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17歳・霜降 ー告白ー
2.行かなきゃ… -2-
しおりを挟む校舎を出て、早足で市立図書館へと続く歩道を進む。
夕人は歩きながらスマホをポケットから出して時間を確認した。
ーーー速生、いくら何でも遅くないかーーー?
速生が学校を出てからすでに1時間近く経っている。いくら時間をかけて探してくれていたとしても、さすがにもうそろそろ帰ってこないとおかしい。
ーーー図書館まではこの歩道を一本道のはずだから、途中で絶対すれ違うはずだ……。
スマホから速生の携帯に電話をかける。
『プルルルル………ただいま電話に出られません……』
まだ図書館の中にいるんだろうか?
不審に思いさらに早足で進んだ、その時。
ーーーピーーポーーピーーポーー……
急ぐ夕人の真横を、救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎた。
嫌な予感がして仕方ない。……どうしようもなく不安で、胸の奥がギュウっと痛む。
もう一度電話をかけるが、やはり速生は出ない。
ーーー速生?なんで出ないんだよ……?
市立図書館が見えてきた。
図書館の入り口には警察のパトカーが停まり、二輪バイクと、老人車と呼ばれる荷入れの押し車が歩道に無造作に倒れている。
ヘルメットを被ったバイクの運転手らしき人物が、警察官と話をしているのが見えた。
ーーーーーー事故………?
辺りには人が集まっていた。ざわめく人混みをすり抜けて、夕人は急ぎ足で図書館の中へ入った。
館内を見渡す。事故の見物に館内の人々は外へ出てしまっていたようで、夕人の焦る足音だけが響いた。その時、不安そうな顔をした受付カウンターの館員と目が合った。
「あのーー……すみません、ここに、市立第一高校の制服の、背の高い男子、来なかったですか……?」
女性館員に尋ねると、驚いた表情で、彼女は慌てて貸出カードを差し出した。
「この人のことですよね⁉︎さっき、そこ、目の前で事故に遭ってーーー……救急車で運ばれて行ったんです」
「ーーーーー……え………?」
ーーー事故……?救急車………?
何だ、それ………?
頭が真っ白になる。
震える手で、速生の貸出カードを受け取った。
「この本を、借りられたんですけどーー…外を見て突然飛び出して行って、その後事故が遭ったようで、この本も、そのままーー………あっ!ちょっと…!」
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