アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

オガタカイ

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23歳・立秋 ー混ざり合い、重なるー

2.馬鹿みたいに通じ合えないふたりの

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ーーーガチャ……ッ……



速生の手により、ドアが静かに開かれる。
 

「………………」

「………………」


ただ廊下に立ちすくんでいる夕人を、何とも言えない、今までに見たことのない表情で、見下ろす速生……。



「あの……い、一応きくけど……
ーーーーいつから、………いました?」


なぜか敬語になる速生。

夕人はもう気まずくて仕方なく、いますぐにその場から逃げ出したい気持ちをこらえながら、言葉を探し、小さく答える。


「す、少し……まえ、から。」


「あっ、へ、へぇーー。そう…。
えーー…あ、あの、夕人、約束は……?
料亭、……ハイヤー、?な、なんだっけ、あ、あのその、……あの」


どもりまくりでさらに動揺が進み、話を逸らそうにも思いつかず。もはや自分でもどこからどう見ても変態感が凄くて引いてしまう。

「あ、えぇっと……ちょっと瀬戸教授がぎっくり、いやあの先方が急病で、キャンセルに……。」

速生の動揺が夕人にまで伝わり、廊下に立ち尽くしたまま目を合わせずひたすらあたふたあたふたする二人。

「そ、そっかぁーー…」

「…………………」



速生は目を逸らしたまま黙り込んだ夕人のその表情を目にして、「はああぁぁーー…」と大きなため息をつき、手で顔を覆って俯いた。



(夕人、ドン引きしてるじゃん……そりゃそうだよな………。
自分が帰った直後に、まさか自分がオカズにされて抜いてるところに出くわすとか…ドン引き通り越して通報案件じゃん………
ああーーー…
もう、死にたい………
いっそ殺してくれ………)











夕人は黙ったまま、下を俯く速生の顔をちら、と見る。

真っ赤に赤面して、片手で顔を覆う、これまでに見たことのない様子の速生からは……



恥らい、後悔、猛省……



いろんな感情が、張り詰めた空気からピリピリと伝わってくる。







そして、

そんな速生のことを……




とてつもなく、

いとしいと思ってしまった。







ーーーああ……俺、

やっぱり、どうかしてるんだろうな。

ーーー速生のこと、言えない。





こんな状況だっていうのに、

いま、どうしようもなく、



速生にふれたくて、仕方ないよ。







バカなやつ……。

好きだよ、速生ーーー……








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