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ORDER-2 ホワイトソーダ
緊迫。因縁の対峙 -2-
しおりを挟む「おい。ーーー灰皿。」
須藤はズボンのポケットから煙草の箱とライターを取り出し、篠原の目を真っ直ぐ見る。
「……おい、聞こえねぇのか?灰皿持ってこいっつったんだよ」
見上げるように睨みをきかし、念押しする須藤。
篠原も目を離そうとはしない。
「………お客様、申し訳ございません。
当店は、………全席禁煙となっております」
「ああ?……んだよ、それ。
ーーーそれならそうとどこかに書いとけや」
二人の間にだけ、見えない火花が散る。
同席している須藤の仲間二人はわけもわからずその光景を黙って見る。
「店の入り口に注意書きがございます。
お煙草を吸われるのであれば、………店外の喫煙所にてお願いします」
「あぁ?んだと、てめぇ……」
須藤がカン!とライターをテーブルの上に叩きつけた。弾けるような音が鳴り響くがそれでも篠原は全く動じない。
「おいおい、どうした。須藤やめとけよ?出禁になっちまうぞ?
……あー…お兄ちゃん、ごめんな。こいつ、なんか機嫌悪いみたいで。
とりあえず注文それでいいから、よろしく!」
ホスト系イケメンがどうどう、と宥めるように須藤を制す。
ーーーチッ、と舌打ちをしてもう一度篠原にガンを飛ばし、“つまんねぇ店だな”と捨て台詞のように呟く。
「かしこまりました。ーーー失礼致します」
篠原はそれだけ言って須藤達のテーブル席から離れた。
店の決まりとして、オーダーの終了前、必ず再度の注文の確認をしないといけないと決まりがあるにも関わらず。
全くもって頭から抜けていた。
いや抜けていたのではない。
あれ以上あの場にいたらーー…もう言い返してしまっていたかもしれない。
この居酒屋の店員である立場も忘れて、とても感情的になっていた自分に驚いていた。
だけど。やはり良かった……と安心する。
深月を厨房へ避難させ顔を合わせないで済むようにしたことは正解だった。
そして同時に、動揺する。
深月は須藤のことを、“元彼じゃない”と言った。
“遊ばれていたのだ”、と。
自分がただ好きで、誰からも人気のある須藤をただただ追いかけて。
遊びでもいいから、相手にして欲しかったのだ、と。
そんな関係。
須藤にとって深月はごくありふれた、複数いる遊び相手の内の一人でしかなかったのだ、と。
だからこそ終わらせた。自分を制すことで、須藤への想いを封じ込めた。一方的に。
それだけで終わらせてしまえる関係だったのだ、と。
深月はそう情けない顔で言い切った。
ーーー本当にそうだろうか?
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