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天使~変わっていく身体~

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「とりあえず怪我の具合を確かめないと!」

 出血場所である胸のあたりを見ると、帯びたたしい出血により服は血で赤黒く染まっていた。
 何か鋭利な爪のようなもので突き刺されたような跡が四か所ある……早く傷を塞いであげないと。

「グラン・ヒールライト」

 傷口にそっと手かざし、魔力を活性化せて治癒の光を浴びせると、徐々に出血が収まっていき傷口が塞がっていった。
 もう少し遅かったら、最悪エンジェル・ライフを使わざるを得なかった……間に合って本当に良かった。
 地面に落下した際に衝撃で骨が折れている個所もあったみたいなので、そこも一緒に治療していく。
 程なくして傷口の治療は終わったものの、シューイチさんの表情は相変わらず血の気がなく苦しそうだった。
 それもそうだ、私がしたのは傷口を塞いだだけで失った血液や体力の回復まで出来たわけではないのだから。

「後は下手に動かさずに様子見ですね……」

 本当ならシューイチさんの服を脱がせて全裸にしてしまえば、それだけで私が何をするまでもなくシューイチさんは全快するのを知っているが、いくら緊急事態と言えど異性の服を自分の手で脱がせて全裸にするという行為に抵抗を感じてしまい、どうしてもできなかった。
 まあこうして無事に怪我の治療も済んだわけだし、シューイチさんが目を覚ましたら自分の手で全裸になってもらおう。

「それにしても……一体なぜここにシューイチさんが?」

 冷静に考えると、彼がこの山にいるのはどう考えてもおかしい。
 アーデンハイツからクルテグラに来るのにどんなに頑張ったとしても2~3週間は掛かるはずなのだ。
 それなのに彼はたった一日であの国から私の元にまで追いついてきたというのだ。
 常識的に考えてもあり得ないことだ。
 いや……そもそもシューイチさんに常識を求めるのがすでに間違っている。恐らく全裸になったら無敵になる能力で無理やりここまで来たのだろう。
 何のために? そんなのは決まっている……。

「どうしてこの人は私なんかの為に、そこまでしてくれるんですかねぇ……」

 そんなことをしてもらえる価値なんて私にはないはずなのに。
 少なくとも約束を破った挙句何も言わずにみんなの前から姿を消した私が、シューイチさんに気にかけてもらえる理由などないはずだ。
 それなのにシューイチさんはどうやったのか知らないが、こうして私の前に現れた。

「本当に、無茶ばかりするんですから……」

 ここまでの大怪我を負ってまで私なんかを追いかけてくるなんて……お人好しにもほどがある。
 未だに苦悶の表情を浮かべて眠っているシューイチさんのおでこにそっと手を添える。

「まあこうして、逃げずに傍にいるというだけで私も相当のお人好しなわけですけどね」

 思わず自虐的に微笑む。
 もうシューイチさんとは二度と関わらないと決めていたのだから、本当なら怪我を治したら凍えてしまわないように結界魔法を張っておいて立ち去ってしまうべきなのに……結局私はそれが出来ないでいる。
 自分はもう少し冷徹に動けると思っていたのだけど、どうやら考えが甘かったみたいだ。

 だってシューイチさんが傍にいるだけで、私の胸はどうしようもなく高鳴ってしまうのだから。





 冷たい……とても冷たい井戸の底にいるような感覚。
 ここはどこだろうと思い、上を見上げると一瞬にして景色が真っ赤に入れ替わった。
 なんでこんなに赤いんだろうと思い、周囲を見回すと自分の周りが炎に包まれていて「ああ、そのせいか」と冷静に判断できた。

「ここから先へは絶対にいかせんぞ」

 突然声がしたので振り返ると、沢山の魔物を前にボロボロになりながらも気丈に剣を構える褐色で騎士のような鎧に身を包んだ女の人がいた。
 青い髪をなびかせながら迫りくる異形の魔物を次々と斬り伏せていくが、魔物の数は一向に減っていかない。

「姫様の元には絶対に行かせん!!」

 女騎士が魔物の群れに手を向けると、そこから大量の氷のつららが出現して魔物たちを貫いていく。
 見た目ガッチガチの騎士なのに魔法まで使えるとか、凄い人だな……。
 よく観察すると女騎士の耳が普通の人とは違い長く尖っている。
 これはあれかな? 俗に言うダークエルフとかいう奴かな?

「はあはあ……もう魔力が……私もここまでか……」

 先ほどの魔法に全てを賭けていたのか、魔力を使い果たした女騎士が苦悶の表情を浮かべながら地面に片膝をついた。
 魔物の数はそれなりに減ったものの全てがいなくなったわけではなく、一匹……また一匹と女騎士へと群がっていく。
 助けなきゃと思ったが、どういうわけか全く身体が動かなかった。
 そうこうしてるうちに、ついに一匹の魔物の腕が女騎士へと振り上げられたその瞬間……女騎士の真下に人一人分がすっぽり収まるくらいの大きさの穴が開いて、抵抗すらできずにその穴の中に落ちて行った。

「……様……っ!」

 穴が閉じる瞬間、女騎士が誰かの名前を叫んだ気がしたけど上手く聞き取れなかった。
 そして次の瞬間、俺の真後ろからあふれんばかりの光が発生し、残っていた魔物や周囲の炎を含んだ何もかもを包み消し飛ばしていく。
 この光はどこかで見たことがある……そんなことを思いながら光の中心へと顔を向けると、そこには涙を流しながら茫然と立ち尽くす一人の少女がいた。
 俺はこの子を知っている……この子は……。

「……エナ」
「はい、なんですかシューイチさん」

 ……あれ?
 気が付くとそこはひんやりとした空気の漂う洞窟みたいな場所だった。
 俺どうしたんだっけ? たしか白虎の眷属に胸を爪で貫かれた後そのままぶん投げられて崖から落とされたんだよな? おーけーおーけーっいいぞここまでは順調に思い出せる。
 風の魔法で勢いを殺し身体強化でダメージを最小限に抑ようと覚悟したところまでは覚えてるんだけど……気が付いたら洞窟みたいな場所にいるしわけがわからない。
 しかも頭の下になんかとても柔らかい感触が広がっている……もしかしてこれは。

「なまこ!?」
「失礼ですよ!」

 思わず口を滑らせると、途端に誰かに怒られた。
 物凄くびっくりしたものの、俺はこの声を知っている。

「どういう神経してたら、私の膝をなまこなんかと間違えるんですか!」
「いや、あんまりにもいい感触だからつい」

 いい感触と言われたのが嬉しかったのか、ぷりぷり怒りながらも声の主は少しだけ嬉しそうな顔をした。

「目を覚ましたら何を言おうと思ってずっと悩んでたのに、どうしてあなたという人は……」
「ごめんな? 俺ってそういう性分だからさ?」
「知ってますし……はあぁ~」

 盛大なため息を吐かれてしまった。
 俺もいざ見つけたらどんな顔したらいいんだろうと思っていたが、どうやらそんな心配は不要だったみたいだな。

「やっと見つけたぞエナ」
「やっと……なんて言うほど時間経ってないですけどね。それよりも目が覚めたならどいてもらってもいいですか?」
「なんか体が鉛のように重たいからしばらくこのままでもいい?」
「……仕方ないですね」

 釈然としないといった表情を見せるエナだったが、少しだけ頬を染めていた。

「ていうか、なんで俺はエナに膝枕なんてされてんの?」
「むしろどうして傷だらけで崖の上から落ちてきたのか聞きたいんですけど!? ていうか、シューイチさんが私の元に転移できないように妨害魔法かけてましたよね? それなのにどうしてここにいるんですか!?」
「そんなもん、マグリドから走って来たに決まってんだろ」
「はしっ……!? 海はどうしたんですか!?」
「空飛んで越えてきた」
「とっ……はあ……やっぱり全裸パワーで強引に追いかけてきたんですね……」

 またもエナが壮大な溜息をついた。
 非常に傷つく反応だと思わなくもないが、俺がエナの立場だったら同じようにため息つくだろうと思ったのであえて深くは突っ込まなかった。

「どうやって私がこの国にいるって知ったんですか?」
「ケニスさんが確信的にうっかり口を滑らせてくれたよ」
「……あの人やっぱり信用できません」

 とは言っても心を読まれるレベルまで信用してしまっているんだろうな。

「ていうかエナさぁ? 今度あの力を使って倒れたら全て俺に話すって約束してたろ? なんで何も言わずにいなくなったんだよ?」
「わっ……私にだって色々と事情があったんですよ!」
「その事情を話すって約束してたろ?」
「それはそうですけど……シューイチさんに私の気持ちなんてわかりませんよ……」
「そりゃわかるわけないじゃん? なんにも聞いてないんだしさ」

 俺のその反論に、エナが何も言えなくなってしまったのか押し黙ってしまった。
 我ながら少し言い過ぎたかもと思ったが、事実なので致し方なし。

「……一人で私を追いかけてきたんですか?」
「この国来るまではね。この山には全員で来たけど」
「皆は無事なんですか?」
「多分大丈夫だと思うけど……ちょっとわからないな」

 圧倒的に不利な状況での不意打ちだったからなぁ……テレアは反応してたみたいだけど残念ながら俺は全く反応できずにこのざまだ。
 残されたみんなが心配と言えば心配だが、恐らくはぶちギレたレリスあたりにあの白虎の眷属は切り刻まれていることだろう。

「もしかして……先生にも会ったんですか?」
「先生……? もしかしてシオンさんのこと?」
「やっぱり会ってたんですね……ということは先生から私の事情とか聞いたんじゃ?」
「うーん……エナの背負ってる事情がこの世界の今後を左右するレベルみたいなぼんやりとした説明だけされて、後はなんにもかな?」

 俺のその言葉に「まあ先生ならそうですよね」とエナが小さく呟いた。

「あの人、エナとどういう関係なの?」
「私が子供の頃から魔法を教えてくれていた先生ですよ」

 いわゆる家庭教師みたいなものだろうか?

「先生からその説明をされて尚、私を追いかけてきたんですね? 先生の言った通り、私の抱えてる事情はこの世界の今後を左右する問題なんですよ?」
「俺たちだって神獣に関わっているんだから、ある意味この世界の命運握ってるようなもんだし今更じゃないか?」
「そうでしたね……」

 そこへエナの事情がプラスされたところで今更……という感じもするけどね。
 しばらく黙っていたエナだったが、ついに意を決したのか沈黙を破り口を開いた。

「長い話になるんですけど……聞いてくれますか?」
「どんとこい!」

 俺がそう返事を返すと、エナが薄く微笑んだ。

「まず前提として……私は広い意味で人間じゃありません」
「……続けて」

 今の何気ない言葉の中に、エナの今まで抱えていた葛藤の全てが詰まっていた気がした。
 それをこうして口に出したということは、それを認めてしまうということと同意だ……相当の覚悟があったに違いない。

「多分シューイチさんのことですから、大方の予想は着いてると思いますけど……私の身体に流れる天力という力は、正確には天使の力です。私の家系は生まれながらに天使の血を引いてます」

 やっぱりそうなのか……これについては散々ヒントを出されていたので予測はしていた。

「天力を使う度に私はそれに適した天使の身体に作り替えられて行くんです……その副作用で私は意識を失っていました」
「エナの瞳が赤く染まっていくのは、そのせい?」
「はい……今の私はもうかなり天使化が進んだ状態にあります」

 色々とわかった気がする。
 エナがどうして常人では考えられないほどの魔力を持っているのか……それは天使の力を使う度に自身が天使に近づいていくからなんだな。
 天力の使用に耐えられる身体になると同時に、エナの魔力もそれに比例して高まっていったんだろう。

「恐らく、次に天使の力を使えば私は完全に天使化してしまうと思います」
「天使になったら、どうなるんだ?」
「……わかりません。本来なら、もっとしっかりした準備や儀式を経てこの力を身体に馴染ませていく物なので……それが出来ない今、完全に天使化してしまったらどうなるのか本当にわからないんです」

 エナが辛そうに顔を伏せる。
 その表情には隠しきれない不安の色が滲みでていた。
 思わず話を止めさせようと思ったが、それでは今までの何も変わらないと思い、俺は心を鬼にして口を開いた。

「しんどいと思うけど詳しく聞かせてくれないか? エナのこと」
「……わかりました」

 ひんやりとした空気の漂う洞窟で、エナの口からその壮絶な過去が語られることとなった。
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