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後悔~お互いの失敗~
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結局のところ現状では何も取れる手段がない。
カルマ教団に対して俺たちが相談して出した結論がそれである。
いくら本部の場所がわかると言っても迂闊に乗り込むわけにもいかないし、もう少し情報を集めてからじゃないと動けないしな。
俺はそもそもこの世界のことについてまだまだ知らなさすぎる。大体まだ転生してから半年も経ってないんだ。
とりあえずは今回の件はみんなが無事だったということでよしとすると意見が一致しお開きとなった。
「フリルー入るぞー?」
フリルがまだ目を覚ましてないことは知っているが、一応ノックと断りを入れてから扉を開ける。
部屋に足を踏み入れると、ベッドで安らかに寝息を立てる傍らにティアがいた。
俺たちが教会跡地から家に戻って来てからずっとこれである。
「ティア、フリルはどうだ?」
「寝ておるよ……あんなことがあったというのに呑気なものじゃ」
そう言ったティアの表情は暗い。
思えば始まりはティアがフリルの歌を否定したところから始まってるんだよな。
あそこで教団の邪魔が入らなければもしかしたら仲直り出来ていたかもだけど……まあもしもの話をしても仕方ない。
「……のう、シューイチよ」
「ん?どうした?」
うつむいた顔を上げないまま、床を見つめながらティアがぽつりぽつりと心境を話し始める。
「わらわは今まで自分の発言で誰かが傷つくなんて思ってなかったのじゃ……わらわの言うことはみんなが従ってくれる……文句など言われない……それが普通であったが……それは違うんじゃろ?」
「……そうだな」
「スチカだってなんだかんだ文句は言いつつも、最後にはわらわの言うことは聞いてくれた……でもフリルは違ったのじゃ」
こらえ切れない何かに耐えるように、ティアの肩が小刻みに震え始める。
「わらわの言うことを真っ向から反抗されて、わらわは頭に血が上っておったんじゃな……フリルの態度はなにも間違ってない……間違っていたのはわらわなのじゃろ?」
正直な話、フリルの態度もどうかとは思うんだけど、フリルにとっては自身の誇りとも呼べる歌を否定されたんだから、ティアに対するあの態度もまあわかるんだよな。
相手を否定することから入れば、返ってくる反応は勿論否定だ。
これは日本でも異世界でも変わらないだろう。
「んー……そこだけはちょっと違うかな?ティアが間違えたんじゃなくて、正確にはティアもフリルもお互いに間違えたんだよ」
「わらわたちが……?」
「たらればの話になるんだけどさ、フリルがちゃんと以前にも自分の歌をティアに否定されたっていう事実をちゃんとティアに話していれば、あの時ここまで話が拗れることもなかったんだよ。だってそれを知っていればあの時噴水広場で歌で勝負しよう!なんて話にはならなかっただろうし」
「当然じゃ……その事実を知っておればわらわはあの時あんな勝負をフリルに要求することなど……」
「そう考えると、フリルだって間違えてるんだよ。……まあこの子はあまり喋る子じゃないし、いざ喋っても言葉足らずなことも多いから、もしかしたらティアには伝わらなかったかもだけどな」
改めて考えるとこのフリルと十数年一緒に暮してきたルーデンスさんたちは凄いよなぁ……。
あの人たちのレベルでフリルを理解できる日はまだまだ来そうもないな。
「だからさ、あんまり自分だけを責めるのはやめた方がいいぞ?何もかもを自分のせいだって思い込んでしょい込んで潰れるにはまだティアもフリルも子供すぎるからさ」
実際リンデフランデでの一件をすべて自分が居たせいだと思い込んで、フリルはそれらを全て背負おうとし涙を流すほど苦しんでいた。
あんなフリルの顔ははっきり言ってもう二度と見たくない。
そしてティアにだってそんな思いをさせたくないのだ。
「辛いときやどうしていいわからない時は、周りにいる誰かに頼ったっていいんだぞ?多分スチカだってティアがそうしてくれるのを待ってるはずだしな?」
「……そうなのか?」
「勿論!なあスチカ?」
扉の外にも聞こえるように、わざとらしい大声で名前を呼んだ。
一呼吸置いたあと、ゆっくりと扉が開かれて罰が悪そうな顔したスチカが恐る恐る部屋に入って来た。
「なんや……気がついとったんか……」
「フリルの部屋に入る前から、誰か付けてきてるなぁ~って」
「そこからか!……まったく、気が付いてたんなら言えっちゅーねん」
俺の隣に立ったスチカが、握りこぶしを作り俺の胸を軽く小突いてきた。
そしてコホンと咳ばらいをして、自身を見上げるティアの元に近づいていく。
「あー……あの時は殴って悪かったな……」
「……いや、あれはわらわが悪かったのじゃ……スチカを怒らせるのも無理もない……わらわを許してくれるかスチカ?」
「そんなん許すも何もないわ!うちらは親友なんやろ?」
「そ……その通りじゃ!わらわとスチカは親友なのじゃ!」
教団連中との戦いの時はそれどころじゃなかったけど、お互いそのことをずっと気にしてたんだろうな。
つくづくこの二人がどういう経緯でここまでの関係になったのか非常に気になってくる。今度スチカに聞いてみよう。
「そんじゃスチカ、悪いけどティアを部屋に連れてって上げてくれないか?フリルのことなら俺が見てるからさ」
「何を言うか!わらわはフリルが目を覚ますまで傍におるぞ!」
「ティアは今日結構青龍の力を使ったから疲れてるだろ?お前さんに何かあったらアーデンハイツの王様に顔向けできないからな」
「でっでも……!」
「シューイチの言う通りやで?それにフリルに謝りたいなら明日でもええやろ?それとも目を覚ましたばかりのフリルにそんな重苦しい話するつもりなんか?」
スチカのその言葉に、ティアが小さく「たしかに」と呟き口を紡いだ。
付き合いが長いだけあって、さすがスチカはティアの扱い方を心得てるな。
「そんじゃうちはティアを寝かしてくるわ、おやすみなシュウ!」
「……後はシューイチに任せるのじゃ」
そう言い残して、二人はフリルの部屋から静かに出ていった。
さてと……。
「ティアはああ言ってるわけだけど、フリルはどうなんだ?」
「……別にどうもしない」
さっきからずっと寝たふりをしていたフリルに向けて俺は問いかけると、姿勢を変えないままフリルが答えた。
「ていうかお前さん、起きたんならティアと話をしてあげればよかったじゃん?」
「……揺れる乙女心がわからないシューイチは鈍感そのもの」
「へいへい、そいつは悪かったですね……そんで?もう大丈夫なのか?」
フリルがむくりと上半身だけ起こして俺を見てきた。
顔色は……明かり着けてないから暗くて良くわかんないけど問題なさそうだな。
「ごめんな……フリルのことちゃんと守れなかった」
「……シューイチのせいじゃないし、無事だったんだから気にしてない」
「そっか……ありがとうなフリル」
「……うい」
結果的にはフリルを助けられたから良かったものの、これからはカルマ教団の動きには十分注意しないといけないな……。
「んで話を戻すんだけど、ティアのことフリルはどうしたいんだ?」
「……さっきも言ったけどどうもしない」
「そういうわけにもいかないだろ?確かに明後日にはあの二人は国に帰る約束だけど、明日一日中ティアのこと無視するつもりか?」
俺の言葉にフリルが黙って俯いてしまう。
まったく……これまた自分で色々としょい込んでるな?
「フリルのそうやって自分でなんとかしようって心構え自体は美徳だけどさ、それだけじゃダメなことはもうフリルは知ってるはずだろ?」
「……」
「言ってくれれば俺だって協力するし、きっとエナやテレアやフリルだって喜んで協力してくれるぞ」
「……あの子に酷いこと言った……」
たしか「何も話すことなんてないからさっさと国に帰れ」だったかな?
「うん確かに言ってたな……でもその言葉を受けて尚ティアはフリルに今までのことをちゃんと謝りたいって言ってたぞ?あれでなかなかガッツのある子だよな?」
俺だったらあそこで心折れてたと思うね!
「そのガッツに免じて!……ってわけじゃないし、昔のことを水に流せとも言わないからさ、もう少しだけあの子の今の気持ちに歩み寄ってあげてくれないかな?」
「……昔のこと……誰から聞いたの?」
「ティアから直接聞いたんだよ。フリルだってそのことを予め俺でもいいし他の誰かに話しておいてくれれば、ここまで拗れることなかったんだぞ?」
「……ごめんなさい」
フリル口から謝罪の言葉をポロリとこぼれた。
まあ俺も別にフリルを責めるつもりじゃないし、その話はここまででいいか。
「んで話をまた戻すんだけど、フリルはどうしたい?」
「……酷いことを言ってしまったことを謝りたい」
お互いがお互いに自分の言動を謝りたい思っていることに対して、失礼とはわかっていたが、つい笑ってしまった。
「……なんで笑うの?」
「ごめんごめん、なんでもない!……とりあえずそれがフリルの本心なんだな?」
「……うい」
さて、それならどうするべきか……フリル自身はこう言ってはいるが、これで結構この子あまのじゃくだから、いざティアと二人きりにさせてしまうと心にもないことを言ってしまう可能性もあるだろうし……。
あとでエナやレリスあたりに相談しようか?スチカに意見を求めるのもありかもしれないな。
「じゃあ後は俺に任せておけ!絶対悪いようにはしないからさ?」
「……シューイチたまに信用できない」
「言ってろ……じゃあ今日はこのまま大人しく寝とけ?自分に何があったかは玄武に聞けば多分教えてくれるだろうからさ」
その言葉にフリルが頷いたのを確認して、俺は部屋から退出したのだった。
「そうですか……フリルちゃんがそんなことを」
「それでみんなに意見を聞きたいと思ってさ」
ロビーへ戻るとエナとレリスが二人でお茶を飲んでいたので、捕まえて先ほどの出来事を掻い摘んで話した。
まあみんなと言いつつ、もう夜も遅いということでテレアは就寝しているからこの場には俺とエナとレリスしかいないんだけどね。
ちなみにシエルにも声を掛けようと思ったけど、まだ仕事が全部終わってないらしく忙しそうだったから声を掛けられなかった。
「二人きりにさせるとまた喧嘩するかもしれないだろ?」
「まあフリルちゃんもアレで結構頑固なところがありますしねぇ」
「それでしたら、わたくしにいい考えがありますわ」
優雅にお茶を啜っていたレリスがカップをテーブルに置いてそう言った。
「何も二人きりにさせる必要はありませんわよ。ようはお互いが腹を割って話し合える場があればよいのですわ」
「腹を割って話し合える場……ですか?」
「ただ準備する期間が一日しかないのが厄介ですわね……恐らく明日はその準備で色々と忙しくなりますから、少なくともわたくしとフリルちゃんは動けなくなりますが……それでもよろしければ、後はわたくしに任せていただければ」
どうしよう……なんか全部レリスに丸投げするみたいで申し訳ない気がするんだけど、レリス本人がこう言ってるんだから、任せてもいいのかもしれないな……。
「わかったよ、それじゃあレリスに任せちゃってもいいかな?」
「お任せくださいな!必ずあの二人を仲直りさせてみせますわ!」
「私で手伝えることがあったら何でも言ってくださいね!」
その言葉に無言で返事を返すように、レリスがじっとエナを見つめる。
「……いえ……エナさんにお手伝いしてもらうのはちょっと……気持ちだけ頂きますわね?」
「なんでですか!?」
もうそれだけで、レリスが何を考えて実行に移そうとしてるのか大体の想像が出来てしまった。
その様子がおかしくてつい噴き出してしまったら、エナに怒られてしまったのは余計な話かな?
カルマ教団に対して俺たちが相談して出した結論がそれである。
いくら本部の場所がわかると言っても迂闊に乗り込むわけにもいかないし、もう少し情報を集めてからじゃないと動けないしな。
俺はそもそもこの世界のことについてまだまだ知らなさすぎる。大体まだ転生してから半年も経ってないんだ。
とりあえずは今回の件はみんなが無事だったということでよしとすると意見が一致しお開きとなった。
「フリルー入るぞー?」
フリルがまだ目を覚ましてないことは知っているが、一応ノックと断りを入れてから扉を開ける。
部屋に足を踏み入れると、ベッドで安らかに寝息を立てる傍らにティアがいた。
俺たちが教会跡地から家に戻って来てからずっとこれである。
「ティア、フリルはどうだ?」
「寝ておるよ……あんなことがあったというのに呑気なものじゃ」
そう言ったティアの表情は暗い。
思えば始まりはティアがフリルの歌を否定したところから始まってるんだよな。
あそこで教団の邪魔が入らなければもしかしたら仲直り出来ていたかもだけど……まあもしもの話をしても仕方ない。
「……のう、シューイチよ」
「ん?どうした?」
うつむいた顔を上げないまま、床を見つめながらティアがぽつりぽつりと心境を話し始める。
「わらわは今まで自分の発言で誰かが傷つくなんて思ってなかったのじゃ……わらわの言うことはみんなが従ってくれる……文句など言われない……それが普通であったが……それは違うんじゃろ?」
「……そうだな」
「スチカだってなんだかんだ文句は言いつつも、最後にはわらわの言うことは聞いてくれた……でもフリルは違ったのじゃ」
こらえ切れない何かに耐えるように、ティアの肩が小刻みに震え始める。
「わらわの言うことを真っ向から反抗されて、わらわは頭に血が上っておったんじゃな……フリルの態度はなにも間違ってない……間違っていたのはわらわなのじゃろ?」
正直な話、フリルの態度もどうかとは思うんだけど、フリルにとっては自身の誇りとも呼べる歌を否定されたんだから、ティアに対するあの態度もまあわかるんだよな。
相手を否定することから入れば、返ってくる反応は勿論否定だ。
これは日本でも異世界でも変わらないだろう。
「んー……そこだけはちょっと違うかな?ティアが間違えたんじゃなくて、正確にはティアもフリルもお互いに間違えたんだよ」
「わらわたちが……?」
「たらればの話になるんだけどさ、フリルがちゃんと以前にも自分の歌をティアに否定されたっていう事実をちゃんとティアに話していれば、あの時ここまで話が拗れることもなかったんだよ。だってそれを知っていればあの時噴水広場で歌で勝負しよう!なんて話にはならなかっただろうし」
「当然じゃ……その事実を知っておればわらわはあの時あんな勝負をフリルに要求することなど……」
「そう考えると、フリルだって間違えてるんだよ。……まあこの子はあまり喋る子じゃないし、いざ喋っても言葉足らずなことも多いから、もしかしたらティアには伝わらなかったかもだけどな」
改めて考えるとこのフリルと十数年一緒に暮してきたルーデンスさんたちは凄いよなぁ……。
あの人たちのレベルでフリルを理解できる日はまだまだ来そうもないな。
「だからさ、あんまり自分だけを責めるのはやめた方がいいぞ?何もかもを自分のせいだって思い込んでしょい込んで潰れるにはまだティアもフリルも子供すぎるからさ」
実際リンデフランデでの一件をすべて自分が居たせいだと思い込んで、フリルはそれらを全て背負おうとし涙を流すほど苦しんでいた。
あんなフリルの顔ははっきり言ってもう二度と見たくない。
そしてティアにだってそんな思いをさせたくないのだ。
「辛いときやどうしていいわからない時は、周りにいる誰かに頼ったっていいんだぞ?多分スチカだってティアがそうしてくれるのを待ってるはずだしな?」
「……そうなのか?」
「勿論!なあスチカ?」
扉の外にも聞こえるように、わざとらしい大声で名前を呼んだ。
一呼吸置いたあと、ゆっくりと扉が開かれて罰が悪そうな顔したスチカが恐る恐る部屋に入って来た。
「なんや……気がついとったんか……」
「フリルの部屋に入る前から、誰か付けてきてるなぁ~って」
「そこからか!……まったく、気が付いてたんなら言えっちゅーねん」
俺の隣に立ったスチカが、握りこぶしを作り俺の胸を軽く小突いてきた。
そしてコホンと咳ばらいをして、自身を見上げるティアの元に近づいていく。
「あー……あの時は殴って悪かったな……」
「……いや、あれはわらわが悪かったのじゃ……スチカを怒らせるのも無理もない……わらわを許してくれるかスチカ?」
「そんなん許すも何もないわ!うちらは親友なんやろ?」
「そ……その通りじゃ!わらわとスチカは親友なのじゃ!」
教団連中との戦いの時はそれどころじゃなかったけど、お互いそのことをずっと気にしてたんだろうな。
つくづくこの二人がどういう経緯でここまでの関係になったのか非常に気になってくる。今度スチカに聞いてみよう。
「そんじゃスチカ、悪いけどティアを部屋に連れてって上げてくれないか?フリルのことなら俺が見てるからさ」
「何を言うか!わらわはフリルが目を覚ますまで傍におるぞ!」
「ティアは今日結構青龍の力を使ったから疲れてるだろ?お前さんに何かあったらアーデンハイツの王様に顔向けできないからな」
「でっでも……!」
「シューイチの言う通りやで?それにフリルに謝りたいなら明日でもええやろ?それとも目を覚ましたばかりのフリルにそんな重苦しい話するつもりなんか?」
スチカのその言葉に、ティアが小さく「たしかに」と呟き口を紡いだ。
付き合いが長いだけあって、さすがスチカはティアの扱い方を心得てるな。
「そんじゃうちはティアを寝かしてくるわ、おやすみなシュウ!」
「……後はシューイチに任せるのじゃ」
そう言い残して、二人はフリルの部屋から静かに出ていった。
さてと……。
「ティアはああ言ってるわけだけど、フリルはどうなんだ?」
「……別にどうもしない」
さっきからずっと寝たふりをしていたフリルに向けて俺は問いかけると、姿勢を変えないままフリルが答えた。
「ていうかお前さん、起きたんならティアと話をしてあげればよかったじゃん?」
「……揺れる乙女心がわからないシューイチは鈍感そのもの」
「へいへい、そいつは悪かったですね……そんで?もう大丈夫なのか?」
フリルがむくりと上半身だけ起こして俺を見てきた。
顔色は……明かり着けてないから暗くて良くわかんないけど問題なさそうだな。
「ごめんな……フリルのことちゃんと守れなかった」
「……シューイチのせいじゃないし、無事だったんだから気にしてない」
「そっか……ありがとうなフリル」
「……うい」
結果的にはフリルを助けられたから良かったものの、これからはカルマ教団の動きには十分注意しないといけないな……。
「んで話を戻すんだけど、ティアのことフリルはどうしたいんだ?」
「……さっきも言ったけどどうもしない」
「そういうわけにもいかないだろ?確かに明後日にはあの二人は国に帰る約束だけど、明日一日中ティアのこと無視するつもりか?」
俺の言葉にフリルが黙って俯いてしまう。
まったく……これまた自分で色々としょい込んでるな?
「フリルのそうやって自分でなんとかしようって心構え自体は美徳だけどさ、それだけじゃダメなことはもうフリルは知ってるはずだろ?」
「……」
「言ってくれれば俺だって協力するし、きっとエナやテレアやフリルだって喜んで協力してくれるぞ」
「……あの子に酷いこと言った……」
たしか「何も話すことなんてないからさっさと国に帰れ」だったかな?
「うん確かに言ってたな……でもその言葉を受けて尚ティアはフリルに今までのことをちゃんと謝りたいって言ってたぞ?あれでなかなかガッツのある子だよな?」
俺だったらあそこで心折れてたと思うね!
「そのガッツに免じて!……ってわけじゃないし、昔のことを水に流せとも言わないからさ、もう少しだけあの子の今の気持ちに歩み寄ってあげてくれないかな?」
「……昔のこと……誰から聞いたの?」
「ティアから直接聞いたんだよ。フリルだってそのことを予め俺でもいいし他の誰かに話しておいてくれれば、ここまで拗れることなかったんだぞ?」
「……ごめんなさい」
フリル口から謝罪の言葉をポロリとこぼれた。
まあ俺も別にフリルを責めるつもりじゃないし、その話はここまででいいか。
「んで話をまた戻すんだけど、フリルはどうしたい?」
「……酷いことを言ってしまったことを謝りたい」
お互いがお互いに自分の言動を謝りたい思っていることに対して、失礼とはわかっていたが、つい笑ってしまった。
「……なんで笑うの?」
「ごめんごめん、なんでもない!……とりあえずそれがフリルの本心なんだな?」
「……うい」
さて、それならどうするべきか……フリル自身はこう言ってはいるが、これで結構この子あまのじゃくだから、いざティアと二人きりにさせてしまうと心にもないことを言ってしまう可能性もあるだろうし……。
あとでエナやレリスあたりに相談しようか?スチカに意見を求めるのもありかもしれないな。
「じゃあ後は俺に任せておけ!絶対悪いようにはしないからさ?」
「……シューイチたまに信用できない」
「言ってろ……じゃあ今日はこのまま大人しく寝とけ?自分に何があったかは玄武に聞けば多分教えてくれるだろうからさ」
その言葉にフリルが頷いたのを確認して、俺は部屋から退出したのだった。
「そうですか……フリルちゃんがそんなことを」
「それでみんなに意見を聞きたいと思ってさ」
ロビーへ戻るとエナとレリスが二人でお茶を飲んでいたので、捕まえて先ほどの出来事を掻い摘んで話した。
まあみんなと言いつつ、もう夜も遅いということでテレアは就寝しているからこの場には俺とエナとレリスしかいないんだけどね。
ちなみにシエルにも声を掛けようと思ったけど、まだ仕事が全部終わってないらしく忙しそうだったから声を掛けられなかった。
「二人きりにさせるとまた喧嘩するかもしれないだろ?」
「まあフリルちゃんもアレで結構頑固なところがありますしねぇ」
「それでしたら、わたくしにいい考えがありますわ」
優雅にお茶を啜っていたレリスがカップをテーブルに置いてそう言った。
「何も二人きりにさせる必要はありませんわよ。ようはお互いが腹を割って話し合える場があればよいのですわ」
「腹を割って話し合える場……ですか?」
「ただ準備する期間が一日しかないのが厄介ですわね……恐らく明日はその準備で色々と忙しくなりますから、少なくともわたくしとフリルちゃんは動けなくなりますが……それでもよろしければ、後はわたくしに任せていただければ」
どうしよう……なんか全部レリスに丸投げするみたいで申し訳ない気がするんだけど、レリス本人がこう言ってるんだから、任せてもいいのかもしれないな……。
「わかったよ、それじゃあレリスに任せちゃってもいいかな?」
「お任せくださいな!必ずあの二人を仲直りさせてみせますわ!」
「私で手伝えることがあったら何でも言ってくださいね!」
その言葉に無言で返事を返すように、レリスがじっとエナを見つめる。
「……いえ……エナさんにお手伝いしてもらうのはちょっと……気持ちだけ頂きますわね?」
「なんでですか!?」
もうそれだけで、レリスが何を考えて実行に移そうとしてるのか大体の想像が出来てしまった。
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