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23歳・白露 ー愛するひとー
1.うそつきで罪つくりなきみと、今夜も -1-
しおりを挟む「ーーおっ、もうこんな時間か。
じゃ、玖賀さん。私からの挨拶はこれくらいにさせてもらって…これから是非とも本校とのお付き合いーー…よろしく頼みますよ。」
校長は腕時計を確認して、席を立つ。
「いえ、こちらこそ。貴重なお時間を割いていただき…ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願い致しーーー…」
速生がそう言いかけて一緒に席を立った、その瞬間。
夕人が後ろからもう一歩、速生の方へ近づいた。
「あの、校長先生。
実は、玖賀さんと僕はーー…旧知の仲なんですけど、今日は久しぶりに会ったところで。
少し、ここでお話してから帰っていただいてもいいですか?」
「そうかそうか、構わないよ。
そこのお茶、淹れてあげたらいいから、事務長オススメの玉露茶。
ゆっくりしていきなさいね。
ーーじゃ、僕は次の仕事があるから…これで失礼するよ」
ーーガチャッ、パタン……
「……………………」
「…………座り…ます?玖賀さん。」
よそよそしく、すこしにやけた目元で、速生に問いかける夕人。
「……………いえ、立ったままで。
あの、僕たち……久しぶり?でしたか?」
そして夕人の顔を、なんとも言えない表情で見つめる。
「おとといぶり、かな。
ーーー驚いた?」
「うん。
……なんで、内緒にしてたんだよ?
あ、いや、えーー……してたんですか?
夕人先生。」
速生のその少し拗ねたように呟いた言葉に、夕人は、ふふ、と笑う。
「だって、そんなこと。
もし俺が、”してやるよ”なんて言ったって、速生は素直にうんなんて言わないだろ?」
「ーーーそれは、そうだけど…、こんなこと。
夕人に何もメリットなんて…」
たとえ自ら望んだことではなかったとしても。
人脈利用による契約取引。
真面目に頑張っている営業職としてのプライドが邪魔をして、どうにも、手放しでは喜べなくて。
「ーーメリットは、あるよ?
まず、誰かさんからの着信の嵐が減るかもしれないってこと……俺がどこでどんな風に仕事してるのか、大体わかっただろ?」
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ーーー絶対、教えてあげないけど。
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