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23歳・白露 ー愛するひとー
1.自社No.1人気商品消せ消せシリーズ
しおりを挟む「ーー株式会社ペンタルの、玖賀さん。
この度はわざわざこちらまで出向いてくださりありがとうございます。
暑い中、遠くからすまないね」
「いえ、そんなとんでもないです。
この度は、当社とご契約いただき誠にありがとうございますーー…」
校長が入室してすぐにソファから立ち上がっていた速生は、手を背広内ポケットに忍ばせ名刺を渡す準備をする。
「いやいや、そんなにかしこまらなくていいよ。ほら、座って座って、名刺はーー…そうだね。じゃあせっかくだしいただこうかな。
いやいや~若いのになかなかしっかりした、まさにザ・好青年!って感じだねぇ、玖賀さん。
ーーー話に聞いていた通りだ」
校長ははっはっはっと豪快に笑うと、「あっ、そうそう!」と思い出したように手を叩く。
「玖賀さん、君のとこ、ペンタルさんの……あの商品。あるでしょ?
ボールペンなのにさ、書いた後、指でなぞるだけで消せるっていうあの…えーっと…」
「“消せ消せボールくん”のことでしょうか?」
「それそれぇ~!!あれ、すごいよね!?なんか魔法みたいじゃない。
知り合いが使ってるの見てねぇ、驚いちゃって。どういう仕組みなのかな?あれ」
「摩擦熱を利用したものでーー…詳しくは企業秘密にはなりますが、そちら、当社のヒット商品です。営業の僕が言うと宣伝みたいに聞こえるかもしれませんが……あのペン、とても便利ですよ。」
「だよね~?僕もあれ、欲しくてさぁ。
けどいつ文房具売り場行っても売り切れててね?しかも、結構お値段するし……」
速生は校長にニコッと営業スマイルを向けた後、書類やタブレットを入れたブリーフケースにシュッと手を入れて,中から袋入りのペンを取り出した。
「ちょうど良かったです。
こちら、僕の私物になりますが…新品なので、良ければ差し上げますよ。
“消せ消せボールくん”ブラック・レッドの2色セットです」
「ええっ~~~?くださるのぉ?しかも、2色セット!?いいのかい?
いやぁ~~!じゃあお言葉に甘えて!
玖賀さん、きみ、いいねぇ~~!わかってるねぇ!」
校長はとても嬉しそうにペンを受け取る。まったくもって遠慮する気もない態度で。
「ちなみに……水に濡れても滲まない、尚且つ湿気の含んだ用紙でもしっかり書ける、“消せ消せボールさんハイパーウォータープルーフ”が、新商品として出たところです。
湿度の高い場所でも活躍するので、どんなシーンにも対応できるもので…」
「おお~~っ!いいじゃない!!
それ、船の上とかでも、書けるかなぁ?」
「もちろんです、海水にも対応してますよ。
良ければまた次回のお取引の時、サンプルお持ちしますね」
「いいねいいねぇ~~~!きみ、玖賀さん!最高じゃない~!これから、いいお付き合いができそうだよぉ~~~!
僕も個人的にその”消せ消せさん”の、定期購入契約でもしてもらおうかな?
なーんちゃってねぇ~ははは!」
二人が盛り上がっていた時。
速生の視線の先ーー…校長の後方のドアから、ノック音が聞こえる。
ーーーコンコン、
「ーーーおっ、来たかな?授業、終わったみたいだね。
ーーーどうぞ、入って」
ーーーガチャッ…
ドアが開き、そこに立っていたのはーー……
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