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17歳・霜降 ー告白ー
2.行かなきゃ… -1-
しおりを挟むーーー…
美術部室に戻った夕人は、なぜか、どこか落ち着かず、部員たちの話し合う声もあまり頭に入って来ない。
「あの……相模くん、ごめんね。せっかく図書室探してくれたのに良さそうな資料なかったんだろ?
そういえば玖賀くんは?さっき相模くんを探しにこっちまで来てたのにーー…」
部長が申し訳なさそうに夕人に尋ねる。夕人は、速生が市立図書館まで資料を探しに行ってくれてることを伝えた。
「へぇ……なんか、玖賀くんって、見かけによらず意外と優しいよな。
バスケ部員から”でかくて怖い”って話よく聞いてたから、そういうイメージが強かったんだけど……」
夕人は驚く。
「えっ?速生が?
でかいのは合ってるけど、全然優しいよ?
よく気がきくし、面白いし……あいつのことが怖いとか……全く想像つかないんだけど」
ーーーいや、それってやっぱり相模くんに対してだけなんじゃ………?
部員たちは無意識に速生からの過剰な優しさを受け続けている夕人に対して、それを指摘してはいけない雰囲気を感じ取って、黙った。
「……ごめん。俺、やっぱり気になるからちょっと図書館行ってきていいかな?」
ーーーこの胸騒ぎは何だろうーーー?
どうしても気になってしまい、夕人はスマホを制服のポケットに入れて足早に部室を出た。
「ーーー相模先輩!」
呼び止められ振り返ると、廊下には一年の矢代が立っていた。
「あの、俺も一緒に行っちゃダメですか?資料探すなら、人数多い方がいいかなって……玖賀さんだけに任せるよりーー…」
矢代の言葉に夕人は苦笑いして、首を横に振った。
「矢代くんは、一年の出展物仕上げないとだろ?
大丈夫だよ、俺一人で行く。
それに……速生はちゃんと、わかってくれてるから」
その言葉の端から、“速生は1番自分をわかってくれている”という意味を感じ取った矢代は、残念そうに、悔しそうにーー…「わかりました、気をつけて行ってくださいね」とだけ答えた。
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