11 / 69
ORDER-1.レモン炭酸水
10.篠原side -深月への想い- -2-
しおりを挟むそんな時いつもの飲み会で。
バイトの時間以外で少しでも関われるならと、参加していたその酒の場。
酒は強くない。
そして誰にも言ってない、きかれることも機会もそうないけれど……ある理由で、炭酸が飲めない、飲むドリンクは限られてしまう。
オーダー注文もプチ苦痛。
それでも、少しでもふれあえる機会にありつけるなら…と、下心見え見えの参加理由。
“ーーあれ、篠原、お疲れ。打ち上げ会参加だったんだ?
そこの席空調結構当たるけど大丈夫?”
ちゃっかり隣の席を確保する。
案の定、先輩スタッフから人気者でイジられる姿をただ横で見ている。
“ーー真野~~、俺の彼女の友達がさぁ、お前のこと紹介して欲しいって。顔めっちゃタイプらしいぜ”
“えっ、マジですかぁ~…”
“付き合ってるやついないんだろ?
ーーその子どう?結構可愛いぜ?”
先輩、なんと余計なことを。
いや、気持ちは痛いくらいにわかる。確かに自分もめちゃくちゃタイプだから。
だけどやめて。頼むから。
隣でただ冷や汗をかく。
そして……
衝撃の一言が耳に飛び込んでくる。
“実は俺………女の子に興味湧かないんですよね~。”
正直言うと、男の人の方がよっぽど好き。
もしかしたら、ゲイなのかも?”
ーーー戦慄。
謎の汗をかく。
………マジで?
小さく呟く。
笑っている……けど、
その横顔の、その心無い笑顔の奥には…本当は……
何か違う想いを隠しているんではないか。
ああ。
もうダメだ。
やっぱり好きだ。めちゃくちゃに。
いますぐ隣に腕を伸ばしてその細い肩を掴んで抱きしめて、告ってしまおうか。
ダメだ、そんなことしたらこの場はもう滅茶苦茶だ。下手したら通報案件。
理性でなんとかとどまる。
意識してからはもう完全に、ひたすら生き地獄。
耐える日々。
言いたい。
たまに目が合うたび。
伝えたい。
彼女も彼氏もいないの?本当?
もしかして。
俺にもチャンスある?
もしかして。
そんなに優しくしてくれるのは……ちょっとだけでも、俺のことよく思ってる?
どんどん好きになっていく。
誰も知らないひとりよがりの恋。
ああもう、ダメだ。
好きで好きで好きで仕方なくて。
ただ好きで。
その二文字だけがずっと脳内をひたすら駆け巡っていて、もう、頭の中から脱走してしまいそうで。
同性であることも、相手の気持ちも周りの関係性もすべて全部ぶっ飛ばして、ただただ、伝えたくて仕方なくて。
バイト終わり、夜の休憩室、ドアの前。
いつもなら…誰かしらがいるはずの、この部屋に、ひとり。
今この目の前の扉の奥に……先に上がって帰る準備をしている…
好きで好きで大好きで仕方ない、憧れの彼がいる。
ああ、今しかない。
俺、君のことが好きなんだ。
どう思われてもいいからとにかく、もう伝えたいんだ。
あんなふうに、悲しそうにどこか投げやりに、みんなの前で“男の人が好きかも”だなんて冗談めいて言い放った君に……
俺、馬鹿みたいに期待してしまったんだ。
お試しでも、期間限定でもなんでもいいから。
少しでもほんの少しでも、俺にもチャンスがあるなら。
君が俺のこと、好きになってくれる可能性があるなら、なんだって。
言おう。
伝えるんだ。
真野くん、好きだ‼︎‼︎
ーーーガチャッ!
『真野くん!好きです!俺と付き合ってください‼︎』
『ーーーへっ???』
21
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる