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17歳・霜降 ー交わされるきみへの想いー

1.狸寝入り

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一階したから、母が話す声が聞こえる。



「ーー…ええ、“脚が痛くて休む”って…どんなすごい運動したのかしらね?
ーーーあら、速生くん……その足,どうしたの?」



ーーーー!
速生!?なんで…学校行ってるはずじゃ……?



「ーーいやー…ちょっと、この足、捻挫で……病院行ってから、昼から行こうかなと思っててーー……あの、ちょっと上がっていいっすか……?」


どことなくよそよそしい速生の物言いに夕人の母は“いつもは聞かずに上がってるのに?”と不思議に思いつつ……


「ーー助かるわ、様子見てあげてくれる?私、これから仕事の打ち合わせで出かけるから……ゆっくりして行ってねーー…」



ーーーガチャ,バタン……


母が玄関を出ていく音。

その少し後に、躊躇うような足取りで、



ーータン、タン、タン、タン…


階段をゆっくりと、上がる音が聞こえてくる。



ーーーえっ、こ、こっち来る!
どうしよう⁉︎まだ、心の準備が………!



夕人は慌ててベッドに戻り、布団の中に潜り込んだ。



『ーーーコンコン…』

不自然に響く、夕人の部屋のドアのノック音。


「ーーー夕人……?
起きてるか?……入ってもいい………?」



ーーー今まで、ノックはおろか、入室の許可なんて聞いてきたことすら無いくせに………

こんな時に限って、白々しいやつ………



「………………」





ーーーガチャッ……

「夕人……………?」



速生が部屋に入ってくる気配を感じて、夕人はただ静かに、息を殺して……この場をどう切り抜けたらいいか考えるが、何も思いつかない。


ーーー“あ、おはよ。”と、あたかも今目覚めたかのように、布団から出てしまおうか?


無理だ。
 
ここまできて、いつもとまったく違う態度の速生を見て……何も無かったかのように普通に接することなんて、できない。


狸寝入りを決め込むことにした夕人は、布団にくるまり静かに沈黙していた。



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