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23歳・夏至 ー邂逅ー
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しおりを挟む「ーーー……うそ、だ………ろ……」
見間違えるはずはなかった。
信号待ちの先に立つその人物は、視線を下に落としている。
その佇まいは間違いなく………あの速生だった。
ーーーどうして、ここに?
ーーー嘘……だろーーー…?
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
頭の中まで突き抜けるように、どんどん早くなっていく鼓動の音がうるさくて仕方なくて。
見間違いなんかではない。
俺が、速生の姿を、見間違えるわけがない。
どうして。
なんで…こんなところで。
こんなにも沢山、溢れるような人混みの中で。
たとえ偶然だとしても。
なぜ俺は見つけてしまうんだ。
「…………………っ…」
ただ、目が離せない。
数メートル先にいるその速生の顔をじっと見つめて……まるで足に根が張ってしまったように、ただそこから動くことができなくて。
どうしよう、
どうすればいい?
誰か教えて。
もう、考えられない。
とにかくどうにか引き離そうとするのに、まるで磁石で吸い付けられるようにどうにもできず。
どうしてこんなにも許してくれないのか。
運命に抗おうとすることも、自分の気持ちに嘘をつき続けることにも、
もうすべて疲れてしまったのに。
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