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ORDER-1.レモン炭酸水
8.福々の裏の住人
しおりを挟む二人は歩き出す。
「ここからどのくらいなの?篠原の家……」
来た道を戻りながら、問いかけた。
アルバイト先の居酒屋“福々”まで、引き返しているみたいに思えてくる。
「えっ。ああ、もうすぐ……。
ーーほら、あそこだよ」
そう言って篠原が指差した先は、なんと…福々の、すぐ裏の建物。そこに隣接した3階建てのアパートメントだった。
「えっ」と思わず口が開いてしまう。
「ここ……って、すぐ裏……。
店からこんなすぐ近くだったの?っていうかこの距離、もう福々に住んでるみたいなもんじゃん…。もっと早く言えよなぁ…」
「う、うん、まあ…。
いや、その。ちょっと言い出せなくて。」
深月くんと一緒に帰りたかったから。と続ける。
…いや、どこに帰るつもりだよ?お前の帰る場所はここだろ?
「まあ……いいや……。
バイト先のすぐ裏って、便利だね?」
「う、うん。まあ……。でも、誰も知らないんだよ?俺の家がここだって。
教えるの、深月くんが初めてだよ。
ーーー家に呼ぶのも、初めて。」
「えっ、あ、そ、そう……なんだ」
(やっぱり、いきなり重い感じで来るんだなぁ……すべてが”初めて記念日”ってかんじ?
そのうちお祝いしようとか言い出しそう…)
なんだかギクシャクとしながら、二人はアパートの簡易的な門をすり抜け通路を歩く。
102と書かれた部屋番号の扉。
ドアの鍵穴に鍵を差し込み“ガチャガチャ”と開錠する。
「ーーー!あっ、えーっと…、深月くんごめんっ
3分…いや、1分!ほんとにすぐだから…
ごめんちょっとだけここで待っててくれない?」
「えっ?あ…う、うん。わかった…」
篠原はそう言うと慌てて部屋の中に入って行った。深月はアパートの通路に立ったままドアに背を向ける。
中からバタバタッ!ガタッ!ガタンッと室内を走り回る慌ただしい物音が聞こえてくる。
(……エロ本でも隠してんのかな?)
突然好きな子が部屋に来ることになって慌てているラブコメアニメの主人公みたいだな、とくすくす笑ってしまう。
ーーガチャッ…
「はぁ、はぁ、…お、お待たせ。どうぞ」
「あっ、うん……」
額に汗をかいた篠原が玄関ドアを開けて迎え入れてくれた。
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