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ORDER-1.レモン炭酸水
17.こんなにも…-2- ▽
しおりを挟む「深月…………」
先程までのまるで押さえつけ責め立てるような口ぶりとは打って変わって、なんとも情けない声で篠原は深月の耳に囁いた。
どうしてそんなに切ない声を出すんだよ、とわけがわからなくなる。
(元の…篠原に戻った、みたいだーー…)
恐る恐る、目を開けて見上げてみる。
そこにある今にも泣き出しそうなほどに潤んだ瞳で苦しそうに見つめ続けている……その篠原の表情を見た途端。
まるで、立場が逆になったような気がして。
「………っ…」
「深月……。」
突然豹変した篠原の別人のような態度に本当に驚いて未だ状況は飲み込み切れてはいないが、一つだけ、はっきりと感じることがあった。
篠原が、自分のことをこんなにも求めているということ……。
自分のことを本当に好きなんだろうとは、告白された時から感じてはいた。
だけどそれは今のこの激動と比べればちゃちな飯事のようなもので。
“深月くん”
名前を呼ぶのですら戸惑い顔を赤らめていたはずの、あの篠原が、突然。
まるで理性など何も持ち合わせていない獣が、欲のままにただただ食肉へ貪りしゃぶり尽くすような……乱暴で荒々しくいやらしい愛撫を繰り返すことなど考えにも及ばなかった。
いやそもそも今この状況は一体、何が起きてこうなって。
初めて来た部屋で突然押し倒されカーペットの上に押さえつけられて。
こんなにも理不尽に責め立てられているというのに……何故自分はこんなにも。
足のつま先から脳天までぞわぞわと湧き上がってくるような、情欲に掻き立てられてしまっているのか。
ただただ混乱しながら、自分を恥じていた。
同時に湧き上がるのはーーー……
(なんで……そんな、目で見るんだよ……)
間違いなく、自分を求めているその篠原の瞳の奥から深く強く感じる、途轍もなく大きな愛。
“好きで好きで仕方ないんだ”
“ずっと堪えていたこの気持ちをすべて曝け出して……思いのままに。”
“君が欲しい、支配したい”
そう聞こえてくるようで。
ーーー嬉しかった。
(俺、本当は……ずっと……こんな風に…)
”一人でも大丈夫”だなんて強がっていたけれど……
ーーー本当は。
(ずっとずっと、求めて欲しかったんだ。
なりふり構わないくらいこんな風に、強く……。)
ずっと、ずっと、欲しくて欲しくて仕方がなかった、
自分だけへ向かう、強く、深い、無償の愛。
(今どうなってんのか本当にわけ、わかんないけど……でも…だけど。
こんなにも…)
らしくもなく、いまとても。
形振り構わず、理性もすべて捨てて。
篠原の想いに応えたいと思ってしまっていた。
「……蒼太…………」
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