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17歳・霜降 ー交わされるきみへの想いー

4.スタンド・バイ・ミー

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「ーーー……ふぅ。」


なんとかうまく、誰からも見つからずチークダンスのパートナー探し合戦から抜け出すことに成功した夕人は、誰もいない体育館裏で胸を撫で下ろした。


建物から出ても聞こえてくる、軽音部たちのライブ演奏に、中でどんなことが行われているかはだいたい理解ができた。


「ーーー音漏れすごすぎだろ…」


学校生活最後のイベントで、しかも自分がパネル製作に関わったこともあって参加した軽音部のライブだったが、正直言って、やっぱり自分にはライブ観戦といったものは向いてないーーー。
そう思ってしまった。



大きい音や、人混み、周りで盛り上がる人たちの黄色い歓声。


それらの生き生きとした雰囲気に、どうにも“乗る”ことができなくて……、心から楽しむことができず、一緒に観ている速生に、嫌な思いをさせたかもしれない。



「やっぱりダメだなぁ、俺ーーー……」

ぼそりと1人呟いた時。




「ーーー…何がダメなんだよ?」





声に振り返ると、そこには速生が立っていた。


「ーーやっぱり外にいた。ひどいぜ夕人。
抜けるなら、一言いってくれたって……」


少し拗ねた顔で夕人の横まで来て、体育館裏の壁に寄りかかる。



「いや、そのーーー。
…だってさ、速生はああいうの、騒いだりするの苦手じゃないだろ?
俺が抜け出してせっかく楽しんでるところを邪魔したら,なんか申し訳ないなって……」


「あのさぁ……そんなの、夕人と一緒に観てるから楽しいんじゃん。
ていうか、夕人が楽しくないなら、俺だって楽しくねぇし……。
そんなこともわかんない?
ーーこの意地っ張りの強がり夕人。」


口を尖らせて拗ねた表情の速生の言葉に、
”なっ…⁉︎”と一瞬反抗しようとしたが、すぐに、しゅんと下を向いた。


「ん。…確かに、これは、俺が悪かったかも……
…………ごめん。」



珍しく素直な夕人の態度に、速生は驚き、逆になんだか責めてしまい悪いことをしたような気分になってしまう。


「あっ…い、いや。そんな悪いとまでは……」

「………………」



謎の沈黙に、気まずさを感じる二人。






体育館から聞こえてくる演奏が、一旦途切れ、大きな拍手が聞こえてくる。チークダンスタイムが終わったようだ。



「……あのさ」「あの………」



ーーー……げ、また被った!


「ーーなに?
夕人から言えよ。」


次は夕人の番だろ?と目で訴えて、速生は言葉を待つ。


「ん…………。あのさ、なんていうか、その……」


言葉に詰まる。



体育館から新たに音が漏れて聞こえてくる。

『ついにラストの曲になりますーーー…!』と軽音部長ボーカルの声と共に、最後の演奏が始まった。


ベースギターの低音が優しく、ゆっくりと響き渡り……
ライブの最後を飾る曲は、

Ben E. Kingベンイーキングの”スタンド・バイ・ミー”。





「ーーーその……、速生。
いつもーーーー………ありがとう」





「………えっ……?」


速生は思わず夕人を見る。



あらたまって、日頃の感謝を述べられるなんて、初めてのことで。


夕人が発したそれは間違いなく自分へ向けられた言葉だというのに、少し照れているようにも見えるその横顔は、何か、どこか違うものを見据えているようで……




なぜだろう。嬉しいはずなのに。



とても不安になる。





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