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1.ツンデレ事務員の悩み
しおりを挟むこの広告会社で事務員として働く対馬は悩んでいた。
(おっせーなぁ…榎本のやつ。いったいどこまで営業行ってんだよ?)
ソワソワ、イライラ。キーボードを打つ手につい力が入ってしまう。
(あいつ、さてはまた取引先でお茶とお菓子いただいてくっちゃべってやがるな。
ポンコツのくせして、人当たりだけは立派だもんな。ーーーああムカつく)
紙コップに入ったブラックコーヒーをぐびぐび!と飲み干し、ぐしゃ、と握り潰す。
(営業行くところ行くところで気に入られやがって。まるで迷い犬が餌恵んでもらってるみたいじゃねーか。)
ーーーちっ
無意識の舌打ちが出てしまう。
すぐにハッとして、周りをキョロキョロと見渡す。
「…………」
(良かった、誰も俺のこの醜態には気づいてないっぽい……
うわやばい、怒りのあまり我を忘れてた。
ここは会社だぞ?俺、冷静になれ。)
ーーーカタカタカタカタカタカタ‼︎カチカチ‼︎
物凄い速さで契約書類を作る。
対馬は性分か、怒りに任せている時が一番仕事が捗るのである。
「戻りましたぁ~~」
「‼︎」
背後からこの怒りの元凶が帰ってきた雰囲気を感じ取る。
すっ…と静かに椅子から立ち上がり振り返る対馬。
「あ、先輩!いま戻りまし」
「榎本ぉ!お前、いったい今までどこで油売ってたんだぁ⁉︎おいこら‼︎毎回言ってんだろ⁉︎
なんでボードに帰社時間を書かない⁉︎時間配分の予測くらい出来んだろーが‼︎」
営業担当の榎本は、まるで般若のような顔で怒鳴り散らす先輩・対馬に圧倒され言葉を失う。
「す、すみません。いやだって、今日アポ取ってたスイーツ専門店、社長さんの話が長くて。」
「うっさいバカ!言い訳すんな!」
周りの同僚は“また始まったよ、こいつら…”と見て見ぬふり。
「いや、ボードに書かなかったのは、それは俺が悪いですけど…けど、俺一応14時頃までには戻りますって伝えましたよ?
ほら、まだ14時まであと5分……」
「だから言い訳はいいって言ってんだよ!
どーせまたお茶菓子でも出してもらって先方の綺麗なお姉さん社員たちと楽しくワイワイ話してたんだろーが!ちっ、鼻の下伸ばしやがって…」
カチンとした顔の榎本。
「……じゃあ本当のこと言いますよ。
先輩のめちゃくちゃ好きなあの個数限定販売マカロン。
特別に予約させてくれるって言うから社長さんの無駄話に付き合ってたんじゃないですか!」
「えっ」
「この前の初デートの時、先輩言ってましたよね?
スイーツ店の前で“俺あのマカロンめちゃくちゃ好きなんだよなぁ~人気すぎて全然買えなくて悲しい”って…。
先輩のために頑張ってきたのに!そんな言い草ないですよ!」
「わああああぁ‼︎
ばっ、ば、バカ‼︎おまえっな、なななに言っ…」
赤面する対馬。
「大体ねぇ先輩、俺がいつ綺麗なお姉さんとお茶菓子食べて楽しく話してきたっていうんですか⁉︎
俺が楽しくスイーツ食べてんのも会話してんのも鼻の下伸ばしてんのもぜーーーんぶ先輩じゃないですか!言いがかりはやめてくださいよ!」
「あああぁあ‼︎うわぁぁ‼︎も、もういい!!
もういいから戻れ!!!」
(初デート…)
(付き合ってるんだ…)
(スイーツデートしたのかな)
(対馬君、ツンデレすぎ…)
同僚の心の声がオフィス内に響き渡った。
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