86 / 169
反省~言葉という凶器~
しおりを挟む
噴水広場を抜け出した俺たちは、フリルの姿を求め周囲を見渡すがもうすでにこの場から遠くに離れてしまったらしく、当然のごとく見つけることは叶わなかった。
「テレア、フリルがどこに行ったかわかるかな?」
「えっとね……商店街の方に向かってるよ」
そう言ってテレアが商店街の方角を指さす。
テレアは自身の魔力で視覚や聴覚や感覚などを強化する術を持っている。完全な位置の特定まではできないまでも、大体の位置がわかるとのことで連れてきて正解だった。
恐らくこういう事態を想定してレリスはテレアをお供に連れて行かせたのだろうな。さすがと言わざるを得ない。
早速商店街に向けて走り出そうとしたところで、ティアが俺の手を振りほどいた。
「なぜわらわがフリルを探しに行かねばならんのじゃ!!」
激高するティアに視線を向ける。
ここまで走ったきたからか、それとも怒りでかはわからないが顔は真っ赤になっていて肩で息をしている。
そうだよなぁ、まずはこの子を説得なり、自分が何をしてしまったのかを分からせてあげないといけないよな。
「テレア、ちょっとの間フリルの動きに注意しといてくれ」
「うん……!」
テレアにそう言ってから、俺はティアの目の前に歩いて行きしゃがみ込んで視線の高さを合わせる。
そしてまっすぐにティアの目を見ながら、俺は口を開いた。
「なぜかって?そりゃあティアがフリルのことを傷つけたからだよ?だからティアはフリルにそのことを謝らないといけないんだ」
「わらわがフリルを傷つけた……?」
「人は必ずしも言われたくない言葉ってのがあるんだよ、ティアはその言葉をフリルに言ってしまったんだ」
「そんな言葉は言っておらん!わらわはフリルが卑怯なことをしたからそれを指摘しただけじゃ!仮にその言葉で逃げ出したとしたら、フリルにやましいことがあるからなのじゃ!わらわは悪くないのじゃ!!」
一瞬手が出そうになるものの、それはもうスチカがやっている。
だからこそ俺はそうならないように、その衝動を自制し言葉を選びながらティアに言い聞かせていく。
「ティアはスチカの出生とか魔力がない代わりに絶対記憶力という能力があることを知ってるか?」
「勿論知っておる!わらわとスチカは親友じゃ!お互いに隠し事はしないと誓いを立てたのじゃ!」
一体何があってこの子とスチカの関係が出来上がったのか非常に興味があるものの、今はそれを気にしている場合じゃないな。
「じゃあスチカがどういう風に機械を作ってるか知ってるよな?あの子は自分のその才能と、努力して自身の手先の器用さを高めて、その全てを機械作りに生かしてるんだ」
「そうなのじゃ!スチカは凄いのじゃ!わらわはそんなスチカを尊敬しておる!フリルとは大違いじゃ!」
「ほんとうに違うと思うか?」
「……どういう意味じゃ?」
これでわかってくれるなら楽だったんだけどやっぱり無理か。
もうちょっとわかりやすく直接的に言わないとダメか……。
「じゃあもしも俺がスチカに「お前の作る機械は神様にもらったインチキ能力のおかげだから卑怯だ!」って言ったらどうする?」
「そんなもの絶対に許さないのじゃ!!スチカの能力がインチキなんてそんなことは絶対にないのじゃ!」
「それを踏まえて考えてほしいんだけど、フリルの歌に魔力が込められていたこともインチキで卑怯なことなのかな?」
「卑怯に決まっておろう!だって……あれ……?」
良かった、これで気が付かないようだったら今すぐ引き返してティアをスチカに押し付けなきゃならないところだった。
多分だけどこの子は自分の言葉で誰かが傷つくなんて思ったことがないんだろうな。
この子の普段の振る舞いや言動がこのままなら、それで怒りを覚えたり傷つけられた人なんてそれこそ数えられないくらいいただろうけど、恐らくそういう部分を見せられないように育てられたのだと思う。
だからこそ言葉が持つ精神的な凶器としての側面を知らないんだろう。
「フリルの歌にはたしかに魔力が込められている。そこは否定しない。でもあの子はその魔力を悪いこと……ましてや洗脳なんかに使ったことなんて一度もないよ?」
「でも……でも……」
「フリルの歌に込められた魔力は、自身の歌を聴いてくれた人の心に少しでも響くように、ちょっと手助けするくらいの小さな魔力なんだ……あの子が歌で誰かを洗脳するような子じゃないことは俺が保証する」
ティアが俯いて黙ってしまった。
だがちゃんと聞いてくれていると信じて、俺は言葉を続けていく。
「そこはスチカと変わらないと思うんだよ。スチカと同じようにフリルだって自分のその才能を大好きな歌の為に使ってるんだ」
「そ……それは……」
「それにな?フリルは一度その能力のせいで自分や周りを傷つける原因を作ったことがあるんだ」
「そうなのか……?」
あの時のフリルの表情は今でも忘れならない。
あれからそれなりに時間が過ぎたから吹っ切れたのかと思っていたけど、やはりそんなことはなかったんだ。
ティアばかりのせいにはできない、これはそのことに気がつけなかった俺にも責任はある。
「フリルは本当は物凄く優しい子なんだよ?ティアにはそう映らなかったかもしれないけど、あの子はあの子なりにティアのことを気にかけてくれていたよ?」
俺たちの拠点に泊めることに対しても反対はしなかったし、ティアが外に出たいと行った時も変装させればいいとみんなに助言したりね。
「それにこれは俺の予想なんだけど……ティアは昔スチカと一緒にルーデンス旅芸人一座の公演を見たことあるんじゃないかな?」
「そうじゃが……なぜわかったのじゃ?」
やっぱりそうだったか……スチカがあの一座の公演を見たことあるって聞いた時にそうなんじゃないかと思ったんだ。
ティアのこのスチカへのべったりぶりを見れば、一緒に見に行ったと考えるのは容易だった。
「その一座の公演の最後に、新緑の歌姫と呼ばれる女の子が歌を歌わなかった?」
「歌っていたのじゃ!丁度さっきのフリルのように歌に魔力を込めていたので、座長の元に直接文句を言いに行ったのじゃ!」
やっぱりそうなのか……なぜフリルがティアに対して辛辣な態度を取っていたのかその理由がようやくはっきりした。
恐らくティアからのクレームを、ルーデンスさんかラフタさんから直接聞いてしまったんだろう。
「それがフリルなんだよ」
「なっ……!?」
俺のその言葉に、ティアが絶句して固まる。
フリルって実は良くも悪くも自分にされたことを忘れない一面がある。
しかも頑固な性分も合わさって、いつまでもそれを忘れないのだ。
今回はそれが良くない方面に転がった最たる例だな。
「ちょっと酷な言い方をするけど、フリルのティアへの態度はティアの自業自得なんだよ?」
「だってその時はフリルのことを知らなくて……」
「そりゃあ知ってたら言わなかっただろうね?だからって知らないからって言っていいってもんじゃないんだよ?ティアだって言われたくない言葉の一つや二つはあるだろ?」
多分この子のことだからフリルのことを覚えていても言ったかもしれないが、今そこはスルーしよう。話がややこしくなるからね。
「そろそろなんでスチカが怒ってティアのことビンタしたかわかってきたかな?」
「……」
すっかり意気消沈した様子で、ティアが小さく頷いた。
多分俺が思ってるよりもティアは賢い子だろうから、落ち着いて順を追って説明すればわかってもらえるとは思っていた。
フリルの過去のことについてわからないのは仕方のないことだが、ある種自分の拠り所かもしれない歌を卑怯呼ばわりされたフリルの心境を考えると心が痛む。
ティアもそのことをちゃんとわかってくれるといいんだけどね。
「わらわは、どうすればいいのじゃ……?」
「簡単なことだよ、フリルに謝ればいいんだ。「ごめんなさい」ってね」
「謝る……わらわは生まれてこの方誰かに謝ったことなんてない……」
まあそうだろうね。
もしそうなら今頃こんな面倒な事態になってないだろうし。
「ティアはフリルの歌どうだった?」
「……凄かったのじゃ……わらわの歌にないものをたくさん持っておった……」
「じゃあ謝りついでに、それもフリルに伝えてあげればいいよ」
そう言って俺はようやく立ち上がり、不安げに俺を見上げるティアに向けて俺は手を差し出した。
「そんじゃフリルを探しに行くか!一緒にさ?」
「……うむ……」
表情は暗いままだが、ティア大きく頷いて俺の手を取ってくれた。
そのまま少し離れて俺たちを心配そうに見ていたテレアの元に駆け寄った。
「待たせてごめんなテレア?」
「ううん、大丈夫だよ?……えっとティアちゃんは大丈夫かな?」
「……迷惑を掛けて……ごめんなさい……なのじゃ」
心配そうに顔を覗き込んできたテレアに対し、ティアが申し訳なさそうにたどたどしい言葉で謝った。
「うん、テレアは大丈夫だから、その言葉はフリルお姉ちゃんに言ってあげてほしいな?」
「わかっておる……のじゃ」
気のせいかテレアが物凄くお姉さんに見える。
俺たちの中で一番年下だから気が付かなったのかもしれないが、もしかしたらテレアって結構なお姉さん気質なのかもしれない。
「そんじゃ遅くなったけどフリルを探しにいくか!テレア、フリルの動向はちゃんと抑えてくれてるか?」
「うん!今は商店街のあたりで動きが止まってるみたい」
なら急げば追いつけるかもしれないな。
俺たちは互いに頷きあい、商店街に向けて走り出した。
五分ほど走り続けて、俺たちは商店街へと到着した。
相変わらず人で賑わっているなここは……この人ごみの中からフリルを探し出すのは骨だなぁ。
だがこちらにはテレアがいる!
「テレア、フリルはどっちにいる?」
「えっと……これだけ人が多いとわからないかも……ごめんねお兄ちゃん」
おーのー!
いくらテレアと言えどずっと感覚強化を使っていると疲弊してしまうので、一旦感覚強化を切って休憩を挟んだのだが……。
いざ商店街に来て再び感覚強化を使ったところ、人の多さに紛れてしまってフリルの補足が出来なくなってしまったらしい。
「しゃあない……ここからは自力で探すか!」
「どうしよう?手分けしたほうがいいかな?」
テレアのその提案に少し考えこむ。
さすがにティアを一人にするわけにはいかないから俺かテレアのどちらかが連れていくしかないんだよな……。
とはいえいくらテレアが強いと言っても一人にしてしまうのはさすがに心配だし……。
「フリルを探すのじゃな?ならわらわに任せるのじゃ」
悩んでいた俺とテレアに向けて、ティアがなんか自信満々な様子でそう言ってきた。
「スチカには人前で使うなと言われておるが、今は緊急事態じゃ、やむを得まい」
「なんか手があるのか?」
「人に見られるのはまずいのじゃ……できればどこか物陰に」
この面子で物陰に行くとか俺の社会的体裁に関わるんだけど、まあここは緊急事態ということで……。
そんな風に自分に言い訳をしつつ、丁度いい建物の隙間があったのでそこへ三人で入り込む。
「今からすることは他言無用じゃ!もしスチカに知られたらわらわは怒られてしまう」
そう言って俺とテレアに対して念入りに釘を刺してきた。
一体何が始まるんだ?
「わらわ……クルスティア=アーデンハイツが願う……わらわの魔力を糧として今ここに顕現せよ……」
その詠唱とも呼べる言葉と共に、ティアの魔力が活性化し一気に膨れ上がっていく。
そしてティアの身体が淡い光に包まれたかと思うと、その光がティアから離れて一か所に集まっていく。
なんだろう……こんな光景を割と頻繁に見てる気がするぞ?
「青龍よ!顕現するのじゃ!」
その言葉と共に、光の中から青色の小さな龍が姿を現した。
「テレア、フリルがどこに行ったかわかるかな?」
「えっとね……商店街の方に向かってるよ」
そう言ってテレアが商店街の方角を指さす。
テレアは自身の魔力で視覚や聴覚や感覚などを強化する術を持っている。完全な位置の特定まではできないまでも、大体の位置がわかるとのことで連れてきて正解だった。
恐らくこういう事態を想定してレリスはテレアをお供に連れて行かせたのだろうな。さすがと言わざるを得ない。
早速商店街に向けて走り出そうとしたところで、ティアが俺の手を振りほどいた。
「なぜわらわがフリルを探しに行かねばならんのじゃ!!」
激高するティアに視線を向ける。
ここまで走ったきたからか、それとも怒りでかはわからないが顔は真っ赤になっていて肩で息をしている。
そうだよなぁ、まずはこの子を説得なり、自分が何をしてしまったのかを分からせてあげないといけないよな。
「テレア、ちょっとの間フリルの動きに注意しといてくれ」
「うん……!」
テレアにそう言ってから、俺はティアの目の前に歩いて行きしゃがみ込んで視線の高さを合わせる。
そしてまっすぐにティアの目を見ながら、俺は口を開いた。
「なぜかって?そりゃあティアがフリルのことを傷つけたからだよ?だからティアはフリルにそのことを謝らないといけないんだ」
「わらわがフリルを傷つけた……?」
「人は必ずしも言われたくない言葉ってのがあるんだよ、ティアはその言葉をフリルに言ってしまったんだ」
「そんな言葉は言っておらん!わらわはフリルが卑怯なことをしたからそれを指摘しただけじゃ!仮にその言葉で逃げ出したとしたら、フリルにやましいことがあるからなのじゃ!わらわは悪くないのじゃ!!」
一瞬手が出そうになるものの、それはもうスチカがやっている。
だからこそ俺はそうならないように、その衝動を自制し言葉を選びながらティアに言い聞かせていく。
「ティアはスチカの出生とか魔力がない代わりに絶対記憶力という能力があることを知ってるか?」
「勿論知っておる!わらわとスチカは親友じゃ!お互いに隠し事はしないと誓いを立てたのじゃ!」
一体何があってこの子とスチカの関係が出来上がったのか非常に興味があるものの、今はそれを気にしている場合じゃないな。
「じゃあスチカがどういう風に機械を作ってるか知ってるよな?あの子は自分のその才能と、努力して自身の手先の器用さを高めて、その全てを機械作りに生かしてるんだ」
「そうなのじゃ!スチカは凄いのじゃ!わらわはそんなスチカを尊敬しておる!フリルとは大違いじゃ!」
「ほんとうに違うと思うか?」
「……どういう意味じゃ?」
これでわかってくれるなら楽だったんだけどやっぱり無理か。
もうちょっとわかりやすく直接的に言わないとダメか……。
「じゃあもしも俺がスチカに「お前の作る機械は神様にもらったインチキ能力のおかげだから卑怯だ!」って言ったらどうする?」
「そんなもの絶対に許さないのじゃ!!スチカの能力がインチキなんてそんなことは絶対にないのじゃ!」
「それを踏まえて考えてほしいんだけど、フリルの歌に魔力が込められていたこともインチキで卑怯なことなのかな?」
「卑怯に決まっておろう!だって……あれ……?」
良かった、これで気が付かないようだったら今すぐ引き返してティアをスチカに押し付けなきゃならないところだった。
多分だけどこの子は自分の言葉で誰かが傷つくなんて思ったことがないんだろうな。
この子の普段の振る舞いや言動がこのままなら、それで怒りを覚えたり傷つけられた人なんてそれこそ数えられないくらいいただろうけど、恐らくそういう部分を見せられないように育てられたのだと思う。
だからこそ言葉が持つ精神的な凶器としての側面を知らないんだろう。
「フリルの歌にはたしかに魔力が込められている。そこは否定しない。でもあの子はその魔力を悪いこと……ましてや洗脳なんかに使ったことなんて一度もないよ?」
「でも……でも……」
「フリルの歌に込められた魔力は、自身の歌を聴いてくれた人の心に少しでも響くように、ちょっと手助けするくらいの小さな魔力なんだ……あの子が歌で誰かを洗脳するような子じゃないことは俺が保証する」
ティアが俯いて黙ってしまった。
だがちゃんと聞いてくれていると信じて、俺は言葉を続けていく。
「そこはスチカと変わらないと思うんだよ。スチカと同じようにフリルだって自分のその才能を大好きな歌の為に使ってるんだ」
「そ……それは……」
「それにな?フリルは一度その能力のせいで自分や周りを傷つける原因を作ったことがあるんだ」
「そうなのか……?」
あの時のフリルの表情は今でも忘れならない。
あれからそれなりに時間が過ぎたから吹っ切れたのかと思っていたけど、やはりそんなことはなかったんだ。
ティアばかりのせいにはできない、これはそのことに気がつけなかった俺にも責任はある。
「フリルは本当は物凄く優しい子なんだよ?ティアにはそう映らなかったかもしれないけど、あの子はあの子なりにティアのことを気にかけてくれていたよ?」
俺たちの拠点に泊めることに対しても反対はしなかったし、ティアが外に出たいと行った時も変装させればいいとみんなに助言したりね。
「それにこれは俺の予想なんだけど……ティアは昔スチカと一緒にルーデンス旅芸人一座の公演を見たことあるんじゃないかな?」
「そうじゃが……なぜわかったのじゃ?」
やっぱりそうだったか……スチカがあの一座の公演を見たことあるって聞いた時にそうなんじゃないかと思ったんだ。
ティアのこのスチカへのべったりぶりを見れば、一緒に見に行ったと考えるのは容易だった。
「その一座の公演の最後に、新緑の歌姫と呼ばれる女の子が歌を歌わなかった?」
「歌っていたのじゃ!丁度さっきのフリルのように歌に魔力を込めていたので、座長の元に直接文句を言いに行ったのじゃ!」
やっぱりそうなのか……なぜフリルがティアに対して辛辣な態度を取っていたのかその理由がようやくはっきりした。
恐らくティアからのクレームを、ルーデンスさんかラフタさんから直接聞いてしまったんだろう。
「それがフリルなんだよ」
「なっ……!?」
俺のその言葉に、ティアが絶句して固まる。
フリルって実は良くも悪くも自分にされたことを忘れない一面がある。
しかも頑固な性分も合わさって、いつまでもそれを忘れないのだ。
今回はそれが良くない方面に転がった最たる例だな。
「ちょっと酷な言い方をするけど、フリルのティアへの態度はティアの自業自得なんだよ?」
「だってその時はフリルのことを知らなくて……」
「そりゃあ知ってたら言わなかっただろうね?だからって知らないからって言っていいってもんじゃないんだよ?ティアだって言われたくない言葉の一つや二つはあるだろ?」
多分この子のことだからフリルのことを覚えていても言ったかもしれないが、今そこはスルーしよう。話がややこしくなるからね。
「そろそろなんでスチカが怒ってティアのことビンタしたかわかってきたかな?」
「……」
すっかり意気消沈した様子で、ティアが小さく頷いた。
多分俺が思ってるよりもティアは賢い子だろうから、落ち着いて順を追って説明すればわかってもらえるとは思っていた。
フリルの過去のことについてわからないのは仕方のないことだが、ある種自分の拠り所かもしれない歌を卑怯呼ばわりされたフリルの心境を考えると心が痛む。
ティアもそのことをちゃんとわかってくれるといいんだけどね。
「わらわは、どうすればいいのじゃ……?」
「簡単なことだよ、フリルに謝ればいいんだ。「ごめんなさい」ってね」
「謝る……わらわは生まれてこの方誰かに謝ったことなんてない……」
まあそうだろうね。
もしそうなら今頃こんな面倒な事態になってないだろうし。
「ティアはフリルの歌どうだった?」
「……凄かったのじゃ……わらわの歌にないものをたくさん持っておった……」
「じゃあ謝りついでに、それもフリルに伝えてあげればいいよ」
そう言って俺はようやく立ち上がり、不安げに俺を見上げるティアに向けて俺は手を差し出した。
「そんじゃフリルを探しに行くか!一緒にさ?」
「……うむ……」
表情は暗いままだが、ティア大きく頷いて俺の手を取ってくれた。
そのまま少し離れて俺たちを心配そうに見ていたテレアの元に駆け寄った。
「待たせてごめんなテレア?」
「ううん、大丈夫だよ?……えっとティアちゃんは大丈夫かな?」
「……迷惑を掛けて……ごめんなさい……なのじゃ」
心配そうに顔を覗き込んできたテレアに対し、ティアが申し訳なさそうにたどたどしい言葉で謝った。
「うん、テレアは大丈夫だから、その言葉はフリルお姉ちゃんに言ってあげてほしいな?」
「わかっておる……のじゃ」
気のせいかテレアが物凄くお姉さんに見える。
俺たちの中で一番年下だから気が付かなったのかもしれないが、もしかしたらテレアって結構なお姉さん気質なのかもしれない。
「そんじゃ遅くなったけどフリルを探しにいくか!テレア、フリルの動向はちゃんと抑えてくれてるか?」
「うん!今は商店街のあたりで動きが止まってるみたい」
なら急げば追いつけるかもしれないな。
俺たちは互いに頷きあい、商店街に向けて走り出した。
五分ほど走り続けて、俺たちは商店街へと到着した。
相変わらず人で賑わっているなここは……この人ごみの中からフリルを探し出すのは骨だなぁ。
だがこちらにはテレアがいる!
「テレア、フリルはどっちにいる?」
「えっと……これだけ人が多いとわからないかも……ごめんねお兄ちゃん」
おーのー!
いくらテレアと言えどずっと感覚強化を使っていると疲弊してしまうので、一旦感覚強化を切って休憩を挟んだのだが……。
いざ商店街に来て再び感覚強化を使ったところ、人の多さに紛れてしまってフリルの補足が出来なくなってしまったらしい。
「しゃあない……ここからは自力で探すか!」
「どうしよう?手分けしたほうがいいかな?」
テレアのその提案に少し考えこむ。
さすがにティアを一人にするわけにはいかないから俺かテレアのどちらかが連れていくしかないんだよな……。
とはいえいくらテレアが強いと言っても一人にしてしまうのはさすがに心配だし……。
「フリルを探すのじゃな?ならわらわに任せるのじゃ」
悩んでいた俺とテレアに向けて、ティアがなんか自信満々な様子でそう言ってきた。
「スチカには人前で使うなと言われておるが、今は緊急事態じゃ、やむを得まい」
「なんか手があるのか?」
「人に見られるのはまずいのじゃ……できればどこか物陰に」
この面子で物陰に行くとか俺の社会的体裁に関わるんだけど、まあここは緊急事態ということで……。
そんな風に自分に言い訳をしつつ、丁度いい建物の隙間があったのでそこへ三人で入り込む。
「今からすることは他言無用じゃ!もしスチカに知られたらわらわは怒られてしまう」
そう言って俺とテレアに対して念入りに釘を刺してきた。
一体何が始まるんだ?
「わらわ……クルスティア=アーデンハイツが願う……わらわの魔力を糧として今ここに顕現せよ……」
その詠唱とも呼べる言葉と共に、ティアの魔力が活性化し一気に膨れ上がっていく。
そしてティアの身体が淡い光に包まれたかと思うと、その光がティアから離れて一か所に集まっていく。
なんだろう……こんな光景を割と頻繁に見てる気がするぞ?
「青龍よ!顕現するのじゃ!」
その言葉と共に、光の中から青色の小さな龍が姿を現した。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる