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決着~締まらない勝利~
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さて、こうして無事に全裸になることができたものの、この方法はぶっちゃけ賭けだった。
服よりも俺のほうが先に燃え尽きて炭になる可能性だって、充分あったわけだしな。
無敵能力が発動する前に死んだらおそらく普通に死ぬだろうし。
「なんか勝ち確ムードになったので、私もう帰っていいですかね?」
「何言ってんの!?ダメに決まってんじゃん!テレアのこと頼むって言ったろ!」
なにやらアホなことを言い出した後ろにいるシエルに顔を向けて一喝した。
ついでにテレアを見ると何が何だかわからないといった顔をして茫然としていた。
「すぐに倒してくるからな?もうちょっとの辛抱だぞテレア」
「うっうん……!」
なんて格好良く言ったものの全裸なんだよな俺……どうにも締まらない。
「はあ!!」
その一瞬の隙をついて、ガルムスが俺に剣戟を食らわせてきた。
だが俺を斬りつけた剣がポッキリと折れ、金属音を響かせながら地面に転がる。
なにやら強そうな剣だっただけに勿体ないな。
「なっ!?バカな……この剣が!?」
再びガルムスの表情が驚愕で彩られる。
折角ご自慢の魔法剣とやらを見てみたかったのに、剣が折れてしまったのでは見ることはできないだろうな。
剣がなくなったとはいえ魔法も得意みたいだし、今のうちに無力化しておかないと……。
そう思って一歩踏み出した瞬間、折れた剣を捨ててガルムスが大きくバックステップをし俺と距離を取ったかと思うと、魔力を活性化させ両手に先ほどよりも巨大な火の玉を作り出し、俺に投げつけてきた。
「燃え尽きろ!!!」
よけるのも面倒だったので、俺はその二つの火の玉を真正面から受けながら、距離を詰める意味も込めてガルムスへと近づいていく。
「なぜだ!?なぜ効かない!!??」
ガルムスの顔が真っ青になっていく。
ちょっと可哀そうになってきたけど、なんだかんだで俺も殺されかけたから容赦なんてしないけどね。
徐々に近づいてくる俺から距離を取るように再びバックステップしたガルムスが魔力を活性化させはじめる。
今度は何を見せてくれるんだろうか?
「まさかこの奥の手を使うことになるとはな……はあああぁぁっ!!!!」
突き出したガルムスの両手に目視できるほどの強大な魔力が集まっていく。
その魔力がバチバチとスパークしながらガルムスの両手の空間に集まっていき、魔力で形成された一本の剣を作り出した。
魔法剣ならぬ魔力剣と言ったところか?
傍から見ただけでも、ものすごい威力があるのが見て取れる……並の人間があれをまともに食らったらひとたまりもないだろうな。
とここでふと思い立つ。
「えっと……こうかな?」
体内の魔力を活性化させそれを両手に集めていく。
たったそれだけの作業で魔力がごっそりと減っていくが、その減った魔力が即座に補填されていく。無敵能力万歳。
本当はもっと細かい魔力の調整などをしないといけないと思うが、そんなことお構いなしに俺はほぼ力業でその魔力をガルムスと同じように両手の空間へと集めていく。
「おい……嘘だろ……ちょっと待てよ!」
その声を無視して脳内で剣をイメージしていく……おお出来た!!やってみれば意外と何とかなるもんだな!
俺の手元にはガルムスの作った物とは比較にならない威力を秘めた魔力剣が形成されていた。
できたのはいいんだけど、維持するのに秒単位で魔力がゴリゴリと減っていく……無敵状態じゃなければとてもじゃないけど使えないなこれは。
まあでもいい技を教えてもらった。
「ばっ化け物め!!!」
ガルムスが魔力剣を振りかぶり、俺に向かって突進してくる。
対する俺は剣道でいうところの脇構えで魔力剣を構え、それを軽く真横に振りぬいた。
魔力剣から発せられた魔力を含んだ衝撃波がガルムスに襲い掛かり―――
「がっ……がああああぁぁ!!!!」
断末魔の悲鳴を上げなら吹っ飛んでいき遺跡の壁に激突し倒れて動かなくなった。
うわおっ凄い威力。軽く振りぬいただけだったのに、地面が剣の軌道を描く形で抉れていた。
とりあえずこれでガルムスは無力化できたはずだ!……死んでないよね?
「そんな……あのガルムスが……」
その声に反応して振り向くと、信じられないと言った表情でリドアードが茫然としていた。
さて、次はこいつの番だな。
魔力剣を引っ込めて、俺はリドアードに向かって歩き出した。
「ひいぃっ!!来るな化け物!!」
明らかに怯えた様子で後ずさりしていくリドアードだったが、床の出っ張りに踵をひっかけてそのまま尻もちをつく。
ほどなくして俺はリドアードの前に辿り着き、怯えているリドアードを見下ろす。
「俺が何でここに来たか教えてやろうか?」
しゃがみ込み、リドアードに視点を合わせながらなおも俺は話を続ける。
「テレアを泣かしたお前の顔面をぶん殴ってやるために来たんだけど……」
怯えるリドアードの頬をぺちぺちと叩く。
それだけでリドアードがガクガクと震え出し、股間を濡らしていた。
何漏らしてんだよ汚いな、俺裸足なんだから直に小便踏んじゃうだろうが。
「気が変わったからぶん殴るのはやめてやるよ?」
「へ……?」
俺はスッと立ち上がり手をかざし、体内の魔力を活性化させてある魔法を発動し、なおも尻もちをつきながら俺を見上げているリドアードにその魔法を付与した。
うわっ、アホみたいに魔力が減った!
「今俺がお前に掛けた魔法を教えてやろうか?それな「どんな攻撃でも必ず一発は防ぐ」魔法なんだよ?」
「そっそっそれでなにををを???」
エナが言っていた通りこの世界の魔法はイメージが全てである。
脳内でイメージした内容の魔法を魔力で出力する際、その内容に見合った魔力を消費するのだ。
本来なら「どんな攻撃でも必ず一発は防ぐ」なんてめちゃくちゃな魔法は、使える方がおかしいほどの魔力を消費するのだが無敵状態の俺の魔力は無尽蔵なので、こんな無茶な魔法でもたやすく実現できててしまう。
「お前さっき俺の目の前でテレアのことを蹴り飛ばしたよな?だから殴るのはやめてその代わり全力で蹴り飛ばしてやるから……」
言いながら俺はまるでサッカーボールを蹴るような体勢に移行していく。
もちろん利き足に身体強化を施すのも忘れない。
「歯ぁ食いしばれっっ!!!!!」
「やっやめ……!」
そのまま勢いに任せて全力でリドアードの顔面を蹴りぬいてやった。
「げぼぶっぶぶぶ!!!」
なんかわけのわからない悲鳴を上げながらものすごい勢いで吹っ飛んでいく。
飛んで行った先には、シルクス夫妻とエナの手によって両手を失い崩壊寸前まで追い込まれているストーンゴーレムが立っていて、それに激突したものの、それすらもぶち抜いていき最終的にガルムスと同じように遺跡の壁に激突し、30センチほどめり込んだのちようやくその勢いは止まった。
すっとんできたリドアードに胴体をぶち抜かれたストーンゴーレムが、轟音を立てながら崩れ落ちていく様を眺めつつ、俺は大きく息を吐きだす。
「あースッキリした」
本来なら無敵状態の俺の本気の蹴りを顔面に受けたら、首から上が消し飛んで塵になってもおかしくはないが、あの魔法のおかげで消し飛ぶどころかダメージすらないだろう。
別に殺すことが目的でれはなかったのでこれでいいのだ。
「お兄ちゃん!!!」
突然聞こえた声に振り替えると、テレアが俺に飛びついてきた。
「うわっ!?」
いきなりだったので受け止めきれず、テレアが俺のお腹に上に馬乗りになる形で倒れこんだ。
「お兄ちゃん大丈夫!?怪我してない!?」
「大丈夫大丈夫!」
テレアが涙でぐしゃぐしゃになった顔で、無事を確かめるように俺の顔をペタペタと触る。
頬から伝って落ちた涙が俺のお腹に落ちて冷たい感触を残していく。
「テレアお兄ちゃんが燃やされて死んじゃったかと思って……うぅ……」
全裸になるために必要な行程だったとはいえ、テレアに多大な心配をかけてしまったようだ。
ふと真横に人の気配を感じたので顔を上げると、そこにはテレアを縛っていたロープを手に悪戯な笑みを浮かべるシエルが立っていた。
どうやらシエルがテレアの拘束を解いてくれたようだ。
「良かったぁ……お兄ちゃんが死ななくて本当に良かったよぉ……」
「あー心配かけてごめんなテレア?」
手を伸ばしテレアの頭を優しくなでてやる。
「本当はもうちょっとカッコよく戦って勝ちたかったんだけどなぁ……テレアにかっこ悪いところ見せちゃったな」
俺が笑いながらそう言うと、テレアは流れ出る涙を止めないまま―――
「かっこ悪くなんかないよ!お兄ちゃんはカッコいいよ!!」
そう言って俺に抱き着き、わんわんと泣き続けた。
いやはや嬉しいもんだねぇ。
その後、シルクス夫妻の指示であらかじめ地上で控えていたマグリド国の憲兵団がなだれ込んできて、リドアードとその手下たちは全員捕縛されて連行されていった。
壁に30cmほどめり込んでいたリドアードを引っ張り出すのに苦労していたの見て、俺は心の中で憲兵団の皆さんに謝罪をした。
テレアもようやく両親と再会することができ、互いに抱きしめあい喜びを噛み締めあっているのを見たときは、さすがの俺もちょっと目頭が熱くなったものだ。
とういうかエナは引くくらい号泣していた。
おそらく感受性が高いんだろうなぁ……まあずっとテレアのことを気にかけていたし、それだけ嬉しいんだろうけどね。
「宗一さんには言いたいことが山ほどあるんですが……まあこの光景に免じて今回は大目に見てあげます」
シエルがため息を吐きながら、俺にそう言ってくる。
そういえばシエルにもちゃんと今回の件についてお礼を言っておかないとな。
「シエルも本当にありがとな?急なお願いだったのに駆け付けてくれてさ?本当に感謝してるよ」
「まっまあ?感謝してるのならそれでいいんですけどね?」
なんかまんざらでもなさそうな顔してるのを見るに、多分また何かあった時にもなんだかんだで手伝ってくれるんじゃないかと思う。
この神様見習いちょろいな?
「しかし、これでようやくこの事件も終わりだな!みんな無事で本当に良かった!」
「そうですね……それはいいんですけど」
俺が締めくくるようにそう言うと、なんだかエナが言いにくそうな顔で―――
「いい加減なにか服を着てください……」
赤面しつつ顔をそらしながら言ってきたのだった。
ああ……本当に締まらないなぁ。
服よりも俺のほうが先に燃え尽きて炭になる可能性だって、充分あったわけだしな。
無敵能力が発動する前に死んだらおそらく普通に死ぬだろうし。
「なんか勝ち確ムードになったので、私もう帰っていいですかね?」
「何言ってんの!?ダメに決まってんじゃん!テレアのこと頼むって言ったろ!」
なにやらアホなことを言い出した後ろにいるシエルに顔を向けて一喝した。
ついでにテレアを見ると何が何だかわからないといった顔をして茫然としていた。
「すぐに倒してくるからな?もうちょっとの辛抱だぞテレア」
「うっうん……!」
なんて格好良く言ったものの全裸なんだよな俺……どうにも締まらない。
「はあ!!」
その一瞬の隙をついて、ガルムスが俺に剣戟を食らわせてきた。
だが俺を斬りつけた剣がポッキリと折れ、金属音を響かせながら地面に転がる。
なにやら強そうな剣だっただけに勿体ないな。
「なっ!?バカな……この剣が!?」
再びガルムスの表情が驚愕で彩られる。
折角ご自慢の魔法剣とやらを見てみたかったのに、剣が折れてしまったのでは見ることはできないだろうな。
剣がなくなったとはいえ魔法も得意みたいだし、今のうちに無力化しておかないと……。
そう思って一歩踏み出した瞬間、折れた剣を捨ててガルムスが大きくバックステップをし俺と距離を取ったかと思うと、魔力を活性化させ両手に先ほどよりも巨大な火の玉を作り出し、俺に投げつけてきた。
「燃え尽きろ!!!」
よけるのも面倒だったので、俺はその二つの火の玉を真正面から受けながら、距離を詰める意味も込めてガルムスへと近づいていく。
「なぜだ!?なぜ効かない!!??」
ガルムスの顔が真っ青になっていく。
ちょっと可哀そうになってきたけど、なんだかんだで俺も殺されかけたから容赦なんてしないけどね。
徐々に近づいてくる俺から距離を取るように再びバックステップしたガルムスが魔力を活性化させはじめる。
今度は何を見せてくれるんだろうか?
「まさかこの奥の手を使うことになるとはな……はあああぁぁっ!!!!」
突き出したガルムスの両手に目視できるほどの強大な魔力が集まっていく。
その魔力がバチバチとスパークしながらガルムスの両手の空間に集まっていき、魔力で形成された一本の剣を作り出した。
魔法剣ならぬ魔力剣と言ったところか?
傍から見ただけでも、ものすごい威力があるのが見て取れる……並の人間があれをまともに食らったらひとたまりもないだろうな。
とここでふと思い立つ。
「えっと……こうかな?」
体内の魔力を活性化させそれを両手に集めていく。
たったそれだけの作業で魔力がごっそりと減っていくが、その減った魔力が即座に補填されていく。無敵能力万歳。
本当はもっと細かい魔力の調整などをしないといけないと思うが、そんなことお構いなしに俺はほぼ力業でその魔力をガルムスと同じように両手の空間へと集めていく。
「おい……嘘だろ……ちょっと待てよ!」
その声を無視して脳内で剣をイメージしていく……おお出来た!!やってみれば意外と何とかなるもんだな!
俺の手元にはガルムスの作った物とは比較にならない威力を秘めた魔力剣が形成されていた。
できたのはいいんだけど、維持するのに秒単位で魔力がゴリゴリと減っていく……無敵状態じゃなければとてもじゃないけど使えないなこれは。
まあでもいい技を教えてもらった。
「ばっ化け物め!!!」
ガルムスが魔力剣を振りかぶり、俺に向かって突進してくる。
対する俺は剣道でいうところの脇構えで魔力剣を構え、それを軽く真横に振りぬいた。
魔力剣から発せられた魔力を含んだ衝撃波がガルムスに襲い掛かり―――
「がっ……がああああぁぁ!!!!」
断末魔の悲鳴を上げなら吹っ飛んでいき遺跡の壁に激突し倒れて動かなくなった。
うわおっ凄い威力。軽く振りぬいただけだったのに、地面が剣の軌道を描く形で抉れていた。
とりあえずこれでガルムスは無力化できたはずだ!……死んでないよね?
「そんな……あのガルムスが……」
その声に反応して振り向くと、信じられないと言った表情でリドアードが茫然としていた。
さて、次はこいつの番だな。
魔力剣を引っ込めて、俺はリドアードに向かって歩き出した。
「ひいぃっ!!来るな化け物!!」
明らかに怯えた様子で後ずさりしていくリドアードだったが、床の出っ張りに踵をひっかけてそのまま尻もちをつく。
ほどなくして俺はリドアードの前に辿り着き、怯えているリドアードを見下ろす。
「俺が何でここに来たか教えてやろうか?」
しゃがみ込み、リドアードに視点を合わせながらなおも俺は話を続ける。
「テレアを泣かしたお前の顔面をぶん殴ってやるために来たんだけど……」
怯えるリドアードの頬をぺちぺちと叩く。
それだけでリドアードがガクガクと震え出し、股間を濡らしていた。
何漏らしてんだよ汚いな、俺裸足なんだから直に小便踏んじゃうだろうが。
「気が変わったからぶん殴るのはやめてやるよ?」
「へ……?」
俺はスッと立ち上がり手をかざし、体内の魔力を活性化させてある魔法を発動し、なおも尻もちをつきながら俺を見上げているリドアードにその魔法を付与した。
うわっ、アホみたいに魔力が減った!
「今俺がお前に掛けた魔法を教えてやろうか?それな「どんな攻撃でも必ず一発は防ぐ」魔法なんだよ?」
「そっそっそれでなにををを???」
エナが言っていた通りこの世界の魔法はイメージが全てである。
脳内でイメージした内容の魔法を魔力で出力する際、その内容に見合った魔力を消費するのだ。
本来なら「どんな攻撃でも必ず一発は防ぐ」なんてめちゃくちゃな魔法は、使える方がおかしいほどの魔力を消費するのだが無敵状態の俺の魔力は無尽蔵なので、こんな無茶な魔法でもたやすく実現できててしまう。
「お前さっき俺の目の前でテレアのことを蹴り飛ばしたよな?だから殴るのはやめてその代わり全力で蹴り飛ばしてやるから……」
言いながら俺はまるでサッカーボールを蹴るような体勢に移行していく。
もちろん利き足に身体強化を施すのも忘れない。
「歯ぁ食いしばれっっ!!!!!」
「やっやめ……!」
そのまま勢いに任せて全力でリドアードの顔面を蹴りぬいてやった。
「げぼぶっぶぶぶ!!!」
なんかわけのわからない悲鳴を上げながらものすごい勢いで吹っ飛んでいく。
飛んで行った先には、シルクス夫妻とエナの手によって両手を失い崩壊寸前まで追い込まれているストーンゴーレムが立っていて、それに激突したものの、それすらもぶち抜いていき最終的にガルムスと同じように遺跡の壁に激突し、30センチほどめり込んだのちようやくその勢いは止まった。
すっとんできたリドアードに胴体をぶち抜かれたストーンゴーレムが、轟音を立てながら崩れ落ちていく様を眺めつつ、俺は大きく息を吐きだす。
「あースッキリした」
本来なら無敵状態の俺の本気の蹴りを顔面に受けたら、首から上が消し飛んで塵になってもおかしくはないが、あの魔法のおかげで消し飛ぶどころかダメージすらないだろう。
別に殺すことが目的でれはなかったのでこれでいいのだ。
「お兄ちゃん!!!」
突然聞こえた声に振り替えると、テレアが俺に飛びついてきた。
「うわっ!?」
いきなりだったので受け止めきれず、テレアが俺のお腹に上に馬乗りになる形で倒れこんだ。
「お兄ちゃん大丈夫!?怪我してない!?」
「大丈夫大丈夫!」
テレアが涙でぐしゃぐしゃになった顔で、無事を確かめるように俺の顔をペタペタと触る。
頬から伝って落ちた涙が俺のお腹に落ちて冷たい感触を残していく。
「テレアお兄ちゃんが燃やされて死んじゃったかと思って……うぅ……」
全裸になるために必要な行程だったとはいえ、テレアに多大な心配をかけてしまったようだ。
ふと真横に人の気配を感じたので顔を上げると、そこにはテレアを縛っていたロープを手に悪戯な笑みを浮かべるシエルが立っていた。
どうやらシエルがテレアの拘束を解いてくれたようだ。
「良かったぁ……お兄ちゃんが死ななくて本当に良かったよぉ……」
「あー心配かけてごめんなテレア?」
手を伸ばしテレアの頭を優しくなでてやる。
「本当はもうちょっとカッコよく戦って勝ちたかったんだけどなぁ……テレアにかっこ悪いところ見せちゃったな」
俺が笑いながらそう言うと、テレアは流れ出る涙を止めないまま―――
「かっこ悪くなんかないよ!お兄ちゃんはカッコいいよ!!」
そう言って俺に抱き着き、わんわんと泣き続けた。
いやはや嬉しいもんだねぇ。
その後、シルクス夫妻の指示であらかじめ地上で控えていたマグリド国の憲兵団がなだれ込んできて、リドアードとその手下たちは全員捕縛されて連行されていった。
壁に30cmほどめり込んでいたリドアードを引っ張り出すのに苦労していたの見て、俺は心の中で憲兵団の皆さんに謝罪をした。
テレアもようやく両親と再会することができ、互いに抱きしめあい喜びを噛み締めあっているのを見たときは、さすがの俺もちょっと目頭が熱くなったものだ。
とういうかエナは引くくらい号泣していた。
おそらく感受性が高いんだろうなぁ……まあずっとテレアのことを気にかけていたし、それだけ嬉しいんだろうけどね。
「宗一さんには言いたいことが山ほどあるんですが……まあこの光景に免じて今回は大目に見てあげます」
シエルがため息を吐きながら、俺にそう言ってくる。
そういえばシエルにもちゃんと今回の件についてお礼を言っておかないとな。
「シエルも本当にありがとな?急なお願いだったのに駆け付けてくれてさ?本当に感謝してるよ」
「まっまあ?感謝してるのならそれでいいんですけどね?」
なんかまんざらでもなさそうな顔してるのを見るに、多分また何かあった時にもなんだかんだで手伝ってくれるんじゃないかと思う。
この神様見習いちょろいな?
「しかし、これでようやくこの事件も終わりだな!みんな無事で本当に良かった!」
「そうですね……それはいいんですけど」
俺が締めくくるようにそう言うと、なんだかエナが言いにくそうな顔で―――
「いい加減なにか服を着てください……」
赤面しつつ顔をそらしながら言ってきたのだった。
ああ……本当に締まらないなぁ。
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