと見つめる。
「ーー学校で教師やってる夕人、ほんとセクシーだったぜ?
あんな姿見せられたらさ……安心するどころか、もっと心配になっちゃうじゃん…」
「バカ、な、っ何言って……っ…」
「なぁ、俺にも勉強教えてくれる?夕人せんせ。
課外授業、してよ?」
「ーーーっ…黙れば…?マジで。
…悪趣味………」
「ふぅん………自分家だと、なんか強気じゃん?」
「え、っ……あっ、!……っ!」
ーーギシッ!
ソファに片膝をつき、少し前のめりになった速生の腕が、夕人の肩を押す。
背もたれに当たる簡単に倒れ込んでしまいそうになる華奢な身体を、どうにか片手で押さえて、
……まだ、手籠になんかされないぞ、調子乗んなよ。と目で訴える。
「このソファ、夕人が買ったの?なんか、イメージ違うけど…」
「ーーー…えっ?」
またキスされるのかと思いきや、顔をしっかり見つめて突然そんなことをきかれるので、
えっ?それ、いまきく??と不思議に思いながらも、夕人は答えを探す。
「ーーーあっ…、その。
実はこの部屋、元はモデルルームだったらしくて…。分譲販売として展示してた時の、家具とかそのまま使わせてもらえることになったみたいな…?
ぶっちゃけあんまり詳しいこと、知らないんだ……。」
このマンションへの入居に関わる手続きは、父が全て済ませてくれた。
そのため親類であるにもかかわず、このマンションのオーナーとの直接的なやりとりは全くと言っていいほど無く、ここを自分が借りていると実感できるのは、月一で定期的に郵送している約束の油彩画と、毎月ネットバンクから自動入金振込している気持ち程度の賃料からだけだった。
ーーーあれ…?
よくよく考えたら、俺、自分で何もしてないんだな……。
気づいた時には、ただ身の回りの少ない私物と、絵画製作に関わる画材道具だけを持って、ここで生活し始めていた。
特になにも不思議にさえ思うこともなく、言われるがままに。
ーーー何もしてないから、だから、何も知らないし……。
えっ、でもそれって、もしかして、普通……じゃないのか………?
夕人がこの東京の地で、何不自由なく、何一つ困り事が生まれないよう、すべての基盤は、まわりの人々によって整われていた。
それは夕人が、たくさんのひとたちから溢れんばかりの愛を受け育ってきたなによりの証であり、それらを無償の愛として、何一つ疑うことなく受け取ることのできる夕人がーー…
(夕人………ほんとすごいな、君は。
もはや、貢がせ屋と呼んでもおかしくないかも……現に俺、夕人のためなら何でもできるし。全財産あげちゃうかも。
もし夕人が浪費家だったら、俺、今頃間違いなく破産してるわ。こわっ………)
彼が、”与えられる才能”を持ち合わせているということ。
それはずっとこちらから見ても当たり前のことだったため疑問にも思わなかった。
そしてそれはきっと、これからも続いていくわけで。
「へ、へぇ……。
す、すごい、ですね、夕人さん。
ーーーいや、夕人さまって呼んだ方がいい?」
「な、っ、や、やめろよ……。
悪かったな、上げ膳据え膳で、なんでもしてもらってて……」
「………………………」
ーーーなんなんだよ、速生。
な、なんか……めっちゃ引いてるじゃん、俺のこと、世間知らずの無知でバカなボンボンとか思ってる…?この顔、絶対そうだよな…?
え、ってか、そこで黙るの?
さっきのキスは、続き無し?終わり?えっ??
「………………………」
(何気に夕人って、親族関係もプレミアムだな……。
まあ、元々は東京のタワマン住みのエリート家族のご令息、だもんなぁ。)
東京の私立中に通っていた夕人の、着ていたあの学ラン。
自分と同じ中学に転入してきたあの頃の、15歳の夕人の、あの姿を思い出す。
ほんの数ヶ月だけ見ることのできた、レアな夕人の、お坊ちゃまな姿ーーー…。
(凄いな,俺。
全く忘れてないわ……全然、余裕で覚えてる。
あの頃の夕人の声色とか、髪型とか、学ランの色、マフラーの巻き方、可愛らしい幼さの残る顔立ちーーー…何でも思い出せる。
いや、ほんとにやばい……俺。
そっちの記憶力おばけじゃん。
ストーカー気質すぎて、ほんと、引くわ。)
「……………………」
「……………………」
ーーーなんか、速生、やっぱり引いてる…。
俺が、あまりにも世間知らずのバカって知って、『こんなやつと一緒に住めねぇわ』とか思ってる?
えっ、屈辱すぎる……けど、間違ってないし……なに、このパターン。
もしかして、俺、返却されるかんじ?
『一緒に住むのやっぱやめよ』って言われる流れ?
…………まじで?ほんとに?
通じ合ってるのか、まったくもってそうじゃないのか。
頭の中がひたすら忙しい、全然違うようで、似通った二人。
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