無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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出国~手から光線~

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 アーデンハイツへの出発まではまだ時間があるので、俺はルカーナさんの元へと足を運んだ。
 以前からあの国行くことは伝えてあったので、とりあえずここ最近起きたことを掻い摘んで説明していく。
 この前助けてもらった時もあまりちゃんとした事情説明を出来てなかったからな。

「お前もつくづく面倒くさいことに首を突っ込んでいくんだな」
「まあ性分なんで」

 俺の返答に呆れたようにルカーナさんがため息を吐いた。

「本音をいうと俺も付いて行ってやりたいところだが、俺は俺でヤクトから頼まれごとをされていてな」
「ヤクトさんからですか?」

 あの、人の良さそうな笑顔が脳裏をよぎる。
 ヤクトさんがルカーナさんに対して頼むことか……差し当たって……。

「この国のカルマ教団についてですか?」
「相変わらず察しがいいな。実のところマグリドの教団はヤクトたちに潰されたが、残党どもが隠れて何かこそこそしてるらしい」
「ゴキブリみたいな奴らですね」

 となるとリンデフランデでももしかしたら何かこそこそやってる可能性もあるな。
 まああの教団連中が、各国の支部を潰されたところで活動を自粛するとは思えないけどね。
 ああいうのは大元をきちんと徹底的に潰さないと本当にゴキブリのごとく何度でも湧いてくるからな。
 この話を聞けただけでもルカーナさんのところに来てよかったな……後でリンデフランデのギルマスのクエスさんにも通信機で連絡しておかないと。

「しかし、アーデンハイツか……」
「どうかしたんですか?」
「……少し待っていろ、あまり気は進まないが知り合いへの紹介状を書いておいてやる」
「ルカーナさんの知り合いですか?」

 俺への返事もそこそこに、ルカーナさんは部屋の奥へと引っ込んでいった。
 失礼な言い方だが、この人ヤクトさんしか友達いないと思ってた。
 この国に来てルカーナさんと出会って以来、俺たち以外と会ってる様子をまったく見られなかったからなぁ……。
 そんなことをぼんやりと考えていると、なにやら封筒のようなものを持ったルカーナさんが奥の部屋から出てきた。

「アーデンハイツに俺の知り合いでもある「メイシャ=ハラード」という女がいる。アーデンハイツのギルドに行って、その手紙を受付に渡し俺の名前を出せば恐らく向こうから出てくるだろう」
「メイシャさんですか……ルカーナさんとはどのような関係で?」
「簡単に言ってしまえば、ライバルだな……単純な戦闘力なら俺と互角だ」

 レリスでさえ赤子の手を捻るかのようにあしらうこのルカーナさんと互角……それって恐ろしく強い人じゃないの!?
 怖え……この世にはまだまだ恐ろしい人がゴロゴロしてるんだな……。

「特にテレアとは必ず会わせておけ」
「テレアにですか?それはなぜに?」
「会えばわかる……それじゃあ俺は用事で出かけなければならんのでこれで失礼するぞ」

 もうちょっとそのメイシャさんという人の情報を聞いておきたかったが、用事があるというのでは仕方がないな。

「……ちゃんと見送りをしてやれなくてすまんな」
「いえいえ気持ちだけで十分ですよ!それじゃあ行ってきます!」
「道中気をつけろよ?……あとお前らの家のことは任せておけ」

 シエルとコランズもいるのにさらにルカーナさんまでとなると、いよいよもってうちの拠点は難攻不落の要塞に見えてくる。
 そんなわけで俺はルカーナさんと別れ、拠点へと戻っていくのであった。



「それじゃあ行ってくるよ」
「はい!留守は私とコランズ君に任せておいてくださいね!」

 いよいよアーデンハイツへ出発する時間になった。
 馬車もレンタルしたし準備も万全のはずだが、どうして出発直前になると何か忘れてるんじゃないかって気分になるんだろうな?

「コランズも悪いな、給仕係になったばかりなのにいきなり長期間留守にしちゃって」
「―――構いませんよ?こうして寝床があって働ける場所があるだけでも運がいいですから」

 相変わらずロボットのような抑揚のない声でコランズが俺に答えた。
 コランズに関しては、これはもうこういう性分なのだと思うことにした。

「皆さんも道中気を付けて行ってきてくださいね?」
「ありがとうございますシエルさん!」
「ちゃんとお土産買ってくるからね!」
「……私たちが留守中にサボらないように」
「後のことはよろしくお願いいたしますわね」

 俺たちが留守にするのはおおよそ二週間ほどだが、向こうでは何が起こるかわからないからな……下手したら一か月留守にする可能性だってある。
 つくづく馬車くらいしか移動手段がないのがネックだよなぁ……早いことスチカが大型の飛行機を作ることを祈るばかりである。

「宗一さんも何かあったら遠慮なく念話飛ばしてきてくださいね」
「わかってるよ、こっちの状況は定期的に報告するからさ」
「―――みなさん、どうかお気を付けて」
「コランズもありがとうな?そんじゃアーデンハイツへ向けて出発しますか!」

 俺の声を合図に全員が馬車に乗り込み、シエルとコランズに見送られながら住み慣れた拠点を後にした。
 三分ほど馬車を走らせた辺りで、俺はふと疑問に思ったことを口にする。

「そういえばエルサイムって入国審査にやたらめったら時間掛かったけど、もしかして出国審査もあるのかな?」
「……」

 俺の疑問に対しエナがさっと目を逸らしたのを見て、それだけで察することが出来てしまった。
 まじかよ……もしかしてまた長い時間待たされるのんじゃないだろうな……?
 俺の予想が当たっていたかどうかは……まあ出国出来た頃にはもうそれだけで辟易してしまっている俺たちの様子を見てもらえれば一発でわかるよな?



 エルサイムを出国しておおよそ三時間ほど経った頃、通信機から着信を知らせるメロディーが流れた。
 通信機を開きディスプレイを見ると、そこにはお別れ前に通信機番号を交換しておいたスチカの名前が表示されていた。

「おーっすスチカ」
『よっシュウ!もうエルサイムは出たんか?』
「三時間ほど前になー。そっちはもうアーデンハイツに着いたのか?」
『何事もなく昨日の夜には到着しとったわ。ティアが早くお前らに会いたいってうるさくてなぁ』

 そうかそうか……無事に帰れたようでなによりだ。
 ティアも相変わらずなようで……。

『おっちゃんにもちゃんと今回の件話しといたで?ちゃんと約束は守るっておっちゃんから伝えてくれって言われたからこうして電話したわけや』
「そっか……それなら安心だな」

 折角アーデンハイツまで行ったのに門前払いされる心配もなくなったので、少し安心できた。
 ……この際だからちょっとばかりお願いしておこうかな?

「スチカ、今時間あるか?色々と話しておきたいことがあるんだけど」
『お?なんや真面目なトーンやな?色々とめんどくさいことが起こってるんか?』

 アーデンハイツについたらスチカと合流することになるだろうし、今のうちに情報の共有をしておいて、あわよくば俺たちが到着する間に色々と情報を集めてもらっておきたい。
 向こうに着いてから色々と調べていたのでは遅いだろうしな。

「まずは……」

 そうして、俺はスチカに俺たちの抱えてる事情を掻い摘んで説明していく。
 
『なんやほんまに面倒くさいことに巻き込まれてるんやな?』
「同じセリフを今日別の人からも言われたよ」
『それにしてもエレニカ財閥と貴族のグウレシア家か……たしかにここ最近ちょいあの周辺は慌ただしいな』
「やっぱりそうなのか?」
『しかしあと一週間の間に結婚式って……めっちゃ怪しいな』
「その辺は噂になったりしてないのか?」
『うちも昨日帰って来てから今まで寝てたからなぁ……ちょっとわからんわ』

 いつまで寝てんだよ……もう夕方近いぞ?
 とはいえ昨日はずっと飛行機を操縦してて気も張っていただろうし疲れてたんだろうな。

『とりあえず任せとき!うちも出来る限り調べるし、おっちゃんにも頼んで色々と探りを入れてもらうわ!』

 いやはや、国に動いてもらえるのは本当に助かるなぁ……。
 あんまりこういう打算的なことは考えたくないが、スチカやティアと仲良くなっておいて良かった。

『後は他になんかないか?』
「んー……とりあえずはそんなところかな?」
『わかった!そんじゃ詳しいことわかったらまたこっちから連絡いれるわ!』
「ありがとな、スチカ」
『うちとシュウの仲や!水臭いこと言いっこなしやで?そんじゃまたな!』

 スチカとの通話を終えた俺は、小さくため息を吐く。
 俺が通話を終わらせたタイミングを見計らって、エナが話しかけてきた。

「スチカちゃんですか?」
「ああ、無事にアーデンハイツに着いたってさ」
「そうですか……それならよかったです」
「やっぱり以前からエレニカ財閥とグウレシア家周辺はちょっと怪しかったらしいよ」
「まあこういうあからさまに不穏な噂って、あっという間に広まりますしね」

 なぜかそういう噂に限ってな?

「しかし……神獣の件に加えてエレニカ財閥の問題ですか……どちらも一筋縄ではいかなさそうですよね」
「いっそのこと二つの案件が繋がってればいいんだけどな」
「それだと二つ合わさって余計に大事になっちゃうんじゃないかな?」

 俺たちの話を聞いていたテレアが、そんなことを言いながら会話に参加して来た。
 テレアの言う通り二つに分散されているのも面倒くさいが、明らかに手に負えなさそうな事件になられるものまた問題だよなぁ。
 でもこれは俺の勘なんだけど、アーデンハイツで待ち構えているこの二つの案件は、裏でつながっているんじゃないかって気がしてならない。
 明確な理由なんてないからうまく説明はできないが、なんとなくそんな気がするのだ。

「そういえば……テレアってメイシャ=ハラードって人知ってる?」
「えっと……聞いたことないかも」
「その人がどうかしたんですか?」
「いやね?ルカーナさんがアーデンハイツに着いたらその人を訪ねろって言うんだよ?しかもテレアとは必ず会わせるようにって念を押された」

 とはいえテレアの様子を見るに、どうやら全く知らない人のようだ。
 なぜルカーナさんはそのメイシャって人とテレアを会わせようとしてるんだろうか?

「レリスはメイシャ=ハラードって人知ってる?」

 フリルと共に馬車を引きながら談笑していたレリスにも聞いてみる。

「メイシャ=ハラードですか……聞いたことがあるような……ないような……」
「……私は知ってる」

 驚いたことに以外な人物から目撃証言が聞けそうだった。

「そうなのか!?どこで知り合ったんだ?」
「……厳密に言うと知り合いじゃない。昔アーデンハイツで一座が公演をするときにどうしても治安の悪い場所しか取れなくて、心配になったおじじが腕利きの冒険者を雇った時に来たのが、その人だった」
「どんな人だった?」
「……気が強くて、絡んできたごろつきを素手で一瞬のうちにボコボコにするくらいは強かった」

 素手か……どことなくテレアを彷彿とさせるな。

「……あとなんか手から光線を出してた」
「「「「光線っ!?」」」」

 思いもしなかった単語を聞き、フリルを除いた全員が声を揃えて叫んだ。
 手から光線を出すって……どんな野菜人だよ!

「なんか一気に謎が深まったんですが!?」
「何でルカーナおじさんはそんな人とテレアを会わせようとしてるの!?」
「……もしかしたらテレアも手から光線を出せるようになるかも」
「どうしてフリルちゃんは、そんなにわくわくしているのですの?」

 詳しい人物像が聞けるかと思ったら、さらに謎が深まってしまった。
 そんな話をしつつも、俺たちの馬車の旅は順調に進んでいくのだった。
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