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17歳・霜降 ー告白ー

1. 文化祭準備

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市立第一高校の文化祭まで、残すところ2週間を切った。



夕人たち美術部は個人の出展物を作成する傍ら……

軽音部のライブステージに飾るための大型ファブリックパネルの製作に手分けして取り掛かろうとしていた。



「ここの色なんだけどーー…相模くんはどう思う?」

「んー………青に、少し黄色混ぜて……うん、その色重ねてーーー…いや、違うな」


美術部部長をはじめ、三年の部員たちは軽音部から言い渡されたイメージに沿ったデザインの配色を考えて話し合っていた。


「うーん……、そもそも”アメリカ西海岸のイメージ”って、なかなか難しいものがあるな。
ざっくりしすぎじゃない?」

「軽音部部長はなんでこんなに丸投げなんだよ?俺
たち文化部にアメリカのヒッピーだのジャズだの……わかるわけないだろ……」

「うちの部の中にアメリカ行ったことある人、いんの?そもそも西海岸ってどこだよ…」

部員の皆は苦笑いをする。



軽音部の今年の文化祭演奏のテーマは“洋楽”。
『アメリカ西海岸のイメージでパネルを作って欲しい!』と、なんとも無茶振りな要求を断りきれず引き受けてしまった美術部長は、
「みんな、ごめんなーーー…」と申し訳なさそうに手を合わせる。



三年唯一の女子部員が、ふとひらめいて提案する。


「アメリカ西海岸なら……カリフォルニア州辺りの文献や歴史資料に、雰囲気の写真とか載ってないかな、と思うけどーー…。
参考にならない?」


「おお~~!それいいかも!」

「さすが美術部博識担当!」



女子部員はフッ、と笑うとメガネをクイっと持ち上げる。



「ーーーあ、じゃあ俺、今から図書室探してこようか?
借りてる画集があるからそれ返却したいし。
アメリカ西海岸の資料、だよね?」


夕人がそう言って女子部員に近付くと、彼女は「えっ!?は、はい!」と黄色い声で反応する。

「わかった、見てくるよ」


そしてすぐさま顔を赤らめて、
「王子に話しかけられちゃった……」
と小さく呟く。




「相模くん……
あのクールメガネ女子すら一瞬で翻弄するとは……」

「罪な男よのう……」
 



部員たちは口を揃えて頷いた。



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