アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

オガタカイ

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23歳・立秋 ー混ざり合い、重なるー

3.うちにおいでよ子猫ちゃん

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「……………」

夕人の言葉に、速生は黙ったまま考え込む。



「あのさ。ずっと言おうと思ってたんだけどーー……
夕人。
………一緒に住まない?」


「ーー………えっ?」


突然の速生の言葉に、驚いて夕人は目を見開く。



「あ、いや…。やっぱり、もっと、ずっと一緒に居たいし。
ーー俺たち、ただでさえ時間合わないだろ?
このままだと、ご飯一緒に食べたりなんてする時間取れないよ。
会って、さっきみたいにいちゃいちゃしてたら、あっという間に一日が終わっちゃうぜ?」


ーーーどんだけイチャイチャに時間かけるつもりだよ……。


そう思いつつも、つっこむことはせずただ黙って夕人は速生の言葉に耳を傾けた。


「ここだと狭いし、どうせなら、夕人の職場がっこうの近くで、もっと広いとこ借りてさ……。
俺、最近、賃貸専門の不動産のサイトとか、いろいろ調べてたんだ。良さそうな物件、いくつかピックアップもしてる。
あ、いや内覧はもちろん、一緒に行って考えたいと思ってるよ」


少し照れ臭そうに、それでいてとても真剣な表情で。


速生から発せられる言葉全てが、たくさん考えて……やっといま、口にすることができたのだということが伝わってくる。


じっとこちらを見つめて、返答を待っている。



「ーーーあの…だけど。
俺、マンションの方もあるのに……。
それにさ、ここ解約してってなると無駄なお金かかるんじゃないの?更新料とかさ。
勿体無いよ」



ならばいっそのこと、ここよりも広い夕人のマンションで一緒に…?という考えも浮かんだが、よくよく考えればあのマンションの2階は住居としてはほぼ機能していない。



一階部分しか使えないのなら居住スペースとしてはこの速生のアパートと大して変わらないため、同棲での転居先としては結局のところ不向きで、無意味だと思えた。



そして第一に、“誰か”と住むとなるとまた話は変わってくるのだ。

父の親類であるマンションのオーナーに、きちんと順序を踏まえて説明しなければならない。  




ーーー速生との関係を、ほかの誰かに、きちんと話さないといけない時がくる。


その覚悟が、果たして自分にできているかーー…?




だけど。


5年越しの、止むことなく続いた限りない想い。
その愛情を再確認し、共に歩んでいくことを決められたのはーー…願ってもやまなかったことで。


それは速生にとってだけではなく、間違いなく、夕人にとっても同じで。

だからこそ、きちんと向き合わなければいけない。






ーーー逃げたらダメなんだ。



もちろん、よく、わかっている。



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