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15歳・芒種 ー道標ー
1.嫉妬と期待と揺れる想い
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ちょうどその頃……朝練を終えて体育館からクラスの教室へ移動していた速生と伊勢。
「あー、いい汗かいたな。
…あれ?玖賀、あそこ歩いてんの、相模くんじゃね?ほら……」
「………えっ、マジで?」
伊勢の言葉に、速生は廊下の窓から下を覗く。
(……夕人、ちゃんと来たな、良かった~~……、ん?誰かと一緒に話してる……?)
「あの横にいるのって、三年の瀬戸さんって人じゃねぇの?あの背高いの。
たしか、”美術部の天才”って言われてる……」
「ーーーは?なんだよそれ。
天才??誰が?
なに、そいつ誰?」
「いやお前…三年の先輩に向かってそいつ誰はないんじゃ」
速生は伊勢の言葉に窓から身を乗り出す勢いで、並んで歩く二人を凝視する。
(ふん、俺の視力を舐めんなよ。
ここからなら夕人のチャーミングな仏頂面も丸見えだぜ……って、えっ……なんか笑ってる?
そんな、まさか、あの夕人が………?
ーーー何話してんだ?)
会話内容はわからないが、あの他人に塩対応がデフォルトの夕人が、自分以外の誰かと話しながら登校しているなんて……。
(しかも最後、あれ絶対笑ってたよな⁉︎
嘘だろ?マジで?
ゆ、夕人ぉぉーーーー‼︎)
例えようの無い感情に胸がもやもやとしておさまらず、速生は言葉にならない想いを隠すようしばらく黙り込んだ。
そして静かに、顔を上げる。
「ーーー俺、ジュース買ってくる」
そう言い残してスタスタと自販機へ1人歩いて行った。
「玖賀………ジェラシーのオーラがぷんぷん出てるぞ……。
少しは隠せよ、怖いぞ…」
伊勢は、相模くんも大変だな。と一言ぼそっと呟いた。
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