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23歳・白露 ー愛するひとー
1.高校教師・夕人の罪な嘘
しおりを挟む出勤前、自宅の姿見できちんと確認して、驚きのあまり“何だこれ!?”と悲鳴をあげた。
ーーーこんなの、学校の人たちに見られたら…なんて説明すればいいんだよ。
未成年の生徒たちに教鞭を取る、聖職者有るまじき姿である。
ーーーいっそ、病欠しようか……?
“ちょっと首から上が大惨事で……”
いやいやいや、どこの誰がそんなこと理由に仕事休むんだよ、有り得ない。
というか、キスマークって、何日くらいで消えるんだ?
そしてよくよく見れば顔周りや唇も激しく吸い付かれたせいか未だに腫れていたり痛む場所も多く……。
ひとまずマスク着用と、服で隠してなんとか乗り切るしか考えられなかった。
ーーーあのエロ速生……あいつ、よくも……。
絶対分かっててわざとやってる。
お前はでっかい虫かってくらい散々吸い付いてきやがって……
次会った時はあの口にマスクでも付けさせてやる……
もう、キスなんか出来ないようにーーー
そう考えて、ふと一昨日の情事を思い出す。
“夕人っ……大好き……好きだよ、”
“キスしよ、もっと、夕人……”
「…………………」
頭の中にリフレインするのは、濃厚で、しつこいくらい繰り返されたーーー…
速生から降り注ぐ愛の言葉、口付け。
“あっ……夕人、…気持ちいい……っ”
そして、自分の肌にふれた速生の、濡れた声とともに滑る舌の感触、長い手指ーーー…
“…好きだよ…っ…夕人っ…………っ……”
息遣い、淫らな腰付き。
脈打つ、下半身への愛撫ーーー…
「~~~~~~~…………っっ!!!」
突然マスク越しに掌で顔を押さえて、言葉を失う夕人。
「ゆっ、夕人先生!?どうしたんですか!?
大丈夫ですか……?」
「なっ、な、なんでもないです。
大丈夫です。」
(なんだか、今日の夕人先生ーー…どこかおかしいわ。
なんていうか、何だか、ものすごく……)
綾乃は夕人の赤らめた顔を見つめる。
大きめなマスクで隠れてはいるが、耳まで赤くして、気まずそうにうつむいた夕人の姿が、なぜか……どことなくーーー…
(色っぽすぎる…………!!!
やだっ!なんなの!?夕人先生、悩殺スキルまで習得したの!?)
「ーーーー…でも、これはこれで、アリだわ」
綾乃は口を押さえながら、夕人に聞こえないようにぼそっと呟いた。
ーーーガラッ
「ーーあっ、夕人先生。いたいた」
教頭が職員室に入るなり、夕人の姿をみつけた、という風に声をかける。
「いま、来られてますよ、応接室に。
ーーーー夕人先生の、お客様」
その言葉に少し間を置いてから、夕人はマスクの下、意味深な表情を浮かべる。
「ーーーはい、
わかりました……ありがとうございます」
(……お客様ーーー?)
不思議そうにしている綾乃を横目に、夕人はデスクの上のスマホを手に取り職員室を出たーーー。
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