無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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守護~アーデンハイツが出来るまで~

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 やたらと豪華なフカフカベッドで気持ちよく寝ていたら、けたたましくドアをノックする音で強引に起こされた後、スチカに連れられた俺たちはいよいよアーデンハイツの王様と謁見することとなった。
 以前に一度通信機で会話をしたことがあったが、こうして直接お目にかかるのは初めてなのでいやがうえにも緊張する。

「なんやシュウ、いっちょまえに緊張しとるんか?」
「俺はこれでも礼節をわきまえてるんだよ」
「礼節を……ねえ」

 エナがなんだかジト目で見てくる。
 恐らくリンデフランデの王様と謁見した時のことでも思い出しているんだろう。
 あれはあれでベストな対応をしたと思っているんだが、どうやらエナ的にはそうではなかったようで、あの後しこたま怒られた挙句、礼節とは何たるかをこんこんと教えられたなぁ。

「あんまり失礼なこと言わないでくださいよ?」
「何をもって失礼というのかわかんないけど、まあ善処はするよ」

 エナがまるで「ダメだこの人、絶対わかってくれてない」という目で見た後、深くため息を吐いた。
 ひどく傷つく反応だ。

「何があったのかは知らんけど、まあうちの客人やしよほどのことがない限りは大丈夫やで?」
「前から聞きたかったんだけど、スチカってなんでこんなにこの国の王族と仲いいの?」

 今はこの城に住んでいて、王様とも気軽に話せる関係……なにをどうしたらそこまでの間柄になれるんだろうか?

「別に特別なことなんかなにもしとらんで?元々あのおっちゃんがうちの作る機械に興味津々だったのと、うちと上手いこと性格が合致した結果やな」
「……袖の下とか?」
「失礼なこと言うなや!」
「袖の下?どういう意味かな?」
「テレアちゃんはそんなこと知らなくてよいのですよ?」

 これから一国の王様と謁見するというのになんとも緊張のないことで……。
 そんなこんなで、ひたすら豪華な装飾の施された扉の前にやって来た。
 リンデフランデの時と同じで、この扉の先に王様がいるんだろう。

「これはこれはスチカ殿!お疲れ様です!」
「葉山宗一とその仲間たちを連れてきたから、おっちゃんに会わせてもらってええか?」
「そちらの方々がそうなのですね?王様から話を聞いております!皆さま遠路はるばるご苦労様でした!」

 スチカと話していた兵士が俺たちに向けてビシッと敬礼をしてきた。
 なんだろう……スチカのキャラもあってかリンデフランデの時と違いまったく緊張しなくなってきたな……。

「では王様がお待ちです。くれぐれも粗相のないようにお願いします」
「あいよー」

 スチカを見てると粗相ってなんだろうって思えてくるな?
 兵士によって扉が開けられ、スチカの後に続きながら俺たちは謁見の間へと足を踏み入れた。
 赤い絨毯の上を進んでいくと、派手な玉座に腰を掛けている恰幅の良い王様らしき人が目に入る。
 その傍らには綺麗なドレスを着飾り、最早見慣れた顔も見えた。
 さすがのティアでもこういう場ではきちんと王女様らしい服装になるんだな。

「おーっすおっちゃん!葉山宗一御一行様のご到着やでー!」
「ご苦労だったなスチカ……君たちも膝をつかなくてもいいから楽にしなさい」

 完全にのっけから出鼻をくじかれた。
 通信機で話した時はやたらフランクだったものの、さすがにこういう場では相応の対応を求められると思っていたのにこれである。
 この王様ちょっとフランクすぎないか?

「遠いところをわざわざ来てもらってすまないね!私がこの国の王であるランクス=アーデンハイツである」
「みんなよく来たのじゃ!元気な姿を見られてわらわは嬉しいぞ!!」

 王様の自己紹介に続いて、とうとう口を閉じているのを我慢できなくなったらしいティアが、いつもの調子で俺たちとの再会に歓喜の声を上げた。
 なんだろうな……この王様に会いに来たんじゃなくて、友達に会いに来たみたいな空気?

「えっと……改めて初めまして王様、葉山宗一です」

 俺の自己紹介を皮切りに、皆がそれぞれ自己紹介をしていく。
 どうやらみんなも王様のフランクな態度に困惑しているのが、声を通して伝わってくる。
 まあ明らかにリンデフランデの時と違うもんな……気持ちはわかるよ。

「面を食らっているだろうが、生憎私は堅苦しいのは苦手でね……もちろん普段は相応の態度で接するが、君たちは他ならぬスチカの親友だからね!」
「そうじゃぞお父様!シューイチたちに王様らしい普段の対応は必要ないのじゃ!スチカの友であると同時にわらわの友でもあるのじゃからな!」
「はっはっはっはっ!!まあそういうことだよ!」

 いや、どういうことだよ!
 ティアの発言から、どうやら普段はちゃんと王様らしい威厳を持った対応をしてるらしいが……俺たちにもできればそうしてほしかった。

「さて……君たちにはまず初めにお礼を言わないといけないな……三日間ティアの面倒を見てくれてありがとう!君たちの元から帰って来てからというもの、ティアの対応が心なしか優しくなったと城内でも評判でね!いやはや嬉しい限りだよ!」

 俺たちと出会う前はよほどわがまま放題だったことが容易にわかる発言だな。
 まあ本質的には優しい子だったから、遅かれ早かれそうなっていたとは思うけどね。

「そして約束通り、君たちに我が国が秘匿している神獣のことについて話そう」

 神獣……ティアが青龍の分け身を宿していたということは、恐らくこの国……いやこの城に青龍の本体がいるということなんだろうな。
 
「君たちもすでに知っていると思うが、この国にいる神獣は青龍だ」
「ティアが青龍の分け身を宿してましたし、そうだろうなとは思ってましたが」
「ふむ、分け身の知識もあるのか?どうやら私の思っている以上に神獣に関しての知識を持っているんだな?なら基本的な話は省いても問題がなさそうだな」

 そこまで言った後、王様がゴホンと咳ばらいをし、今までとは違い真面目な表情になった。

「実はこの国の神獣……青龍の封印は解けてないんだよ」
「えっ!?そうなんですか!?」

 ティアが青龍の分け身を宿していたくらいだし、てっきり封印は解けているのだと思っていた。

「封印を解くために必要な物が手元にないのでね……まあそれは青龍が自ら封印を解くためのアイテムを隠したかららしいが」
「じゃあティアに宿ってる分け身は一体何なんですか?」
「青龍の分け身で間違いないよ。そもそもの話はこの国の成り立ちまで話を遡っていなかいといけないんだが……」

 そうして王様の口から、このアーデンハイツの成り立ちがぽつぽつと語られ始めた。

 今から500年ほど前、まだここに国がなく森林が広がっていた時代……森の中で暮らすとある夫婦が、その森の中で不思議な青く輝く石を見つけたことから始まる。
 その汚れた青い石を持ち帰った夫婦は、石を綺麗に磨き宝物のように家の中で飾っていた。
 石を拾った数日後、その夫婦の夢の中に一匹の巨大な龍が現れる。
 青龍と名乗ったその巨大な龍は、自分の核石を見つけて磨き上げ大切にしてくれたことに感銘を受け、お礼をしたいと二人に告げるも、元々打算的な思考を持っていなかった夫婦からは特に何もいらないと言われてしまう。
 それでは感謝の意を示せないとした青龍は一つの提案をする。
 自身の力を切り離した分け身を作り出し、これから生まれてくるであろう夫婦の子供に宿らせることで、護っていきたいと二人に話した。
 自分たちの為にここまで言ってくれるのだから……と、青龍の熱意に根負けした二人はその提案を受け入れた。

『我の力を持ってして、必ずや二人の子供に富と繁栄を約束しよう』

 その言葉を合図に目を覚ました夫婦は、二人そろって同じ夢を見ていたことを不思議に思いながらも、夢の中で出会った青龍が本物だと確信し、その後も変わらず青龍の核石である青く輝く石を大事にしていった。
 それから数か月後……ついにその夫婦の間に男の子が生まれた。
 その子供はすくすくと成長していき、二人は健やかに育っていく息子を微笑ましく見守り……五年が過ぎた頃に、それは突然起こった。

 とある夜、一つの布団にて三人で川の字になって寝ていた時、突然息子の身体が青い光に包まれ、二人は何事かと跳び起きる。
 その光はやがて息子から離れて宙に集まったと思うと、一匹の小さな龍の形となった。

『ようやくこうして話せる時が来たな……我が名は青龍、その昔お主たちに助けられた者だ』

 いつかの夢がやはり現実のことであったと確信した夫婦は、青龍から話を聞いていく。

『我は今は封印されているが、万が一にも我の封印を解いてはいかん。さすれば我に植え付けられた暴走の種により、たちどころに我は暴走し全てを食らいつくす破壊の権化となるであろう』

 邪神カオスに植え付けられた暴走の種は、神獣が本来の力を完全に取り戻した時に初めて発芽し、神獣を暴走させるのだという。
 こうして封印された状態であれば、暴走する心配はないとのこと。
 青龍が分け身を作り二人の子供に宿らせたのは三人を護る意味もあり、また自身の力が暴走しないようにする意味もあったのだ。

『我の封印を維持してくれる限り、我は其方たちを護り続けることを約束する』

 二人はその言葉を重く受け止め、その後も青龍の封印が解かれることのないように固く約束を交わした。
 その後も青龍は二人の息子を通じて度々姿を現すようになり、二人に様々な知識と助言を与えていく。
 分け身とはいえ青龍の力を宿した二人の息子は、目覚ましい成長を遂げていき、やがてこの森林を中心とし様々な武勲を打ち立てていく。
 やがて立派な青年へと成長した二人の息子を中心とし、各地から噂を聞きつけ人が集まっていく。
 そして年月が経ち、森林を切り開いていき一つの小さな村が出来上がった。

 その小さな村こそが、後の大国アーデンハイツとなるのである。

 青龍の力によって護られたその小さな村は年月を重ね少しずつその規模を大きくしていく。
 やがて夫婦は天寿を全うし、残された息子も嫁を取りまた子を成した。
 息子に宿っていた青龍の分け身は、息子を離れその子供へと移っていく。
 それを繰り返していくこと500年……そうしてこの国、アーデンハイツは歴史に名を残していくこととなった。


「……ということだ」

 アーデンハイツの成り立ちを一通り語り尽くした王様が、大きく息を吐きだして椅子に座りなおした。
 今の王様の話から得た情報を整理し、俺なりに解釈していく。

「要するにアーデンハイツの王族は代々青龍の分け身を受け継いでいっているわけですね?」
「その通りだよ。私も昔は青龍の分け身を宿していたんだがティアが生まれてからはそちらに移ったみたいでね」

 これで色々なことに納得がいったな。
 玄武や朱雀が、ティアの中にいた青龍の存在に全く言及しなかったのは、青龍が分け身だったからなんだな。
 以前朱雀から聞いたんだが、分け身は自身と全く同じに作ることも出来れば、少し細工して全く別の存在にすることも出来るのだそうだ。
 それについては朱雀がエルサイムのダンジョンの新しいボスを作る時に、自身の分け身に玄武の力も混ぜていたことからわかることだ。
 恐らく青龍は邪神の目から逃れるために、分け身に細工を施しその結果、邪神だけでなく仲間である他の神獣たちですら検知できない別の存在になったのだろう。
 以前青龍の分け身が、俺に自分の存在を内緒にしろと言ったのはそういう事情があったんだな。

「さて……こうして青龍の事情を話したことだし、君たちに頼みたいことがある」
「……なんでしょうか?」

 なんだろう……今までの経験則からあんまりいい頼み事じゃない気がする。

「近頃、青龍を本格的に復活させようとしている輩がいるらしくてね……多分君たちも知っていると思うけど、その輩というのが」
「カルマ教団……ですね」

 ほらな!だと思ったよ!
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