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ORDER-1.レモン炭酸水

13.キス、する?

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「…………え?」


一瞬なにを言われたのか分からなくてフリーズするが、すぐに我に返り篠原の言ったことを理解した途端、胸の奥からぶわっと込み上げる謎の熱気。


深月のリアクションをただ待つように黙ったまま視線を逸らさない篠原。
その表情かおは真剣そのもので、場を和ませるための冗談なんかでは無いことがうかがえる。

「………………」


まったく予想していなかった篠原からの要求に、言葉が出て来ない。


(えっ……き、キス??
なに篠原こいつ、奥手と見せかけてここでそんなこと要求する?なにこのムッツリスケベ……それだと“俺にして欲しいこと”じゃなくてお前が“したいこと”じゃん!あっいやそれも別に間違ってないのか?いや間違ってるとかそういう問題じゃなくて……!)




慌てておろおろと動揺する深月の姿をただじっ、と見つめる篠原。

「……………っ…」


困り顔で目線を上げると、視線がぶつかった。



「……いや、あの。深月くん……。
ごめん、やっぱり、嫌だよね……。いきなり、そんなこと。
あの、深月くんが嫌なら、いいんだ」


「……………」


(何だよ、こいつ…
…………篠原、なんていうか……
ーーーー……ズルい………)



赤らめた顔でどうすればいいかわからず俯く深月を見つめて、
申し訳なさそうにしながら篠原は続ける。
  

「ごめんね、忘れて。
ーーーあのさ。お礼なんて……そんなの何もいらないよ。
俺が深月くんのこと心配で、無理言って来てもらったんだから……。
だから、本当に気にしな…」


その瞬間。
深月は斜め前に座る篠原の方へ、手を伸ばした。

ライトブルーの半袖シャツ。
太く締まった二の腕が覗く袖口の端をクイッとつまみ、ほんの少しだけ引っ張る。










「ーーーー………する?」


「えっ?」


「いいよ。……………キス、しても」







「………………」


数秒間、沈黙。



落としていた視線を少しだけ上げると、自分の指で摘んだ篠原のシャツの端がちらりと目に入り、腕を戻す間もなく………がっちりした肩と首元が、熱気と緊張とともに近付いてくるのがわかった。

深月は思わず目を閉じる。





ーーーちゅ……



「……………っ…」




渇いた唇……が、本当に一瞬だけ。

触れたか触れなかったかわからなくて確認したくなるほどに本当に、いまキスした?と訊きたくなるくらいの小さな感触。


ふれた温度が離れた瞬間、焦れったさを感じてしまうほど、きゅう、と切ない音で胸が締め付けられる。



「…………」
ゆっくり、瞼を上げてみる。

わりとすぐすぐ近く、呼吸がかかるほどの距離に篠原の薄ら目の顔があり驚いてしまい、「ぁっ」と声を出した瞬間。



ーーゴチッ!
「痛っ」


鼻と鼻の先がぶつかってしまう。




「~~~~~っ………」

少し身体を離し二人は声にならない声で悶え合う。

(何これーー……こんな、の…、いまの、なに…)


篠原は両手で顔を押さえている。
その掌の下の顔面はまるで茹でダコのように赤らんでいて、物凄い熱気が漂う。


「み、みみ深月く、ん……。
ちょ、ちょっとあの、ダメだよ…し、刺激が強すぎる…、そんな、こんなこといきなり。
あの、ほんとダメだよ……俺、こんなの。やばい。
…やばい、はっ、鼻血が出そうだーー…」

「⁉︎なっ、何言って…
えっ?し、しのはら?大丈夫?」


(えええ自分がさせて欲しいって言ったんだろ⁉︎する前に心の準備くらいしとけよ!
︎何なんだよもう……うわ困る…)


「あの、ほんと大丈夫…?水、のむ?」

「………う、うん」



顔を片手で押さえ目を逸らしたまま、篠原はローテーブルの上に手を伸ばしてペットボトルを掴んだ。

恥らいのあまり上げることのできない瞼。目を閉じたまま、蓋を回しキュッと開けて口元へ素早く持っていく。



「あっ篠原それ……ーーーっ」

深月の言葉も届かない様子で『ゴクッゴクッゴクッーー…』と勢いよく口にした瞬間……




「‼︎‼︎」






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