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15歳・芒種 ー道標ー

2.麦茶とロイヤルミルクティー

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夕人と速生が通う市立第一高校は、一般的な教科目を学ぶ普通科、プログラミングなどIT関連に特化した情報処理科、語学・主に英語を専修する国際教養科という3つの学科で学年ごとにクラスが別れていた。


普通科を希望、配属された夕人と速生は、三年間同じクラスで専攻科目も同じとなり、学校にいる間、二人はまず離れることはないということだった。


「相模くんと玖賀って、ほんっと仲良いよなー。」


昼休み。
2人が学食の食堂で昼食をとっていると、同じクラスの友人が話しかけた。

「えへへ……そ、そうかな?」

「いや、何で照れてんだよ。」


速生は学食のカレーを食べながら謎の照れ笑いをする。

「だって相模くんてさ、弁当持ってきてんだろ?それ持ってわざわざ学食まで玖賀に付き合って……いつ見ても絶対に2人でいるからさ、ほんと仲良いんだなぁーと」


夕人は母の手作り弁当を、速生と同じ学食のテーブルに座って食べていた。


「いやいや~~だって俺が誘ってあげないと…夕人、ぼっち飯になって可哀想かなって……」

「は~~~い~~~?
誰が毎日昼休み一番に“頼むから学食ついてきて~”って言ってんだっけ?」

「はは~~夕人さまぁー、恐れ入ります。
あ、カレーひとくち食べる?」

「いらねぇよ!」


友人は2人のやり取りを見てはははと笑う。



「いや、ていうか、速生お前は普通にそれ、2食目だもんな?おばさんの作った弁当いつ食べたんだよ?」

「え、あー……朝練の後かな?いやだって、腹減って仕方ないんだよなー、なんたって、育ち盛りなんで」

「それ以上まだでかくなるつもりか?」

速生は高校に入学してからまた更に背が伸びて、もうあと数センチで180cmに届きそうなほどだった。
やっと160cmそこそこまで伸びてきた夕人とはえらい違いで、2人はどんどん身長差が開いていく。


「ていうかなぁ、夕人と一緒に行動してたら、驚くぞ?
学食のおばちゃんからは何か注文すれば必ず特盛出てくるし、購買でノート1冊買ったらおまけに3冊持って帰ってきて、自販機ですらジュース当ててくる………夕人、お前ってもはや歩くクーポン、いやギフトカード!」


「最後のはたまたま強運ってだけじゃ……。ってまさかそれ目当てか?玖賀お前やらしいやつだな。
でも、なんかわかるなー、相模くんは、なんかどこか特別感あるっていうか、高級品…的な?
飲み物で例えるなら、
相模くんはロイヤルミルクティー。
玖賀は…………麦茶、みたいな」


「ぶふっ…む、麦茶……」


夕人が口の中のご飯を吹き出しそうになり、俯いて堪える。


「んだよ、麦茶なめんなよ⁉︎ってかお前、例え上手いじゃん!まさにそれだわ。
けどなー、よくよく考えたら夕人は“相模くん”で、俺は“玖賀”って呼び捨ての時点で、格差バリバリだからな!」

夕人は弁当をクロスで包んで、静かに帰り支度をする。


「俺ちょっとトイレ行ってくるけど……速生、先戻る?」

「いや!待ってるぜ、あ、連れションしたい?ついていこうか?」

「いや結構です」

夕人はスタスタと学食を出た。





「ーーーちょっと!ほら、相模くんやっと1人になったよ!今しかないって」

「ーーーこんなチャンス滅多にないから!行っておいでよ!」

「ーーーあのいない間に行くしかないよ!頑張れ!」



「あっ、あの‼︎相模くん!」

本館校舎へ向かおうとしていると、後ろから突然声をかけられて夕人は立ち止まり振り向いた。


後ろには、別クラスの女子が3人立っていた。その内の1人が顔を真っ赤にしながら、少しずつ夕人へと近づいてくる。


「…………何?」

ーーートイレ行きたいんだけどなーー……。


無愛想な態度をまったく崩す気のない夕人の問いかけに、女子は小さなメモ用紙を夕人へ手渡そうとする。



「あっあの…!これ!私のlineのIDです!
良かったら、あの、相模くんのIDも教えてもらえませんか⁉︎」



「え………いやー、俺、あなたの名前もクラスも何も知らないけど。その相手に、そんな大事なもの渡したらダメなんじゃない?
まず、そもそもなんで?」

夕人の言葉に女子は少しショックそうな顔でひるんだが、まだ諦めない。


「あの‼︎私、ずっと相模くんと、仲良くなりたいなって…思ってて!
ただいつ見ても……なかなか1人でいる時がなかったから、その、今しかないと思って!
あの、もし良ければ、友達からお付き合いーー…」

「何してんのーーーーー?」

「!」


突然夕人の後ろから間に割って入ったのは、不自然に満面の笑顔の速生。



「あ、きみら、情報処理科のクラスじゃん?そっちのクラスにさぁ、伊勢っているだろ?
夕人はさー、伊勢と、俺とだから、まずは伊勢と仲良くなってくるのはどうかな?
あ、別に俺とでもいいよー?ID交換するー?」

「いえ……大丈夫です!!!」



速生の言葉に、女子3人はすぐさまその場から逃げるように去って行った。






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