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葛藤~思い出せない幼馴染~
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レリスの突然の告白に、俺の頭は真っ白になってしまった。
大体俺は日本にいた時はモテなかったし、女の子と付き合うどころが告白すらされたことがないのだ。
そんな非モテ街道まっしぐらだった俺に、今のこの状況は荷が重すぎる。
「えっと……本当に本気なの?」
「わたくしは冗談で男性に告白するような女ではありませんわ」
どうやら本気らしい。
えー……俺なんかのどこに惚れたんだよー!?
言わなきゃならない言葉があるはずなのに、喉がからからに乾いて脳みそが全く仕事をしてくれない。
嬉しいんだよ?俺みたいなのを好きなんて言ってくれる女の子なんて、この先もういないかもしれないんだし?
でも嬉しいという気持ちよりも、困惑の方がでかいのがなんとも……。
「……シューイチ様はわたくしではダメなのでしょうか?」
俺が黙ってしまったので、不安な表情でレリスが聞いてくる。
「ダメじゃない!ダメじゃないけど……その……よくわからなくて……」
ここまで真正面からはっきりと告白されておいて、わからないとは何事かと我ながら思う。
しかしながらこの世界に来てから、その日その日を生きるのに精一杯でそういうことを全く考えてる暇がなかったのもまた事実。
我ながらどんだけ余裕がなかったんだよ……。
「嬉しいことは嬉しいんだけど、全然そんなことを考えてなかったから……」
「……申し訳ありません……困らせたいわけではなかったのですが……わたくしも男性を好きになったのが初めてだったので、居ても立っても居られなくて……」
よく見るとレリスの足は小刻みに震えていて、なんでもないような感じの告白だったが相当勇気を振り絞っていたのが今になってわかった。
そうだよな……他人に自分の思いの丈を打ち明けるのって怖いよな。
でもレリスはその恐怖を抑え込んで、俺に気持ちを打ち明けてくれたんだもんな。
「えっと……今すぐに返事はできないけど、近いうちに必ず返事はする!そこは絶対約束するよ!だから少しだけ時間をくれないかな?」
「はい……わたくしも少々急ぎすぎてしまいましたので……わかりましたわ」
ぶっちゃけこれは問題の先送りだ。
だからこそ……先送りにしてしまったからこそ、きちんと考えて答えを出さないといけない。
この後、エナたちと家具を見に行くと言ったレリスと別れて俺は自分の部屋に戻ったが、どうしても落ち着くことが出来ずに、結局自室から出て拠点内をフラフラと歩いていた。
なんかフワフワとした感覚を味わいながら俺は拠点の庭へと歩いて行き、芝生の上に腰かけてぼーっと空を眺める。
わーあの雲はどこに流れていくんだろうかー?
あの鳥はどこに飛んでいくのかなー?
……なんてアホなことを考えている場合ではない。レリスのことどうするんだ俺?
日本にいた頃は「可愛い女の子が告白してきてくれねーかな」とか友達と冗談交じりに言ってたりしたが、いざ告白されてしまうとここまで思考力が低下するものなんだな……。
別にレリスに不満があるわけでない。
例えばこれがエナだったとしても、俺は今のような腑抜けになってしまっていただろう。
しかし……あのレリスが俺のことを好きなのか……。
美人だし可愛いし立ち振る舞いも上品で財閥のお嬢様だし、料理も出来るし戦闘では先陣を切って戦える強さもある。
そしてなにより、あの豊満な二つの膨らみ!
なんだ!最高じゃないか!!ならもうレリスの告白を受け入れてしまえばいいじゃないか!!
「……ってそんな簡単な問題じゃないんだよなぁ……」
せめて俺の中にレリスに対する明確な好意があれば、一も二もなく受け入れらるんだけど。
レリスのことは勿論好きだし、嫌いになれる要素なんてない。
ダンジョンでの三日間でかなり距離が近づいた実感はあったし、その辺の見知らぬ女の人なんかと比べるのも失礼なくらい好感を抱いてはいる。
でもそれとレリスの俺に対する想いは似て非なる物である。
俺がこんなあやふやな気持ちなのにレリスの想いを受け入れられる資格なんかあるんだろうか?
「こんなところで何をやってるんですか宗一さん?」
思わず頭を抱えて唸っていた俺の前に、いつの間にかメイド服を身に纏ったシエルが立っていた。
シエルのメイド服もすっかり見慣れた光景になってきたな……って今はそんなことどうでもいいんだよ。
「ごめん、今はちょっとシエルの相手していられる余裕がない……」
「あらまあ、珍しいですね?何かあったんですか?」
一人にしてほしかったのに、こともあろうかシエルが俺の隣に腰かけてきた。
いつもなら鬱陶しく思うところだが、今日に限ってはそんな気分にはならなかった。
今この時に限って言えば、シエルのこの能天気さが少しありがたい。
「悩んでることがあるなら、私に話してすっきりしましょうよ~ねえ?」
「シエルに話してもなぁ……」
「宗一さんが何に悩んでるのか当ててあげましょうか?ずばり女性関係ですよね?」
「なっ!?おま……」
そこまで言いかけて、俺は咄嗟に口を塞ぐ。
どうやら手遅れだったらしく、シエルのそんな俺の様子をニヤニヤしながら見ていた。
「カマかけてくるなよ……性格悪いぞ……」
「いつも私のことをいじめてくる人にそんなこと言われても、痛くもかゆくもありませんからー」
これもう話さないといけない流れじゃんか……我ながら迂闊だった。
「まあ、なんていうか……いつかこういう日が来る気がしてましたけどねぇ」
「マジかよ、スゲーなシエル」
「でも一番手がまさか今日仲間になったばかりのレリスさんだとは思いませんでしたよ」
なにその一番手って?二番手三番手と控えてるみたいな言い方やめろよ。
……控えてないよね?
「宗一さんは日本にいるころからそこそこモテてるみたいでしたから」
「んなわけねーだろ……こっちとら彼女いない歴年齢だっつーの……」
そんな俺の言葉を聞いたシエルが深いため息を吐いた。
なんだよそのリアクション……何度でも言ってやるが俺は本当にモテなかったんだぞ!?
「私は確かに誤って宗一さんを死なせてしまいましたが、人違いだったとはいえこれでも宗一さんの身辺調査はしておいたんですよ?」
「なんだそれ探偵かよ」
「私の調べでは、宗一さんが高校生のときに好意を寄せていた女の子が5人いたことを抑えてました」
シエルのその言葉に、俺はうつむいていた顔を勢いよく上げてシエルの顔をガン見してしてしまった。
「まあ、あの状況でそれに気が付くのはちょっと至難の業でしたでしょうね……」
「どういうことだよ?」
「宗一さんって高校に上がってから学校が別になってしまった、近所に住んでる幼馴染の女の子の友達がいましたよね?」
「いたけど……それがどうしたんだ?」
「高校で宗一さんに好意を持っていた女の子たちは、影でその幼馴染の女の子に牽制されてましたよ?」
まさか生きてきて、開いた口が塞がらないという状況に遭遇するとは思わなかった。
ええー……あいつそんなことしてたの!?
普段はそっけないというか、逆に俺のこと嫌いだったんじゃないかって雰囲気だったのに……。
「愛情の裏返しって奴でしょうね。きっと折を見て宗一さんに告白するつもりだったんじゃないでしょうか?……あの様子じゃ多分一生かかっても無理だったでしょうが」
「そんな空気に全くならなかったし、俺も幼馴染として友好的に接してはいたけど、異性としての好意を持ってたわけじゃなかったからなぁ」
ゲームとかだとツンデレって魅力的なキャラに見えるんだけど、現実のツンデレって色々と損な性格だよな。
だって接していても嫌われてるとしか思えないんだもん。
「確か宗一さんには、もう一人幼馴染っぽい女の子がいたはずですけど……あれ?」
「どうした?」
「おかしいですね……ちゃんとその辺も調べたはずなのに……記憶から抜け落ちてる……?」
なにやらシエルが頭を抱えだした。
もう一人の幼馴染……言われてみるといたような気もする。
でもたしかその子は身近にはおらず、いつも長期の休みにじいちゃんちの田舎に行ったときに……あれ?
そんな子いたかな?じいちゃんの田舎に俺と同年代っぽい子はいなかったはずだけど……?
なんだか記憶が抜け落ちているというか、黒い靄がかかって見えないようにされているような……自分自身の記憶のことなのに酷く不気味に思えてくる。
「……まあとにかく!問題はレリスさんのことをどうするかですよ!」
俺と同じように頭を抱えていたシエルが突然顔を上げて俺に言ってきた。
まあ今は思い出せない幼馴染のことはどうでもいいんだよ。
「どうしたらいいと思う?」
「それを決めるのは宗一さんですよ?」
「わかってるんだけどさ……」
「なにも結婚してくれとまで言われたわけではないんですから、もう少し気楽に考えてみては?」
レリスのあの様子じゃ、結婚まで視野に入れてる気がするのは、俺の思い違いかな?
「気楽に考えたら、レリスに失礼だろうが?」
「そうですか?出した結論が最低な物だったら、たとえどんなに重く受け止め悩みぬいた結論だったとしても、私的にはそっちの方が失礼だと思いますけどね」
シエルのくせに中々的を得た返答を返してくるな。
「日本人ってわりと過程を重視して結果を評価しない一面がありますけど、私から言えば結果が全てだと思いますよ?過程なんて二の次ですよ!それでも過程を重視したいというなら、すでに宗一さんはこうしてレリスさんの想いに対して真剣に悩んで答えてあげたいって思ってるんですから、もうそれで十分だと思いますけどね」
「そういうもんかな……?」
「そんなもんですよ?ああでも、このままずっと引き伸ばし続けて答えを出さないままズルズルと行くのだけはダメですよ?傷つけたくないからって心地よい関係に身を委ね続けるのは自分にとっては楽かもしれませんが、相手にとってはこれ以上にないくらい残酷な仕打ちですからね?」
シエルの言葉の一つ一つが俺の心に大きな重荷となってのしかかってくる。
逃げようなんて思っちゃいなかったが、逃げ道を塞がれているような感覚だ。
「でも宗一さんですからね……間違ってもレリスさんを不幸にするような選択だけはしないと思いますけど」
「偉く信頼してくれてるんだな」
「そりゃあそうですよ?そもそも宗一さんが最低な人間だったら、あの時生き返らせることも転生させることもしませんでしたからね」
「まともな性格に育ててくれた俺の両親に感謝だな」
そう言って軽くため息を吐いた俺を、シエルが薄く微笑みながら見てくる。
「大分気分が晴れたみたいですね?さっきまで死にそうな顔してましたら、結構心配してたんですよ?」
「そんなにやばかった?」
「はい、そりゃあもう……じゃあ最後に一つだけ……例え宗一さんがレリスさんを振ったとしても、その瞬間にレリスさんが不幸になるわけじゃないんですから、そこだけははき違えないでくださいね?」
そう言い残して、シエルはエプロンドレスを優雅に翻し家の中へと戻っていった。
シエルの癖に、随分と助けられてしまったな。
……いやここまで来るまで、俺はなんだかんだシエルに助けれられているんだよな……。
今度何かお礼をしてあげよう。
「さてと……どうしたもんかな?」
改めて空を見上げる。
シエルに話を聞いてもらったことで随分と心は軽くなっていたが、問題が解決したわけではないのだ。
でもさっきまでの俺よりは、もっとちゃんとしたレリスに対する答えを出せるんじゃないか……ってそんな予感だけはしていた。
大体俺は日本にいた時はモテなかったし、女の子と付き合うどころが告白すらされたことがないのだ。
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どうやら本気らしい。
えー……俺なんかのどこに惚れたんだよー!?
言わなきゃならない言葉があるはずなのに、喉がからからに乾いて脳みそが全く仕事をしてくれない。
嬉しいんだよ?俺みたいなのを好きなんて言ってくれる女の子なんて、この先もういないかもしれないんだし?
でも嬉しいという気持ちよりも、困惑の方がでかいのがなんとも……。
「……シューイチ様はわたくしではダメなのでしょうか?」
俺が黙ってしまったので、不安な表情でレリスが聞いてくる。
「ダメじゃない!ダメじゃないけど……その……よくわからなくて……」
ここまで真正面からはっきりと告白されておいて、わからないとは何事かと我ながら思う。
しかしながらこの世界に来てから、その日その日を生きるのに精一杯でそういうことを全く考えてる暇がなかったのもまた事実。
我ながらどんだけ余裕がなかったんだよ……。
「嬉しいことは嬉しいんだけど、全然そんなことを考えてなかったから……」
「……申し訳ありません……困らせたいわけではなかったのですが……わたくしも男性を好きになったのが初めてだったので、居ても立っても居られなくて……」
よく見るとレリスの足は小刻みに震えていて、なんでもないような感じの告白だったが相当勇気を振り絞っていたのが今になってわかった。
そうだよな……他人に自分の思いの丈を打ち明けるのって怖いよな。
でもレリスはその恐怖を抑え込んで、俺に気持ちを打ち明けてくれたんだもんな。
「えっと……今すぐに返事はできないけど、近いうちに必ず返事はする!そこは絶対約束するよ!だから少しだけ時間をくれないかな?」
「はい……わたくしも少々急ぎすぎてしまいましたので……わかりましたわ」
ぶっちゃけこれは問題の先送りだ。
だからこそ……先送りにしてしまったからこそ、きちんと考えて答えを出さないといけない。
この後、エナたちと家具を見に行くと言ったレリスと別れて俺は自分の部屋に戻ったが、どうしても落ち着くことが出来ずに、結局自室から出て拠点内をフラフラと歩いていた。
なんかフワフワとした感覚を味わいながら俺は拠点の庭へと歩いて行き、芝生の上に腰かけてぼーっと空を眺める。
わーあの雲はどこに流れていくんだろうかー?
あの鳥はどこに飛んでいくのかなー?
……なんてアホなことを考えている場合ではない。レリスのことどうするんだ俺?
日本にいた頃は「可愛い女の子が告白してきてくれねーかな」とか友達と冗談交じりに言ってたりしたが、いざ告白されてしまうとここまで思考力が低下するものなんだな……。
別にレリスに不満があるわけでない。
例えばこれがエナだったとしても、俺は今のような腑抜けになってしまっていただろう。
しかし……あのレリスが俺のことを好きなのか……。
美人だし可愛いし立ち振る舞いも上品で財閥のお嬢様だし、料理も出来るし戦闘では先陣を切って戦える強さもある。
そしてなにより、あの豊満な二つの膨らみ!
なんだ!最高じゃないか!!ならもうレリスの告白を受け入れてしまえばいいじゃないか!!
「……ってそんな簡単な問題じゃないんだよなぁ……」
せめて俺の中にレリスに対する明確な好意があれば、一も二もなく受け入れらるんだけど。
レリスのことは勿論好きだし、嫌いになれる要素なんてない。
ダンジョンでの三日間でかなり距離が近づいた実感はあったし、その辺の見知らぬ女の人なんかと比べるのも失礼なくらい好感を抱いてはいる。
でもそれとレリスの俺に対する想いは似て非なる物である。
俺がこんなあやふやな気持ちなのにレリスの想いを受け入れられる資格なんかあるんだろうか?
「こんなところで何をやってるんですか宗一さん?」
思わず頭を抱えて唸っていた俺の前に、いつの間にかメイド服を身に纏ったシエルが立っていた。
シエルのメイド服もすっかり見慣れた光景になってきたな……って今はそんなことどうでもいいんだよ。
「ごめん、今はちょっとシエルの相手していられる余裕がない……」
「あらまあ、珍しいですね?何かあったんですか?」
一人にしてほしかったのに、こともあろうかシエルが俺の隣に腰かけてきた。
いつもなら鬱陶しく思うところだが、今日に限ってはそんな気分にはならなかった。
今この時に限って言えば、シエルのこの能天気さが少しありがたい。
「悩んでることがあるなら、私に話してすっきりしましょうよ~ねえ?」
「シエルに話してもなぁ……」
「宗一さんが何に悩んでるのか当ててあげましょうか?ずばり女性関係ですよね?」
「なっ!?おま……」
そこまで言いかけて、俺は咄嗟に口を塞ぐ。
どうやら手遅れだったらしく、シエルのそんな俺の様子をニヤニヤしながら見ていた。
「カマかけてくるなよ……性格悪いぞ……」
「いつも私のことをいじめてくる人にそんなこと言われても、痛くもかゆくもありませんからー」
これもう話さないといけない流れじゃんか……我ながら迂闊だった。
「まあ、なんていうか……いつかこういう日が来る気がしてましたけどねぇ」
「マジかよ、スゲーなシエル」
「でも一番手がまさか今日仲間になったばかりのレリスさんだとは思いませんでしたよ」
なにその一番手って?二番手三番手と控えてるみたいな言い方やめろよ。
……控えてないよね?
「宗一さんは日本にいるころからそこそこモテてるみたいでしたから」
「んなわけねーだろ……こっちとら彼女いない歴年齢だっつーの……」
そんな俺の言葉を聞いたシエルが深いため息を吐いた。
なんだよそのリアクション……何度でも言ってやるが俺は本当にモテなかったんだぞ!?
「私は確かに誤って宗一さんを死なせてしまいましたが、人違いだったとはいえこれでも宗一さんの身辺調査はしておいたんですよ?」
「なんだそれ探偵かよ」
「私の調べでは、宗一さんが高校生のときに好意を寄せていた女の子が5人いたことを抑えてました」
シエルのその言葉に、俺はうつむいていた顔を勢いよく上げてシエルの顔をガン見してしてしまった。
「まあ、あの状況でそれに気が付くのはちょっと至難の業でしたでしょうね……」
「どういうことだよ?」
「宗一さんって高校に上がってから学校が別になってしまった、近所に住んでる幼馴染の女の子の友達がいましたよね?」
「いたけど……それがどうしたんだ?」
「高校で宗一さんに好意を持っていた女の子たちは、影でその幼馴染の女の子に牽制されてましたよ?」
まさか生きてきて、開いた口が塞がらないという状況に遭遇するとは思わなかった。
ええー……あいつそんなことしてたの!?
普段はそっけないというか、逆に俺のこと嫌いだったんじゃないかって雰囲気だったのに……。
「愛情の裏返しって奴でしょうね。きっと折を見て宗一さんに告白するつもりだったんじゃないでしょうか?……あの様子じゃ多分一生かかっても無理だったでしょうが」
「そんな空気に全くならなかったし、俺も幼馴染として友好的に接してはいたけど、異性としての好意を持ってたわけじゃなかったからなぁ」
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だって接していても嫌われてるとしか思えないんだもん。
「確か宗一さんには、もう一人幼馴染っぽい女の子がいたはずですけど……あれ?」
「どうした?」
「おかしいですね……ちゃんとその辺も調べたはずなのに……記憶から抜け落ちてる……?」
なにやらシエルが頭を抱えだした。
もう一人の幼馴染……言われてみるといたような気もする。
でもたしかその子は身近にはおらず、いつも長期の休みにじいちゃんちの田舎に行ったときに……あれ?
そんな子いたかな?じいちゃんの田舎に俺と同年代っぽい子はいなかったはずだけど……?
なんだか記憶が抜け落ちているというか、黒い靄がかかって見えないようにされているような……自分自身の記憶のことなのに酷く不気味に思えてくる。
「……まあとにかく!問題はレリスさんのことをどうするかですよ!」
俺と同じように頭を抱えていたシエルが突然顔を上げて俺に言ってきた。
まあ今は思い出せない幼馴染のことはどうでもいいんだよ。
「どうしたらいいと思う?」
「それを決めるのは宗一さんですよ?」
「わかってるんだけどさ……」
「なにも結婚してくれとまで言われたわけではないんですから、もう少し気楽に考えてみては?」
レリスのあの様子じゃ、結婚まで視野に入れてる気がするのは、俺の思い違いかな?
「気楽に考えたら、レリスに失礼だろうが?」
「そうですか?出した結論が最低な物だったら、たとえどんなに重く受け止め悩みぬいた結論だったとしても、私的にはそっちの方が失礼だと思いますけどね」
シエルのくせに中々的を得た返答を返してくるな。
「日本人ってわりと過程を重視して結果を評価しない一面がありますけど、私から言えば結果が全てだと思いますよ?過程なんて二の次ですよ!それでも過程を重視したいというなら、すでに宗一さんはこうしてレリスさんの想いに対して真剣に悩んで答えてあげたいって思ってるんですから、もうそれで十分だと思いますけどね」
「そういうもんかな……?」
「そんなもんですよ?ああでも、このままずっと引き伸ばし続けて答えを出さないままズルズルと行くのだけはダメですよ?傷つけたくないからって心地よい関係に身を委ね続けるのは自分にとっては楽かもしれませんが、相手にとってはこれ以上にないくらい残酷な仕打ちですからね?」
シエルの言葉の一つ一つが俺の心に大きな重荷となってのしかかってくる。
逃げようなんて思っちゃいなかったが、逃げ道を塞がれているような感覚だ。
「でも宗一さんですからね……間違ってもレリスさんを不幸にするような選択だけはしないと思いますけど」
「偉く信頼してくれてるんだな」
「そりゃあそうですよ?そもそも宗一さんが最低な人間だったら、あの時生き返らせることも転生させることもしませんでしたからね」
「まともな性格に育ててくれた俺の両親に感謝だな」
そう言って軽くため息を吐いた俺を、シエルが薄く微笑みながら見てくる。
「大分気分が晴れたみたいですね?さっきまで死にそうな顔してましたら、結構心配してたんですよ?」
「そんなにやばかった?」
「はい、そりゃあもう……じゃあ最後に一つだけ……例え宗一さんがレリスさんを振ったとしても、その瞬間にレリスさんが不幸になるわけじゃないんですから、そこだけははき違えないでくださいね?」
そう言い残して、シエルはエプロンドレスを優雅に翻し家の中へと戻っていった。
シエルの癖に、随分と助けられてしまったな。
……いやここまで来るまで、俺はなんだかんだシエルに助けれられているんだよな……。
今度何かお礼をしてあげよう。
「さてと……どうしたもんかな?」
改めて空を見上げる。
シエルに話を聞いてもらったことで随分と心は軽くなっていたが、問題が解決したわけではないのだ。
でもさっきまでの俺よりは、もっとちゃんとしたレリスに対する答えを出せるんじゃないか……ってそんな予感だけはしていた。
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