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17歳・霜降 ー交わされるきみへの想いー

2.お化け屋敷 

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『ーーーえ!ちょ、ちょっと!王子来た!王子…相模先輩!
入ってくるよ‼︎』
 
『うそっ⁉︎やだっちょっとオバケ役だれ⁉︎代わってよ!間近で王子見れるチャンスなんだけどぉ!』

1年女子たちが、お化け屋敷の出口から隠れて、夕人と速生が入口へ入っていくのを見て騒ぐ。





「えーっ‼︎聞いた?相模王子入ってくるって!やばい!どうしよう!」

「‼︎ーーー悪いっ!ちょっと貸してそれ!」


「え、あっちょっと矢代くん‼︎そのカツラ……!」

ーーーダッ!

美術部1年、お化け屋敷の中で照明係をしていた矢代は、その女子たちの騒ぐ声を聞いた途端貞子役の女子のカツラを奪い取り真っ暗な教室奥へと走った。


(相模先輩に密着するチャーーーンス‼︎
これだけ暗かったらまさか俺がオバケ役とはわからないだろうし……役得だよな!)


ワクワクしながら、出口付近のホラー音が自動で鳴るようにセッティングしてある場所に隠れ込み、矢代は夕人を待ち構える。









「ーーーうわ、結構凝ってんなぁ~…」


黒いカーテンで仕切られて遮光された教室内は、ひたすら闇が広がっていて、いつものクラスの教室の見る影もなく…

大きい段ボールで仕切られた狭い通路を、二人はゆっくり歩く。



どこかに置かれたスピーカーから、風の音や、ギギギ…という扉の音が絶え間なく流れていて、思った以上に本格的な雰囲気が醸し出されていた。


「っ…というか………狭すぎだろこのダンボール通路……ちょっと、設計ミス?」


大人ひとりがやっと通れる広さの仕切りの中を、ところどころに足元に置かれたロウソクのような3Dミニライトの灯りを頼りに、前へ進む。



ーーぎゅっ!
「!」

誰かに手を握られた感触に夕人は驚いて立ち止まる。
後ろを振り返ると……



「速生……お、お前なぁ~~~~」

「あはっ、バレた?」



後ろを歩いていた速生が、ちゃっかり手を握っている。

小声で“離せ!バカ!”と怒る夕人の肩に手を回すと、速生は、今度は朝とは反対の夕人の右耳に、ちゅっと口付けた。



「~~~~っ!
ーーーーもう…俺出るっ‼︎」


夕人は速生の手を勢いよく振りほどき、猛ダッシュで出口へ向かった。



「あっ!夕人ごめん!待って!」


流石に調子乗りすぎた…と思い速生は追いかける。

天井から吊るされたコンニャク、不自然に設置された理科室の人体模型の間を頑張って通り抜けーー……

狭い通路を走って出口に近づいた時、するとそこに……



「う~ら~め~し~やあぁぁ~~~」
ーーーーガシッ!!

「うわぁーーーっ⁉︎‼︎」


”バアァァン‼︎”というけたたましい効果音とともに、速生は後ろから何者かに抱きつかれその衝動に叫んで立ち止まった。




「………げっ⁉︎く、玖賀さん⁉︎
ーーー相模先輩じゃない!」


「……え!オバケが喋った⁉︎
はっ!その声……一年の矢代くんか⁉︎
ーーーお前……もしかして…」


てめぇ~~さてはちゃっかり夕人に抱きつこうとしやがったなぁ?と詰め寄ると、暗闇の中矢代の頭に思い切りチョップをかます。




ーーードスッ‼︎

「悪霊退散っ‼︎
ーーーーー夕人っ、待ってーー!」



「~~~~……………」

矢代は頭を押さえて、クッソ~、覚えてろよぉ…とその場に座り込んだ。











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