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23歳・夏至 ー邂逅ー
2.優しくしないで
しおりを挟むーーー俺は今日、速生に、どんな態度を取って欲しいんだろう?
何を言われたいんだろう。
こんなにも広い、この地で、偶然にも会ってしまって。
いまこうしてここで、すぐ横で、すぐに触れ合える程の距離にいて。
どうしてここに来たんだろう?
ふと考えて気づいた。
ーーー優しくなんて、してほしくないんだ。
“あの時、どうしてーー”
“あんなにもたくさん、ふれあっておいて”
“なんで、突然俺のことを切り捨てたんだよ”
“どうして黙っていなくなったんだよ?”
そう言って。
蔑んで、罵倒して。
責め立てて、許しを乞うように。
ーーーきっと、それを待っていたんだ。
それは全部、自分のエゴで。
ただ許されて、楽になりたいと思う自分のためーーー。
ーーー本当に?
ーーー本当にそれだけ?
心のどこかで期待をしていたんじゃないのか?
”もしかしたら、まだ、速生は、俺のことをーーーー…”
なんて、烏滸がましい。
図々しいにも程がある。
だって……こんなにも、いまの速生は輝いてるじゃないか。
大手に就職して、上京し、綺麗なスーツを着てきっと天職だろうと思える営業職になんて就いて。
突然入ったバーで、お洒落なカクテルなんか頼んで、あっさり馴染んで見せるその姿に。
その今の速生の中に、俺へ向かう気持ちがどこに残っていると言うんだ。
ーーー踏み出せていないのは、俺の方だね。
いつまでも過去にしがみついて…
バカみたいだ、俺。
あの頃の日々をーーー…
速生はとっくの昔に、思い出に変えることが出来ていたんだ。
ほんと、バカみたいで、情けない……
この五年間の俺。
ふっきらないといけない。
速生はもう、
俺のいない未来をーー…ちゃんと、幸せに歩んでくれている。
良かったーーー……
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