バカで馬鹿みたいな僕ときみの午後。

オガタカイ

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2-fool

2.シャトルをさあ追いかけて -2-

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ーーパシュッ!


「20マッチポイント14!」



ーーキュキュッ



「……はぁっ」


ーーーパシュッ!





『ピーーーーッ!』


「マッチウォンバイ烏合・千羽ペア!21-14」


審判役の生徒が笛を吹き、手を伸ばして試合終了の合図を出す。


「……やりぃ~~若。」

蓮が掌を上げ、フゥッと息を吐く千羽へハイタッチを要求する。

パンッ!




「はぁ、久しぶりだから疲れたぁ…結局2ゲームしちゃったし」

千羽はそう言いつつコートの隅のシャトルを拾うと、先程まで撃ち合っていた相手チームの部員へと手渡す。
額にほんの少しだけ滲んだ汗を半袖シャツの肩の布地でくい、と拭った。


「サンキューな、若。……やっぱ、お前とだとやりやすいわぁ……。
若とのダブルスが一番合ってるんだよな俺」



体育館の端に移動し、蓮から借りたトレーニングシューズから上履きへと履き替える千羽。


「蓮は上手いんだから…誰とでも大丈夫だって」


「いやそんなことない。相性ってあるじゃん?若、お前ならわかるだろ。
……なぁ?やっぱりさぁ、男子バド部入れよ。若、おまえ、勿体無いって」



千羽はその言葉に、中学の時の部活動を思い出す。
幼なじみの蓮と共に、バドミントン部で練習に明け暮れた日々。


ラケットのグリップを握ればワクワクと心が躍り、手首をかえすたび張られたガットの奏でる風の音と、肌に当たるその小さな感触がとても気持ち良くて。


跳ね飛ぶシャトルを追いかけコートの端から端までジャンプできるのでは無いかと思えるくらい、小柄で瞬発力に長けた身体はいつも、生き生きと喜んでいた。



「中学ん時みたいにさぁ…一緒にやろうぜ?
俺と若のダブルス、負け無しだったじゃん。ほら、さっきだって。
ーーーなぁ、若」


「…………」


確かに、バドミントンはとても楽しい。



しばらくぶりのミニゲームで、準備運動も無しでしかも制服のまま……

どうなることやらと思ったが、自分でも驚くくらい身体は軽く……まだまだ現役、と胸を張れるほどの俊敏な動きをやって見せることができた。






「………」


千羽は黙ったまま、通学カバンを肩にかける。


「何回も言ったけど……おれ、部活なんてやってる暇ないんだって……。
蓮はいいよな。頭いいじゃん?テスト期間にちょこっとだけ勉強すれば、全部平均以上の点取れるんだろ?
俺なんてーー…どれだけ頑張ったって赤点免れるだけでいっぱいいっぱいなのにさぁ……」

バドミントン部の練習に精を出しつつ、勉強だってそつなくこなすことのできる幼なじみの蓮のことをどれだけ羨ましく思ったことか。


「そんなの、俺だって別に大したことないよ。
テストなんて……レベルの点だけ目指してヤマ考えるだけじゃん?」

(そのレベルの点を取れないヤバい頭だから困ってるんだけど………。)


どれだけ熱心に授業を聞いても、教科書と睨めっこしても、気付けば頭の中には???しか浮かんでいないのだ。
その状態でテストのヤマかけなんて無理に決まっている。
まずそもそもテスト範囲の把握ですら危うい。



バカな自分が情けないと同時に、なんとなくだけどわかっている。
地頭の良さだけは、どう足掻いたって変わることはないということが。



それなら結局のところ、努力あるのみで。

おバカな自分がテスト勉強そっちのけで部活に精を出すことなんて、許されるはずもない。



「そんな、気にしすぎだって。
あっ、それにさぁ!バド部でいい成績出せば先生達からの評価も上がるぜ?
ーー若なら、少なくとも保健体育はMAX貰えるよ。下手したら有名人になれるかも⁉︎」


蓮はどうにか口説き落とそうと、体育館を出ようとする千羽について歩く。


「いや、おれもう既に有名らしいから……いいよ……」

「えっ?」

………、とボソッと呟き、
そしてずん…と俯く。









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