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ORDER-2 ホワイトソーダ
緊迫。因縁の対峙 -1-
しおりを挟む「お待たせ致しました」
テーブルの前、篠原はオーダー用のハンディ機器を手にしながら、目の前の客、三人組の様子を伺う。
いかにも陽気なキャンパスライフをエンジョイしてますと言わんばかりの、明るく染めた髪の毛、蛍光色で揃えたようなカラーの服装。
顔付きからして既に、自分とは違う種類の人間たちであると肌で感じる。
「ご注文はお決まりでしょうか」
篠原の問いかけに、須藤の目の前に座るウルフカットのホスト系イケメンがメニューを指差し口を開く。
「生3つと、枝豆……あとこの串10種盛り合わせと~~…」
注文を聞きながら、ちら、気になる方へと視線を送る。
4人がけのテーブル。
同席する2人と向かいで長椅子に1人で座る、どこか気怠そうで、不機嫌そうな顔の須藤の姿を再度確認する。
ーーー二日前。
大好きで大好きで愛しくて仕方ない憧れのひと、深月へと、
これまで長い間温め続けた強く深いその恋心をーーーー…
勇気を振り絞って伝えた、一世一代の大事な日。
まさか叶うなどとは思ってもみなかった、この想い。
もはや天の上のひとのように思っていた彼が、たとえ”期間限定”でも自分を受け入れてくれるだなんて。
あの休憩室で起きたまるで奇跡のような出来事。
そんな愛しい彼との大切な大切な時間を。
やっとの思いで掴んだ夢のようなひとときを突然ぶち壊してくれた、因縁の相手……須藤。
暗がりの中電灯の明かりだけを頼りに瞳のなかへ焼き付けたその、憎たらしいチャラつくイケメン顔は、改めて見れば見るほどにやはり憎たらしくて仕方なく。
その眉毛の横のピアス、引きちぎってやろうか……とものすごく物騒なことを考えながら、篠原はハンディに視線を戻す。
「なぁ須藤。お前ほかなにか注文あるか?」
仲間からの問いかけに、須藤は「ああ」と一言相槌を打ち、顔を上げた。
忘れもしない、深月の口から放たれたその名前。
目の前で本人の顔を前に名前が完全一致してしまった事で、更に憎しみが湧き上がる。
須藤は黙ったまま、篠原の顔をジッ、と見る。
「…………」
少しの間。
篠原と須藤のあいだに重々しく暗然な沈黙が流れる。
「……………」
篠原は気づいていなかった。
自分が物凄い形相で、須藤のことを見下ろしているということに。
この店の接客スタッフという立場も忘れ、ただでさえガッチリとした背丈と肩幅で睨みをきかすその姿は………
どこからどう見ても一線を超えてしまってるヤバいやつでしかなかった。
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