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15歳・啓蟄 ー傷跡ー

1. 合格発表

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夕人が新しい中学に編入してから、2ヶ月が経っていた。

推薦入試で志望校を受けた夕人は、2月中に無事合格発表の知らせが来、高校入学の準備をしていた。


そんな中ーー……




「はぁっ……はぁっ…はぁっ…」





『ピンポーン』


「はい、どちらさま…あっ速生くん?」


『夕人!ゆうとぉーーーー!!夕人‼︎
おばさん、夕人いるーー⁉︎』


ーータンタンタンタン…ッ!


階段を足早に駆け降りる音。



ーーガチャッ!

「速生っ‼︎
ーーーーどうだった……?」


玄関に駆け降りて靴も履かず素早くドアを開けた夕人は、深刻な面持ちで、速生の顔を見つめる。



「ーーーー…ってた」


「ーーーえ?」


「受かってたぜーーーー‼︎市立第一高校‼︎
俺、マジすごくねー⁉︎」

「………………!!!」


速生の大声に、夕人は声が出ず、思わず玄関のタイルにへなへなと座り込んだ。


「おっ、おい!夕人‼︎どうした?」

「い、いや……安心したら、腰抜けた……」


夕人の姿を見て速生はいや、なんでだよ!と笑って、腕を持って立ち上がらせた。



「すげぇじゃん…速生。
ほんとに…………おめでとう」


夕人の真剣な顔と言葉に、速生は照れくさそうに「へへ…」と笑う。



実は『自分も市立第一高校を受ける!』と断言したあの日から、速生は毎日猛勉強に励んでいた。


その頑張り具合に感銘を受けた夕人も勉強に付き合い、得意な分野は解き方や暗記のポイントを教えたりもした。



校内の図書室、放課後の自習室。



大好きなバスケの練習もセーブして、過去問や参考書を使って連日連夜勉強に明け暮れるほどだった。




速生の母は、突然人が変わったように勉学に励む速生を見て、嬉しがるのを通り越して気持ち悪がっていたが、やっと未来へ進む努力をするきっかけを掴んだのかーー、と、静かに応援した。


そしてその努力は身を結んで、無事、夕人と速生は、同じ高校へ進学できることが決まったのだった。




ーーーまさか、本当に受かるなんて…。


「いやぁ~~~、もう、正直テストとか参考書とか、見たくもないね!俺はやっと解放されたんだ…今から遊びまくるぜー!」

「はは……まあ、今はいいだろうけどさ。
一応、進学校だからな、入学してからはこまめに予習・復習していかないとついていけなくなるんじゃない?」

「げっ……」


そんな今からテンション下がること言うなよぉ、と速生は情けない声を出す。


「そういえば、伊勢も無事受かってたぜ。
俺が“落ちる”って言ったやつらに、賭け金徴収しに行くかな」

ふっふっふ、とワルそうな笑みを浮かべる速生。

「根に持ってたのかよ……。
でも、伊勢くんも受かってたんだ、良かったな。速生、高校でもバスケ、一緒に出来るじゃん?」


「まーな。けどさ……。
俺がやっぱり、1番市立第一に行きたかった理由はさ……」


速生が視線を下ろして顔をじっと見ると、夕人はきょとんとして、見返す。


「~~~~んーーー、ま、まあ、万事okということでっ!!
じゃっ、俺、家戻って母さんに報告してくるわ!仕事中だけど、結果わかったら電話だけ入れてって言われてんだよ!
じゃーな、夕人!」


「えっ、?あ……っお、おう……」



ーーって、まだおばさんに報告してなかったのかよ!優先順位おかしいだろ、なんで1番に俺に……。



そう思いつつも、つい顔がニヤけてしまいーー、夕人は顔を赤くしながら部屋へと戻って行った。









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