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反省~青い髪の少女テレア~
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まずは周りの状況を確認する。
すぐ横に目線を向けると、そこには短刀を構えたローブの男。壁にぶつけたダメージが抜けきっていないせいか、足元がおぼつかないようだ。
前を見ると、各々の武器を構えながらじりじりと俺ににじり寄ってくるローブの男が二人。
かぎ爪と……ワンドかあれは?全然そんな風に見えないが、一人は魔法使いなのかな?
またすぐ横に視線を戻すと、驚いたことに短刀のローブの男が目の前まで一瞬で間合いを詰めていた。
(うおっ!?はやっ!!)
驚いてる間に、隙だらけだった俺の首筋に短刀を薙ぎ払われた。
カキンッ!!
「……はぇ?」
間の抜けた情けない声が聞こえた。
確実に首を捕らえたと思われた短刀は、軽快な金属音と共に根本からぽっきりと折れて地面に転がった。
その光景見て、攻撃した本人が信じられないといった表情で固まる。
もちろんその隙を見逃さない。
「えいっ」
固まったローブの男の顔面に軽くビンタすると、ものすごい勢いで横にぶっ飛んでいき再び壁に叩きつけられた。
ピクピクと痙攣しているが、起き上がってくる様子はない。これで一人……と。
視線を前方二人に戻すと、かぎ爪の男がいなくなっている。
不思議に思ったその刹那に―――
パキンッ!!
背中に何かが当たった感触と共に、何か金属的なものが折れた音が俺の耳に届く。
とっさに振り替えると、爪が折れてただのグローブと化した自身の武器を茫然と見つめるローブの男がいた。
自分から来てくれるなんて、手間が省けたな。
なんて思いつつデコピンでぶっ飛ばしてやろうとローブの男に手を伸ばした瞬間―――
「エン・バレット!!」
真後ろから聞こえた声に驚き身体ごと振り返ると、直径20cmくらいの火の玉がこっちに向かって真っすぐ飛んできていた。
(え!?これって魔法!?)
つい反射的に火の玉に向かって手を伸ばすと、火の玉は手に当たった瞬間俺の身体に燃え移ることもなく消えていった。
「なっ……なんだそりゃ!?」
魔法を撃ったローブの男があまりの理不尽な光景に思わず叫んだ。
まあ気持ちはわかるよ、同じ立場なら俺だって叫ぶと思うし。
(とりあえず……!)
すぐに振り返り真後ろにいたローブの男の両脇を強引に掴んで無造作に持ち上げる。
「えっ!?えっ!!??」
いきなり持ち上げられ混乱するそいつを、後ろにいるワンドの男に狙いを定めて軽く放り投げた。
「「うっうわあああ―――!!」」
そのままワンドの男に激突し、二人一緒に後方に吹っ飛んでいき壁に激突し動かなくなった。
戦闘開始からわずか3分間の出来事であった。
「これでよしっと!」
倒れてる男たちのローブを引っぺがし、それを端と端できつく結んで一本のながいロープもどきを作り、三人まとめてふん縛った。
色々と聞いてやろうと思ったものの一向に目を覚まさないし、逃げたエナたちが心配なので放置することに決めて、服を着てその場を後にする。
投げつけた防具も忘れずにちゃんと回収する。せっかく買ったのに勿体ないからな。
宿屋へと向かう道中さっきの戦いについて思い返す。
「う~ん……反省点しかなかったな」
ていうかさっきのは戦いですらなかった。実際俺はあの三人の動きに全くついていけてなかったしな。
全裸で無敵になる能力がなかったら、最初の首への一撃で確実に命を落としてただろうし。
今回は上手いこと全裸になることができたが、もしまた同じような状況になった時にも、今回のようにできるかというと正直疑問だ。
「この力があるからって甘えてたら、いつか絶対に痛い目に遭うなこれ」
無敵能力なしでも、最低限自分の力で戦えるようにしなければならない。
今後の課題だなこれは……あとでエナに相談しよう。
そんなふうに一人反省会をしつつ、俺たちの使っている宿屋に到着したのだった。
「シューイチさん!良かった!無事だったんですね!!」
宿屋のエナの部屋に行くと、エナが出迎えてくれた。
あの後無事に逃げられたようで安心した。
「そっちも無事みたいで良かったよ」
「心配してたんですからね?もうああいう無茶はしないでください」
ああするしかなかったとはいえ、やはり無茶だったよな……。
「ごめんな?……それで、あの子は?」
「あの子も無事ですよ、ほら?」
エナが身を横にずらすと、そこには青い髪の少女が立っていた。
「あっ……あのっ……」
「怪我してないか?」
しゃがみ込み、少女と視線を合わせる。
ざっと見たところ怪我もないみたいだな。
「うん……はい」
「そっかそっか!それならよかった」
そう言って少女の頭を優しくを撫でると、一瞬びくっとしたがすぐにうつむいて大人しくなる。
「俺の名前は葉山宗一だ。気軽にシューイチとでも呼んでくれ」
「えっと……テレ……私は、テレア=シルクス……です」
うつむいた少女に軽く自己紹介すると、少女……テレアは顔を上げて名前を名乗った。
「さっき自己紹介しましたけどもう一度……私はエナ=アーディスです。よろしくお願いしますねテレアちゃん」
「よろしくお願い……します」
グウゥゥ~。
自己紹介がすんだところで、テレアから腹の虫が鳴った。
「はう……」
赤面しながらテレアが自分のお腹を押さえた。
「お腹すいてるのか?」
「すっすいてない……です」
「お腹すいてるんだろ?俺もお腹すいたし何か食べに行こうぜ二人とも」
「そうですね、今日は朝から色々とあってお昼も食べてませんでしたし」
「あっあの……」
「決まりっと!それじゃあ行くか!」
勝手に話が進んでいきオロオロするテレアを尻目に、俺たちは連れ立って宿屋の食堂へと足を運んだ。
「ごちそうさん!はーっ空きっ腹にきいたわー!」
料理を平らげ満腹になったお腹をさする。
「シューイチさん、行儀が悪いですよ?ねぇテレアちゃん?」
「はっはい……」
エナが行儀の悪い俺を咎めながらテレアに話を振るも、未だにテレアは緊張している様子だった。
それでもやはりお腹は空いてたようで、出された料理は残さず食べていたので安心する。
「さてと、色々と聞きたいことがあるんですけど……テレアちゃんはどうして―――」
「あっエナ、デザート頼んでいい?このチーズケーキみたいなやつ食ってみたいんだけど?」
「えっ?ああ、いいですけど」
急に話に割り込んできた俺にエナが驚きつつも、デザートを食べるのを許可してくれた。
「テレアも何か食べたいデザートがあったら遠慮なく頼んでいいぞ?お金ならエナが全部払ってくれるから?」
「ええっ!!??」
エナが驚愕の表情で俺を見てくる。
「えっと……じゃあこのバニラアイス……」
「ええええっっ!!!!????」
まさかのテレアのデザート追加注文に、再びエナが驚愕の声を上げる。
自分で言ったものの、まさか本当にデザートを追加するとは思わなくて俺もちょっとびっくりした。やるなテレア。
「ううぅ……お金足りるかな……?」
「アイスが好きなのか?」
財布の中身を確認しながら涙目になるエナを横目に、テレアに話しかける。
「うん……はっはい」
「そうかそうか!あといつもの自分の喋り方でいいぞ?」
「え?」
無理に敬語を使おうとしてるのがバレバレだ。
「別に敬語使わなくても怒らないからさ?それとも敬語使わないと死んじゃう病気なのか?」
「そんなこと……ない……よ?」
「ちなみにエナは敬語で喋らないと死んじゃう病気だから常に敬語なんだぞ?」
「初耳なんですけどそれ!?」
「そうなの……?」
「違いますよ!?」
さっきから叫んでばかりでエナは忙しいなぁ。
「ちなみにどんなアイスが好きなんだ?俺はチョコミントが好きなんだけど」
関系ないけど、ミント系のアイスを歯磨き粉呼ばわりする奴とは一生仲良くするつもりはない。
大体あれって歯磨き粉がミントアイスを真似してるんだからな?ミントアイスに謝れくそがっ。
「テレアはアイスだったらなんでも好き」
「なんでもとは大きくでたな。それじゃあこのメニューにあるアイス全部制覇しようぜ!」
「やめてください!ほんとお願いですから!!」
まあエナのお財布事情もあるし、本当にするつもりはないけどな。
「もうなんなんですかさっきから……私をいじめて楽しいんですか?」
「好きな子ほどいじめたくなるっていうだろ?あれだよ」
「えっ……!?好きな子……?」
「さてそれは冗談としてだ」
「冗談!!??」
「テレアはこれからどうする?」
「え?」
突然話を振られたテレアが驚いて声を上げる。
「俺たちはこの後宿屋に戻るんだけど」
「えっと……テレアは……」
「なあエナ?泊まる人数増えたら追加料金取られるのかな?」
「え?えっと……部屋を一つ余分に取るなら追加料金はかかると思いますけど、私と同室にしちゃえば……どうなんでしょうか?後で確認してみますね」
「テレアはエナと同室でもいいか?」
「でも……いいの?」
テレアの表情が不安で彩られる。
そんなものはもちろん良いに決まってる。
「私は全然問題ないですよ」
「だってさ?良かったなテレア?」
「うん……」
自分の意志と無関係に話が進んでいく状況に、テレアがあっけに取られている。
我ながら強引に話を進めてるとは思うが、そうでもしないと多分この子は……。
「なんであの子に何も聞かないんですか?」
テレアがお花を摘みに行っている間にエナが声を潜めて聞いてきた。
「いきなりあれこれ聞いても、あの子多分何も話してくれないと思うぞ?」
「でも明らかに異常事態じゃないですか。多少無理にでも話を聞かないと……」
「エナの気持ちはわかるけど、少し時間をおいて落ち着かせないとダメだよ」
日本にいたころ中学まで団地に住んでいたんだが、近所の子供たちと仲が良かった俺はよく親御さんたちに子供の面倒を頼まれることが多かった。
多くの子供たちと接してきたが、その中には今のテレアのような子もいた。
ああいいう子は自分から話をできる状況を作ってあげないと何も話してくれないのだ。
「はぁ……そういうものなんですね」
「しっかしほんと何なんだろうなぁ……テレアといいあの三人組といい」
椅子にもたれ一人ごちりながら、何やら面倒くさいことに巻き込まれた予感をひしひしと感じていた。
すぐ横に目線を向けると、そこには短刀を構えたローブの男。壁にぶつけたダメージが抜けきっていないせいか、足元がおぼつかないようだ。
前を見ると、各々の武器を構えながらじりじりと俺ににじり寄ってくるローブの男が二人。
かぎ爪と……ワンドかあれは?全然そんな風に見えないが、一人は魔法使いなのかな?
またすぐ横に視線を戻すと、驚いたことに短刀のローブの男が目の前まで一瞬で間合いを詰めていた。
(うおっ!?はやっ!!)
驚いてる間に、隙だらけだった俺の首筋に短刀を薙ぎ払われた。
カキンッ!!
「……はぇ?」
間の抜けた情けない声が聞こえた。
確実に首を捕らえたと思われた短刀は、軽快な金属音と共に根本からぽっきりと折れて地面に転がった。
その光景見て、攻撃した本人が信じられないといった表情で固まる。
もちろんその隙を見逃さない。
「えいっ」
固まったローブの男の顔面に軽くビンタすると、ものすごい勢いで横にぶっ飛んでいき再び壁に叩きつけられた。
ピクピクと痙攣しているが、起き上がってくる様子はない。これで一人……と。
視線を前方二人に戻すと、かぎ爪の男がいなくなっている。
不思議に思ったその刹那に―――
パキンッ!!
背中に何かが当たった感触と共に、何か金属的なものが折れた音が俺の耳に届く。
とっさに振り替えると、爪が折れてただのグローブと化した自身の武器を茫然と見つめるローブの男がいた。
自分から来てくれるなんて、手間が省けたな。
なんて思いつつデコピンでぶっ飛ばしてやろうとローブの男に手を伸ばした瞬間―――
「エン・バレット!!」
真後ろから聞こえた声に驚き身体ごと振り返ると、直径20cmくらいの火の玉がこっちに向かって真っすぐ飛んできていた。
(え!?これって魔法!?)
つい反射的に火の玉に向かって手を伸ばすと、火の玉は手に当たった瞬間俺の身体に燃え移ることもなく消えていった。
「なっ……なんだそりゃ!?」
魔法を撃ったローブの男があまりの理不尽な光景に思わず叫んだ。
まあ気持ちはわかるよ、同じ立場なら俺だって叫ぶと思うし。
(とりあえず……!)
すぐに振り返り真後ろにいたローブの男の両脇を強引に掴んで無造作に持ち上げる。
「えっ!?えっ!!??」
いきなり持ち上げられ混乱するそいつを、後ろにいるワンドの男に狙いを定めて軽く放り投げた。
「「うっうわあああ―――!!」」
そのままワンドの男に激突し、二人一緒に後方に吹っ飛んでいき壁に激突し動かなくなった。
戦闘開始からわずか3分間の出来事であった。
「これでよしっと!」
倒れてる男たちのローブを引っぺがし、それを端と端できつく結んで一本のながいロープもどきを作り、三人まとめてふん縛った。
色々と聞いてやろうと思ったものの一向に目を覚まさないし、逃げたエナたちが心配なので放置することに決めて、服を着てその場を後にする。
投げつけた防具も忘れずにちゃんと回収する。せっかく買ったのに勿体ないからな。
宿屋へと向かう道中さっきの戦いについて思い返す。
「う~ん……反省点しかなかったな」
ていうかさっきのは戦いですらなかった。実際俺はあの三人の動きに全くついていけてなかったしな。
全裸で無敵になる能力がなかったら、最初の首への一撃で確実に命を落としてただろうし。
今回は上手いこと全裸になることができたが、もしまた同じような状況になった時にも、今回のようにできるかというと正直疑問だ。
「この力があるからって甘えてたら、いつか絶対に痛い目に遭うなこれ」
無敵能力なしでも、最低限自分の力で戦えるようにしなければならない。
今後の課題だなこれは……あとでエナに相談しよう。
そんなふうに一人反省会をしつつ、俺たちの使っている宿屋に到着したのだった。
「シューイチさん!良かった!無事だったんですね!!」
宿屋のエナの部屋に行くと、エナが出迎えてくれた。
あの後無事に逃げられたようで安心した。
「そっちも無事みたいで良かったよ」
「心配してたんですからね?もうああいう無茶はしないでください」
ああするしかなかったとはいえ、やはり無茶だったよな……。
「ごめんな?……それで、あの子は?」
「あの子も無事ですよ、ほら?」
エナが身を横にずらすと、そこには青い髪の少女が立っていた。
「あっ……あのっ……」
「怪我してないか?」
しゃがみ込み、少女と視線を合わせる。
ざっと見たところ怪我もないみたいだな。
「うん……はい」
「そっかそっか!それならよかった」
そう言って少女の頭を優しくを撫でると、一瞬びくっとしたがすぐにうつむいて大人しくなる。
「俺の名前は葉山宗一だ。気軽にシューイチとでも呼んでくれ」
「えっと……テレ……私は、テレア=シルクス……です」
うつむいた少女に軽く自己紹介すると、少女……テレアは顔を上げて名前を名乗った。
「さっき自己紹介しましたけどもう一度……私はエナ=アーディスです。よろしくお願いしますねテレアちゃん」
「よろしくお願い……します」
グウゥゥ~。
自己紹介がすんだところで、テレアから腹の虫が鳴った。
「はう……」
赤面しながらテレアが自分のお腹を押さえた。
「お腹すいてるのか?」
「すっすいてない……です」
「お腹すいてるんだろ?俺もお腹すいたし何か食べに行こうぜ二人とも」
「そうですね、今日は朝から色々とあってお昼も食べてませんでしたし」
「あっあの……」
「決まりっと!それじゃあ行くか!」
勝手に話が進んでいきオロオロするテレアを尻目に、俺たちは連れ立って宿屋の食堂へと足を運んだ。
「ごちそうさん!はーっ空きっ腹にきいたわー!」
料理を平らげ満腹になったお腹をさする。
「シューイチさん、行儀が悪いですよ?ねぇテレアちゃん?」
「はっはい……」
エナが行儀の悪い俺を咎めながらテレアに話を振るも、未だにテレアは緊張している様子だった。
それでもやはりお腹は空いてたようで、出された料理は残さず食べていたので安心する。
「さてと、色々と聞きたいことがあるんですけど……テレアちゃんはどうして―――」
「あっエナ、デザート頼んでいい?このチーズケーキみたいなやつ食ってみたいんだけど?」
「えっ?ああ、いいですけど」
急に話に割り込んできた俺にエナが驚きつつも、デザートを食べるのを許可してくれた。
「テレアも何か食べたいデザートがあったら遠慮なく頼んでいいぞ?お金ならエナが全部払ってくれるから?」
「ええっ!!??」
エナが驚愕の表情で俺を見てくる。
「えっと……じゃあこのバニラアイス……」
「ええええっっ!!!!????」
まさかのテレアのデザート追加注文に、再びエナが驚愕の声を上げる。
自分で言ったものの、まさか本当にデザートを追加するとは思わなくて俺もちょっとびっくりした。やるなテレア。
「ううぅ……お金足りるかな……?」
「アイスが好きなのか?」
財布の中身を確認しながら涙目になるエナを横目に、テレアに話しかける。
「うん……はっはい」
「そうかそうか!あといつもの自分の喋り方でいいぞ?」
「え?」
無理に敬語を使おうとしてるのがバレバレだ。
「別に敬語使わなくても怒らないからさ?それとも敬語使わないと死んじゃう病気なのか?」
「そんなこと……ない……よ?」
「ちなみにエナは敬語で喋らないと死んじゃう病気だから常に敬語なんだぞ?」
「初耳なんですけどそれ!?」
「そうなの……?」
「違いますよ!?」
さっきから叫んでばかりでエナは忙しいなぁ。
「ちなみにどんなアイスが好きなんだ?俺はチョコミントが好きなんだけど」
関系ないけど、ミント系のアイスを歯磨き粉呼ばわりする奴とは一生仲良くするつもりはない。
大体あれって歯磨き粉がミントアイスを真似してるんだからな?ミントアイスに謝れくそがっ。
「テレアはアイスだったらなんでも好き」
「なんでもとは大きくでたな。それじゃあこのメニューにあるアイス全部制覇しようぜ!」
「やめてください!ほんとお願いですから!!」
まあエナのお財布事情もあるし、本当にするつもりはないけどな。
「もうなんなんですかさっきから……私をいじめて楽しいんですか?」
「好きな子ほどいじめたくなるっていうだろ?あれだよ」
「えっ……!?好きな子……?」
「さてそれは冗談としてだ」
「冗談!!??」
「テレアはこれからどうする?」
「え?」
突然話を振られたテレアが驚いて声を上げる。
「俺たちはこの後宿屋に戻るんだけど」
「えっと……テレアは……」
「なあエナ?泊まる人数増えたら追加料金取られるのかな?」
「え?えっと……部屋を一つ余分に取るなら追加料金はかかると思いますけど、私と同室にしちゃえば……どうなんでしょうか?後で確認してみますね」
「テレアはエナと同室でもいいか?」
「でも……いいの?」
テレアの表情が不安で彩られる。
そんなものはもちろん良いに決まってる。
「私は全然問題ないですよ」
「だってさ?良かったなテレア?」
「うん……」
自分の意志と無関係に話が進んでいく状況に、テレアがあっけに取られている。
我ながら強引に話を進めてるとは思うが、そうでもしないと多分この子は……。
「なんであの子に何も聞かないんですか?」
テレアがお花を摘みに行っている間にエナが声を潜めて聞いてきた。
「いきなりあれこれ聞いても、あの子多分何も話してくれないと思うぞ?」
「でも明らかに異常事態じゃないですか。多少無理にでも話を聞かないと……」
「エナの気持ちはわかるけど、少し時間をおいて落ち着かせないとダメだよ」
日本にいたころ中学まで団地に住んでいたんだが、近所の子供たちと仲が良かった俺はよく親御さんたちに子供の面倒を頼まれることが多かった。
多くの子供たちと接してきたが、その中には今のテレアのような子もいた。
ああいいう子は自分から話をできる状況を作ってあげないと何も話してくれないのだ。
「はぁ……そういうものなんですね」
「しっかしほんと何なんだろうなぁ……テレアといいあの三人組といい」
椅子にもたれ一人ごちりながら、何やら面倒くさいことに巻き込まれた予感をひしひしと感じていた。
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