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23歳・立秋 ー混ざり合い、重なるー
1.日常に加わるリフレイン着信(コール) -1-
しおりを挟む「ーーーでは、これで取引は成立ということで……夕人先生、頼んだよ」
校長はメガネをクイッと上げて、神妙な面持ちで夕人を見た。
この前新調したばかりの特別モデルの銀縁フレームがキラリと光る。
「ーーはい、わかりました。こちらこそ、例の件、よろしくお願いしますね」
夕人は念押しするように言うと、校長を一瞥する。
うんうん、と頷く校長に、ソファから立ち上がった。
「では、失礼しま………」
「あ、ちょっと待って夕人先生」
校長室を出ようとした夕人は突然引き止められた。
ーーー嫌な予感……そう思いゆっくり振り返ると……
校長の満面の笑みとともに机の上に置かれた、B4サイズの写真……しかも今回は、額縁入り。
「ジャーン」と校長先生の効果音付きで登場した。
「夕人先生ほらほら~見てよ~。
今回は瀬戸くんの方が釣れてたけど、僕の方がサイズは勝ってたね。
これ、ヒラマサって魚なんだけど、ブリと似た味で美味しくて~~、結構な高級魚でね~~、赤身がね~~………」
ーーーやばい、魚の解説付き…このパターンは長くなるやつだ。
夕人は苦笑いしつつ、頷き続けた。
その頃、職員室では………
『ヴーッヴーッヴーッ……』
デスクの上、マナーモードのスマホが鳴り続ける。
「ーーー…夕人先生のスマホ、ずっと鳴ってますね。あれ、夕人先生は?」
向かいのデスクに座り愛妻弁当を食べる浅田が、周りを見渡す。
「校長室じゃない?さっき校長先生に呼ばれてたわよ。美術科のクロッキー会の打ち合わせでもしてんのかしらね」
大村が他の職員からお土産に貰った大福を口に含みながら、夕人のデスクに近づく。
『ヴーッヴーッヴーッヴーッ…』
デスクの上に置き去りにされたまま相変わらず鳴り止まない夕人のスマホを、大村はこそぉ~っと眺める。
液晶画面が下を向いているためどこの誰からの着信なのかはわからない。
「ーーー彼女から、だったりして……」
「…………!」
大村の呟いた言葉にピクッと反応し、サンドイッチを片手にPCのマウスを操作する手を止めた綾乃は、ちら、と横のデスクの夕人のスマホに目をやる。
「あ~ら、綾乃先生~気になってるんでしょ?
……ほら、ちょっと、スマホの画面上向けてみる?」
「おっ大村先生!だめですよ!ちょっと、人の携帯勝手に触ったら…」
「あらら~不思議だわ~手が勝手にぃ~~…」
わざとらしくそう言いながら、夕人のスマホを掴んで液晶画面を上へ向ける大村。
「………………」
『ヴーッヴーッヴーッヴーッ…』
『着信 玖賀 速生』
「ーーーなぁんだ、男の人ね。
……良かったわねぇ~?綾乃先生」
「なっ!べ、別に私は何も………」
そう言いつつ、内心ホッとしている綾乃。
「いや……ちょっと待って?
夕人先生くらい美形イケメンなら、もしかしたら彼氏って可能性も無きにしも非ず……」
「……大村先生、何されてるんですか?」
「!!」
後ろから突然現れた夕人に、大村はびくっ!と背中を震わせて「いえっ何も!?」と慌てて答える。
「あああ、あ、あの夕人先生っ!
さっきからずーっと、携帯鳴ってましたよ?」
隣の綾乃が慌てた様子で続けて答える。
大村の主導とはいえ、勝手に人の携帯を盗み見てしまった罪悪感に胸が痛む。
「え?あ、ほんとだ……。すみません、うるさかったですね。
ーーーげっ、着歴17件?」
夕人がスマホの着信履歴を確認して声を上げる。
『ヴーッヴーッヴーッヴーッ…』
「……あっ…、ちょっとすみません……」
夕人はそう言うと、スマホを持って職員室から足早に廊下へと出ていく。
いくら休憩時間といえど、同僚の前で私用の電話に出るのは気が引ける。
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