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15歳・芒種 ー道標ー

2『自画像』 -2-

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ーーー……

「はーい!じゃ、バスケ部は一年から先片付けて解散ー!」

「ありがとうございましたー!」


速生は体育館を出て手洗い場で顔を洗うと,帰り支度をした。



「玖賀、お疲れー」

「おう、お疲れ。伊勢は今日チャリだっけ?」

「いや、俺は今日親の車なんだ。ちょっと帰り用事があってさ」


二人は話しながら下駄箱へ向かった。


「……………あれ?」

「どうした?」

「まだ、帰ってない…………夕人」



下駄箱には、夕人の靴がまだ残ったままになっている。

「へぇ、珍しいな?こんな遅くまで美術部やってんのかな…。
そういえばいまから天気崩れるらしいぜ?
夕立ちに雷予報って聞いたから、早めに帰った方がいいぞ」

「げっ……か、…?マジで…?
……俺、ちょっと美術部の部室寄ってくるわ。また明日な、伊勢」

速生は一度履きかけた運動靴を脱いで下駄箱に戻し、急ぎ足で美術部室へ向かった。



いつもならとうに部活が終わって、先に帰ってるはずの夕人がまだ校舎内にいる……速生からすると、とても不思議な感覚だった。


(あ、そういえば俺、美術部室初めて行くかもーー……たしかこっちで合ってたよな?)


階段を上がって渡り廊下を通り、1番突き当たり。

一度だけ芸術の授業の時に前を通ったきりで、速生からは縁遠いその教室は遠目から見ても物静かな雰囲気が漂い、なんだか、そこに夕人がいるのがよくわかる気がした。



ドアが開放された部室を、外から覗く。


教室の隅、窓際にひとり椅子に腰掛けてカンバスに向かっている夕人の姿が目に入った。



(お、いたいた………)



「ゆうーーーー………」


声をかけようとして、速生は一瞬思いとどまった。







部室奥の窓から差し込む夕日が逆光となり、夕人の姿を照らす。


橙色に染まる少し暗めいた部室の中………それはまるで言葉に変え難い雰囲気でーーー、



普段よりもいっそう、哀愁の漂う夕人の横顔に、速生は言葉もなく見惚れていた。









それはとても美しく、近寄りがたく、脆く、儚く、


決して触れてはいけない、なのに、手に入れたくて仕方ないーーー…



まるでどこにも置いていない絵画を切り取ってそこでただ見ているような……

不思議な感覚に陥った。






「ーーーー……………」





速生は思わず、鞄の中からスマホを取り出した。



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