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18歳・冬至 ー君と、僕の未来ー

2.たとえ臆病でも

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ーーーガチャッ!バタン!



「ーーーはぁ……はぁ……」


速生と速生の母、二人の話を耳にして、すべてを理解した夕人は逃げるように自分の家の玄関の中へ飛び込んだ。


靴を脱ぎ捨て、廊下にストン…と力無く座り込む。




ーードクッドクッドクッドクッ

 
恐ろしく早く波打つ鼓動の音。


さっきの話は、本当、なんだろうか………


速生は、N体大に行くのがずっと夢でーー…それで、推薦の話を貰ったのに…




断ったーーー?


その、理由はーーー……?




“今、ここから離れるわけにはいかない”

“何よりも一番、大切なことなんだ”





そんなの、一つしかないーー…





俺のためだーーー…




速生と同じ道を進むと決めた俺の、そばにいるためーーー



俺と離れずに……

どこにもいけないこんな俺の……そばで、俺のことをずっと……守るため…………









ーーー俺は……


ーーーなんてことを…………













「はぁっ……はぁ………っ」


息ができなくなりそうなほど、胸が詰まる。ズキズキと、心臓が締め付けられて痛くて。

震える手で、口を押さえた。吐きそうだ………




いろんな思いが、頭の中を駆け巡る。





こんなこと望んでなんかいなかった。違う。きっと間違っている。俺が、速生の夢を壊した?自分のした選択が、速生へのプレッシャーとなってこんな結果になったということ?なんで、どうして。どうして教えてくれなかったんだ。ちがう、俺だって一緒だ。速生が言えるはずない。そうさせたのは俺だ。どうして。なんで?どうすればーー…





その時、スマホから着信を知らせる音が鳴り響いた。




『ーーーRRRRRR……』


「ーー………もしもし…」


「あ、夕人?さっき電話くれてたよな?ごめん、出られなくて…何かあったか?」


まるでついさっき、母と言い争っていたとは思えない速生の平然とした声。
夕人は胸に詰まって出てこない言葉を、どれか、何か……と探すが、見つからない。


「あ、あのさ………あの…」


「ーーーーー?」 

確かめたい。さっきの母と速生の会話が本当でーーー…何のために、速生が、そんな行動をとったのか。誰にも言わずに。


「ーーーどうした?何かあった?」





ああ、無理だ。


怖いーーー…訊けない。





臆病者ーーー… 








「ごめん、あの…コート、部屋に忘れてーーー。
また、明日取りに行くから、置いておいてもらっていい……?」


「えっ?……あ、ああ………。
持って行こうか?これから…」


「ごめん、ちょっと俺、今から出かけるからーー……行かないといけないところがあって。
…………ごめん」



夕人はそれだけ言って電話を切り、急いで自室へ戻り制服に着替えた。




そして、走って家を出る。





確かめないといけない。とにかく今はーー…それからどうすればいいかなんてわからなくても。

だけど、このまま終わらせるのは、速生への、自分の想い、まわりの人たちすべてから感じる愛情に対して、嘘をついて、見ないふりをしていくことに違いないーーー。






そんな風に終わらせるわけにはいかないんだ。



きっと俺と、速生の未来はーー………








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