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Ⅲ◆23歳・夏至 ー邂逅ー

3.ダメだ

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ーーーシャアアアアァァーー……キュッ 

『ガチャ…』



シャワーを浴び終えた速生は風呂場から出て脱衣所で身体を拭く。


「…………………」




夕人は、まだベッドで寝ているだろうか。

もしかしたら少し酔いが覚めて、起きているだろうか。

どんな顔で、いま、部屋にいるんだろう。


俺はどういう顔で今から、この脱衣所から出るのが正解なんだろうかーー…



そんなことを考えながら下着と、部屋着のズボンを履いたその時。



『コン、コン……』


ノック音とともに、小さく、声が聞こえた。




「速生ーーー…ごめん。俺……」


(ーーーーー……夕人……?)



「俺やっぱり、帰るよ…。
ごめんな………、いろいろ、迷惑かけて……」




まるで泣きそうな声で小さく、そう聞こえたかと思うと、廊下をタン、タン、タン、と歩き玄関へ向かう足音。




(…………は?
い、いや、夕人、なに言って…?
ーーー待てよ。まだ、そんな…………)





ーーーーダメだ!













ーーガチャッ!

「ーーーー夕人っ!!」

脱衣所のドアを勢いよく開けて、すぐさま追いかける。


「!」
ーーガッ!


玄関のドアノブに手をかけた夕人の腕を掴んだ。

上半身裸で、裸足のまま玄関に降りてきた速生の髪からは、まだ先ほど浴び終わったばかりのシャワーの水滴がポタポタと滴り落ちる。


「夕人っ………待って。
外………大雨だぞ?電車も動いてないし、タクシーだってつかまらないよ。こんなのでどうやって帰るんだよ?」


「ーーー…わからないけど、歩いてでも、帰るよ…いいから、離して」


夕人はそう言ってドアを開けようと力を込める。



ーーードンッ!
「ーーーーっ‼︎」

速生は玄関ドアに両腕をついて夕人に覆い被さった。



「ダメだ。危ないからーー…そんなの許さない」


すぐ目の前。至近距離にあるとても険しい速生の顔。
 






ーーー速生、怒ってる……





その表情に一瞬、殴られる!と夕人はギュッと目を瞑った。







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