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18歳・冬至 ー君と、僕の未来ー

1.突然の誘い

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「ーーー…速生のお父さんと、食事?」



終業式を終え、教室で帰り支度をする夕人に向かって速生は頷いた。



「急なんだけどさ……明日。
“転勤先から少しだけこっちに寄れることになったから一緒に昼メシでもどうだ?”って連絡が来て。
頼むよ、夕人も一緒に来てくれない?」


「えっ……そんなの、お父さんとは久しぶりに会うんだろ?
俺なんかが行って邪魔するのも…」



速生の父は考古学の学者で、数年おきに研究チームを最編成しラボを移動するため、会えるのはよくて年1回から2回程度。


速生が幼い時の父は無理してでも頻繁に帰省し息子との時間を作っていたようだが、今では母すらも“亭主元気で留守が……”という言葉を口にするほどで、速生の日頃の生活の中を、父親が占める割合というのはかなり少なかった。

これだけ毎日のように速生と会っている夕人ですら、高校の入学式で一度だけ姿を見かけただけで、その父とは言葉を交わしたことすら無かった。




「いや、俺も会うの久しぶりすぎてさ……。母さんも仕事で行けないって言うし。
父さんと二人きりでランチとか何話していいかわかんねぇじゃん、頼むよ、夕人!
一緒に来て横に座っててくれるだけでいいから。
別に喋んなくても、居るだけで大丈夫!」


「俺のことでかいぬいぐるみとでも思ってんの?
そんなのさぁ……速生のおばさんだって親子水入らずで二人きりの方がいいと思ってるって…」


普通に考えて、場違いだ。


滅多に会えない父との大事な食事会。

いくら速生本人に誘われていると言えど、その大切な時間を邪魔しに行くような真似は出来ない。



「いや?もう母さんには“夕人も連れていく”って言っといたぜ?
“いっぱい美味しい物食べさせてもらってきなさいよ~~!夕人くん遠慮しそうだからハヤがじゃんじゃん頼んであげなさいっ!”
ーーーだって」


「いや、もう行くって言ってんのかよーー……」


俺に選択肢ないんじゃん…?
てかおばさん、それ言いそう……と呟いて、


「………それ、もしかしてもうお父さんにも伝えてんの?
俺が一緒に行くってこと…」


「え?あぁ、うん。
ーーー“大事な人を連れていく”って」 


「えっ‼︎⁉︎」


ーーそんな言い方したら、なんかまるで結婚の挨拶でもするみたいじゃないかよ!



「な、なんでそこは無難に“友達連れていく”とかにしないんだよ?もう…。
うわぁーー…俺、どんな格好して行こう……」



困り顔で頭を抱える夕人の姿を見て、速生は教室にいることも忘れてキュンとしてしまう。



「だって、夕人は俺のただの友達なんかじゃないし………よし、じゃあ、父さんには“マイラブハニーゆうとを連れて行く”ってメッセージ送っとくな」


「なっ⁉︎バカ、やめろよ!」


夕人は顔を赤くして速生のスマホを奪おうと必死で怒る。



「そこのふたり~、イチャイチャしなーい」


クラスメイトの男子が笑いながら揶揄からかう。




「ーーーしてないっ!」


夕人の照れを含んだツンツン声が響いた。








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