無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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教会~強力な助っ人~

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「邪魔だ!!」
「ぐはああ!?」

 立ちふさがったカルマ教団の下っ端団員を、身体強化を乗せた拳で殴り倒した。
 だがそいつと入れ替わるように別の下っ端団員が俺の前に立ちふさがった。
 さっきから鬱陶しいことこの上ないな……。
 実はこいつらホムンクルスかなにかで、もしかして教会跡地で量産でもしているんだろうか?

 フリル奪還のためにエルサイムの城下町のはずれにある教会跡地へ向かっていた俺たちだったが、周辺に近づくにつれカルマ教団の下っ端連中が立ちふさがり俺たちの行く手を妨害してくる。
 一人一人は全然大したことないが、何分数が多い。
 一匹見たら三十匹はいると言われるアレみたいな奴らだ。

「キリがありませんね……」

 軽い衝撃波を発生させる魔法を使い周囲の下っ端連中を吹き飛ばしたエナが、うんざりした様子で呟いた。
 目的地はすぐそこなのに、さっきから全然先に進めていない。
 こんなのをいちいち相手にしてたらあいつらに逃げられてしまうし、俺たちも消耗してしまってフリルを取り戻すどころではなくなってしまう。
 俺はまだ平気だけど心配なのは、先ほどゴルマを倒すのに結構な魔力を消費したレリスだ。
 目の前に立ちふさがった敵を剣で斬り伏せたレリスを観察すると、やはり大分消耗しているのか少し疲れた表情をしている。

「レリス、下っ端連中は俺に任せて少し休むんだ」
「シューイチ様……いえ、まだいけますわ!」

 そう言ってレリスは虚勢を張るが、この後待ち構えているゴルマとの再戦があると思うとやはり雑魚相手に消耗するわけにはいかない。
 それにテレアでさえ苦戦するあのコランズとかいうちっこいのもいる。
 しかもそれなりに高位な魔法使いもいるみたいだし、ある意味では路地裏での戦いよりも苦戦を強いられるかもしれないのだ。

「スチカ!なにかこう……一気に敵を蹴散らせる機械とかないのか?」
「アホか!あるならとっくに使っとるわ!」

 ですよねー!

「早くしないとまた転移で逃げられるかもしれないのに……!」
「そこの心配はいらないと思います。あの規模の転移魔法はおいそれと短時間に何度も使えるものじゃありませんから」

 俺が口にした不安を払拭するかのように、エナがそう言ってさらに言葉を続けていく。

「それに転移で逃げられるならいちいちこんな下っ端連中をけしかけて時間稼ぎするような真似はしないと思いますよ」
「でもこうやって時間稼ぎをして、何か罠を仕掛ける準備をしてるんじゃ……?」

 まさにテレアの言う通りだ。
 先ほどの路地裏で突発的に始まった戦いとは違い、俺たちを倒すべく準備を万全にした敵と戦いに行くのだ。
 確実に俺たちを倒すべく罠を張って待ち構えているだろうが、フリルを助けるためには罠があるとわかっていても行くしかない。

「ぬっ!?シューイチ!また新しい敵がやってきたのじゃ!」

 ティアがそう大声で言いながら指さした方向に首を向けると、教団の腕章をつけた複数の下っ端団員たちが連れ立ってこちらに向かってくる光景が視界に入った。
 今までよりも数が多い……教会跡地も目と鼻の先だしあいつらもどうやら少しでも時間を稼ぎたいらしいな。
 てか、どんだけ出てくるんだよ……もう面倒くさいからみんなに少し時間を稼いでもらって、全裸になって無敵状態で力任せに突っ切ってしまおうか?
 だがそれはあくまでも最後の切り札だ。いまここでその切り札を切ってしまったら、もしかしたらゴルマたちに無敵能力の全容が伝わってしまうかもしれない。
 それにこういう事態を想定して、一応の手は打ってあるのだ。

「どうしますかシューイチ様?無理してでも突っ切りますか?」
「強引に行くのはさすがにまずい……後続の憂いを断っておかないとこちらの方が足元をすくわれかねない」

 ただでさえ罠を張って待ち構えてるだろうし、しかもゴルマたちと交戦中に強引に振り切った下っ端連中に挟み撃ちにされる危険性もある。
 やはりある程度の消耗を覚悟でこいつらを倒していくしかない。
 敵の数の多さから予想するにこれが多分最後の抵抗だと思う。

「……わかりましたわ、それならわたくしがここに残り敵を押さえます!そうすれば最悪の事態に挟み撃ちにされることもなくなりますわ!」
「いや何言ってんの!?レリスにそんなことさせられない!」

 ここに一人残して行くなんてできるわけがないし、レリスは俺たちの中でも一二を争う力の持ち主だ。
 レリスなくしてあいつらに勝つなんて、それこそ俺が全裸にでもならないと無理な話だ!

「ですがこのままでは……」

「それなら俺が残ろう、それなら文句あるまい?」

 突然風が巻き起こったと思ったら、俺たちの後ろにその声の主が立っていた。

「ルカーナおじさん!?」
「ルカーナ様!」

 現状最も頼りになる助っ人の登場に、俺は安堵のため息を漏らした。
 どうやらこの土壇場で間に合ったようだ。

「あまり時間がないんだろう?ならこの雑魚どもは俺に任せてお前らは早くあの教会跡地に行け」

 そう言ったルカーナさんが、こちらに迫ってくる教団の下っ端連中に向けて手を向け、体内の魔力を活性化させる。

「グラン・トルネード!!」

 その呪文と共に、ルカーナさんの目の前に大きな竜巻が発生し、教団の下っ端連中に向かってまっすぐに飛んでいく。

「うわっ!?なんだこの竜巻は!?」
「ふっ吹き飛ばされる!!」
「うわあああーー!!」

 その巨大な竜巻は非情にも背を向けて逃れようとした奴らをも飲み込み、次々と空高く舞い上げていく。
 すげー……人ってあんなに簡単に飛んでいくものなんだなぁー……。

「何をしてる?道なら作ってやったんだから早く行け」
「助かりました!このお礼は絶対にしますから!!行こうみんな!!」

 ルカーナさんへの感謝もそこそこに、俺たちは教会跡地に向けて全力疾走していく。
 この場はルカーナさんに任せておけば安心だな。これで後続の心配もなくなることだろう。

「どうしてルカーナおじさんが?」

 走りながら、テレアが俺の傍へと近寄ってきて聞いてきたので俺は答える。

「実はここに来るまでの間に、シエルに念話で簡単な状況を伝えて、ルカーナさんに教会跡地に向かってくれるように伝えてくれとお願いしておいたんだ」

 俺たちの家とルカーナさんの家がそんなに離れてなくて良かった。
 とはいえルカーナさんも留守にしてる可能性もあったので、あくまでも保険のつもりだったんだが、どうやらうまく俺の思い通りに事が進んだみたいだ。
 さすがにあの数と馬鹿正直に戦ってたら、かなり消耗してしまっていただろうしな。

「シュウは昔からそういう悪知恵が働くなぁ」
「策略と言ってくれ」

 ため息交じりのスチカのぼやきにツッコミを入れながら走っていると、ようやく目的地である教会跡地へとたどり着いた。
 国にとって歴史的建造物ではあるもののそれなりにガタが来ており、壁にはツタが伸び放題絡みつき放題になっており、周囲も伸び放題で際限なく成長した草で覆いつくされている。
 思った以上に管理されてないな、これでは廃墟といっても差支えがない。

「ようやくつきましたね……!」
「実に近かったな……」

 エナのその疲れたような言葉に、スチカが皮肉を利かせた返事を返した。

「朱雀……どうですか?」
『これだけ近づけば隠蔽魔法なんて何の意味をなさないわ!どうやら玄武もこの中にいるみたいだけど……これは少し急いだほうがいいわね』
「え?どうしてかな?」
『玄武の力がどんどん弱くなっていってるわ。中で何かされてるのは間違いないわね』

 文字通りの緊急事態みたいだな……それならこんな入り口でうだうだしてる場合じゃないな。

「どの道罠があるのを覚悟で来たんだ……皆準備はいいか?」

 俺の言葉にその場の全員が力強く頷いたのを確認し、俺は教会跡地の扉に手を掛けた。
 錆び付き軋んだ音を立てる扉を強引に開いていき、俺たちは建物の中へと足を踏み入れた。

「よお?ようやくお出ましかよ、待ちくたびれたぜ?」

 最初に俺たちに声を掛けてきたのは、復活したゴルマだった。
 先ほどレリスにやられた傷やダメージはすっかり快復しているようだ。
 その傍らにはコランズが立っており、その意識はテレアに向けられているようだ。

「フリルちゃん!」

 エナが床に倒れているフリルを見て、名前を呼びながら叫んだ。
 よく見ると倒れているフリルが淡く光っており、さらにその周辺には魔法陣が描かれていて、フリルの光がその魔法陣に吸い込まれている。
 朱雀がさっき玄武の力が弱くなっていると言ったが、これが原因みたいだな……どうやらあの魔法陣が玄武の力を吸い取っているみたいだ。

「お前ら、フリルに何してんだ!?」
「見てわからねーか?このガキが持ってる玄武の力をこの魔法陣で吸い取ってんだよ」
「んなのは見りゃわかるし、そういうこと言ってんじゃねーんだよ!」

 俺は腰の剣を引き抜き、ゴルマに対し怒鳴りつけたが、ゴルマの野郎はそんな俺をヘラヘラしながら見ている。

「俺はあまり気が進まないんだけどよ、うちのじいさんが神獣の力とやらに興味があるみたいでな?」
「うちのじいさん……?」

 そう言いながらゴルマが顎で促したので、そちらに顔を向けるとそこには魔法陣に手をかざしながら、なにやら呪文を唱え続けているローブを被ったじいさんがいた。
 こいつが転移魔法でフリルを連れ去り、レリスが倒したはずのゴルマを回復させた魔法使いか?

「そのじいさんはカルマ教団の三大幹部の一人でドレニクってんだ。よろしくしてやってくれよ?」
「ふざけんてじゃねーぞ!!」
「今すぐやめなさい!!」

 エナがドレニクへと手を向けて呪文を唱え始めると、フリルから流出する玄武の力が少しだけ抑えられたようで、魔法陣の光が少しずつ弱まっていく。

「邪魔をせんでもらいたいな?」

 ドレニクが顔を上げてエナを睨みつけると、突然エナの手に目に見えるほどの電流が走った。

「くっ!?」

 痛みに顔をゆがめながら、エナが手を抑えてうずくまった。

「エナ!?」
「エナお姉ちゃん大丈夫!?」

 うずくまったエナの元にテレアが走り寄ろうとした瞬間、それを遮るようにコランズがテレアの前に立ちふさがった。

「―――僕はさっき言いましたよ?あなたとは必ず決着を着けると?」
「どいて……!」

 テレアが身体強化を発動し、コランズを強引に通り抜けようとするも当然のごとくコランズに行く手を遮られた。

「―――ゴルマさん、ドレニクさん、僕はこの子と決着を着けたいと思っています」
「好きにしろ。ただしやるからにはきっちり決着つけろよ?」

 ゴルマの許しを受けたコランズが袖ですっぽりと覆われた手を広げたかと思うと、そこから無数の暗器が出現し、それをテレアに向けつつ口を開いた。

「―――今度は先ほどのようにはいかないと思いますよ?誰にも邪魔はさせませんから」
「フリルお姉ちゃんを助けるのを邪魔するなら……テレアだって負けないよ!」

 珍しい……あのテレアが怒りを隠さずに敵を睨みつけている。
 どうやらよほど怒っているようだな、こんなテレアは初めて見る。

「さて……俺はさっきのお礼をさせてもらうぜ?」
「あら?わたくしをご指名ですか?」
「今度はさっきみたいにはいかないぜ?俺の奥の手を見せてやるよ?」

 ゴルマが指の関節をぽきぽきと鳴らしながら、レリスに向かってゆっくりと歩いてくる。

「わたくしがまたあの男を引き受けますので、シューイチ様スチカさんたちと協力してフリルちゃんを助け出してください」
「大丈夫か?」
「今は無理をしてでも皆がそれぞれの役割をこなすときですわ」

 レリスが腰の剣を引き抜き、ゆっくりと迫ってくるゴルマを睨みつける。
 路地裏での戦いでレリスはかなり消耗しているものの、ゴルマの相手をまともに出来るのはレリスしかいない。
 不安はあるが、今はレリスに任せるしかない。

「それじゃあ始めようぜ!第二ラウンドだ!!」

 ゴルマのその叫びと共に、フリルを取り戻すためのそれぞれの戦いが始まったのだった。
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