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15歳・啓蟄 ー傷跡ー
3.油断 -2-
しおりを挟むーーー…
「では今日はここまでにしようか、ご苦労様。」
「はいーーー、ありがとうございました」
壁掛けの時計が、講義終了の時刻を知らせている。夕人は席を立った。
その瞬間。なぜだか、少しだけふらついた。
ーーあれ、なんだか……クラクラする…
「相模くん?大丈夫かい、どうかした?」
風間の声に夕人ははっとして、
「あ、いえーーー、大丈夫です。
ありがとうございました……失礼します」
そう言って足早に塾を出た。
外に出た瞬間、もう夕方の4時を過ぎていると言うのに、西陽がカンカンと夕人の体を照らした。
ーーなんだか…足が、変な感じだ……ふわふわする。
2歩、3歩、歩いたところで、夕人は街路沿いの電信柱に手をついて立ち止まった。
急激に胸の中を襲う悪心、グルグルとまるで頭の中と視界が回るかのような目眩に、夕人は息を切らし口を押さえる。
「……はぁ、……はぁ」
ーー横断歩道を渡れば、すぐそこに駅が見えてるのに……だめだ、歩けない……。
「…はぁ…っ…はぁっ………っ」
ーー気持ち悪い………。
絶え間なく続く目眩と悪心はおさまるどころか、頭から足元にまで響き渡り……頭の中がチカチカとして視界がぼやけていくその感覚に、限界を感じる。
“もう、立っていられない……”夕人は頭の中で呟き、そのまま、その場に倒れ込んだ。
キキィーーッ!
”ーーー相模くん!”
車のブレーキ音と、聞いたことのある声。
夕人の目の前は静かに、幕が暗転するように闇へ落ちていったーーー。
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