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試験~謎の少女~
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武器屋自体はそんなに大きくはないものの、店内には無数の武器や防具が展示されており、その光景に気圧される。
「当たり前だけど、これだけ武器が並んでると圧巻だよなぁ」
おおよそ、日本にいた時からは考えられない光景だ。
ネットかなにかで見たことある気がするけど、実際に見るのとはやはり大違いだ。
いやはや……この世界に来てから驚きの連続だ!……この世界?
「そういえば、この世界って何て名前なの?」
この世界に来た時に初めに知っておくべき情報を、今になって隣にいるエナに尋ねる。
「ルナティカルですよ」
「ルナティカルですか」
「シューイチさんのいた世界はなんて名前だったんですか?」
「世界というか惑星というか……まあ地球って名前だったけどね」
「チキュウ?」
「更に言うとその地球って惑星の日本って国に住んでた」
「二ホンですか……シューイチさんの話を聞いてるとこの世界とは全然違う場所なんですよね?一度見てみたいですね」
まあもう戻ることはないだろうけどね。
もしかしたらこの世界中をくまなく探せば、異世界を渡る方法の一つや二つはあるかもしれないが、そこまでして元の世界に戻りたいかと言われると答えはノーである。
「シューイチさんは武器を使ったことがないんですよね?それなら扱いの簡単そうなメイスとかダガー……ショートソードあたりはどうでしょうか?」
「どれどれ?」
エナが指さしたメイスを取ろうと手を伸ばし―――
「おもっっっっ!!!」
手に持った瞬間想像してなかった重さに、メイスを落っことしそうになったが、すんでのところで持ち直し危うく店の床に穴をあけるかもしれない事態を回避できた。
両手で持てばかろうじて持ち上がるが、これを振り回して戦えと言われても正直自信がない。
「あかん、これあかんわ」
「そっそうですか……じゃあこのショートソードは?」
なんとかメイスを元あった位置に戻し、今度は刃渡り30cmほどのショートソードを手に取る。
さっきのメイスよりは全然軽かったが、手に感じる重さは中々のものだった。
「ゲームとかだと当たり前のように振り回してるから知らなかったけど、武器って重たいんだな」
そういえば昔、田舎のじいちゃんちにあった模造刀を持たせてもらったことがあったが、あれも結構重かった気がする。
「私もよく考えたら杖くらいしか使ったことなかったです……」
「エナはどう見ても僧侶って格好だもんな」
「えっと……その剣は大丈夫そうですか?」
「さっきのメイスよりは全然使えそう」
片手で振り回すとすっぽ抜けそうなので、両手で持たないとダメっぽいが、まあなんとかなると思う。
「シューイチさんはまず力を鍛えるところから始めないといけないかもですね」
「お恥ずかしい限りです」
こんなことなら筋トレとかしておけばよかったとは思うものの、こんな事態に陥ることなど予想できるはずがないので致し方なし。
全裸になれば無敵になる能力だなんて、最初はアホみたいだが凄い力を手に入れてしまった!なんて思ったが、冷静に考えると使いにくいことこの上ない能力だよなぁ。
逆に言えば服着てたら無敵でもなんでもねーよ?ってことだもんな。
森の中でシエルと散々検証した結果わかったことだが、ほんの一部分でも身体を隠す物を纏っていると無敵能力が発動しないのだ。
シエルはこの力で英雄にでもなったらどうだ?みたいなこと言っていたが、逆にこの力でどうやって英雄になったらいいのか聞いてみたい。小一時間聞いてみたい。
「まあ力は追々鍛えていくとして……武器はこのショートソードでいいや」
「じゃあ次は防具で……ん?」
防具を探そうとしたエナの視線が、ある箇所で止まる。
「あの女の子……こんなところで何をしているんでしょうか?」
「女の子?」
俺もその視線を追うと、そこにはこの武器屋に不釣り合いな少女が、キョロキョロと店内を見回している光景だった。
随分と小さいな。ざっと見たところ身長は140にも満たない感じ。
首を回すたびに、赤いリボンで結ばれた青い髪の長いツインテールがゆらゆらと揺れている。
日本にいたころにはなかなかお目にかかれない長さのツインテールだ。
「武器でも探してるんじゃないのか?」
「あんな子供がですか?見たことろそんな感じではないんですけど」
「まあ気にしててもしょうがないし、俺らは俺らでやることやらないと」
「……そうですね」
ふとその少女と目が合った。
その目はまるで恐怖に怯えているような……助けを求めているようなもの。
だが少女は苦虫をかみつぶしたような表情で、俺から顔ごと目をそらす。
その様子に異様な雰囲気を感じつつも、俺は少女から視線を外し防具選びを始めるのだった。
「あんがとよー!」
武器屋のおっちゃんの声を受けながら、俺たちは店を出た。
結局買ったのは、刃渡り30cmほどのショートソードに、布製の丈夫な服、皮でできた胸当てにグローブにブーツ、そして布のマントだ。
総額478SRなり。結構ぎりぎりだったな。
「いっぱしの冒険者っぽくなりましたね!」
「村人Aからは卒業だな」
これでどこからどう見てもこの世界の冒険者だ。
自分のファンタジーじみた出で立ちを見ると、封印してたはずの中二心がくすぐられる。
「それじゃあギルドに行って、登録と承認試験を受けに行きましょうか」
「おうよ!サクッと終わらしてやるぜ!」
―――と意気込んだところで武器屋の中で感じていたのと同じ視線を感じる。
「……付いてきてるな?」
「……付いてきてますね?」
店の中でも散々感じていた視線だ、気が付かないわけがない。
ちらっと後ろをみると、案の定あの青い髪の少女が俺たちの後を付いてきていた。
思わず保護欲を掻き立てられるその弱々しい姿に、どうしたものかとエナとともに首を捻る。
「私たちになにか話でもあるんでしょうかね?」
「だったら話しかけに来てもいいはずだけどな」
「う~ん……?」
「しょうがない、このままだと気になって仕方ないし……」
俺は少女に振り返り―――
「なあ?俺たちになにか用な」
声をかけた瞬間、少女が背を向けて脱兎のごとく逃げ出した。
凄い速さだ……思わず感心する。
「逃げちゃいましたね?」
「俺ってもしかして怖い顔でもしてるのかな?」
「こわ……怖くはないですよ?」
え?何今の間?
結局それ以降少女の視線を感じることもなく、俺たちは目的地である冒険者ギルドへとやってきた。
店に掛けられた看板を見ると何やら文字が書いてあるが、当然のごとく読めない。
日本語は普通に通じてるのにおかしな話だと思いつつ、早急にこの世界の文字を覚えないといけないという現実に少し憂鬱になる。
あの神様見習いもわけのわからんアホみたいな能力じゃなくて、こういう日常で役に立つ能力をくれればよかったのに……てなことを考えていると脳内のシエルに「自業自得じゃないですか!」と突っ込まれた。
知らんがな。
建物に足を踏みいれ見回してみるが、俺が想像していたよりは冒険者の数は少ないみたいだった。
もっと沢山いるもんだと思っていたが、エナがいうにはここは田舎ということなので、それが理由なんだろうなと勝手に納得した。
「ようこそ冒険者ギルドへ!……あれ?エナさんじゃないっスか?また仕事を探しに来たんスか?」
「こんにちはリンカさん!今日は仕事じゃなくてギルド登録しに来ました」
そう言ってエナが俺を見ると、受付嬢もつられて俺を見る。
「ああ、彼氏っスか?」
「ちちちちちががちががちががちちががいます!!!!」
動揺しすぎだろ、ビビるわ!
「お約束の冗談にそこまで反応されると軽く引くっスね……」
「むしろこんな否定のされ方をされた俺のハートがずたずたになりそうなんだが……」
「ごほんっ!!えっと……今日はこの人のギルド登録をしにきたんです!」
仕切り直すかのように大きく咳ばらいをしたエナが、真っ赤になりながら本日の目的を受付嬢に告げた。
「了解っスよ!そんじゃそこのおにーさん!この登録用紙の必要事項にサインをよろしくっス!」
受付嬢とは思えない元気なねーちゃんだな。
そんなことを思いつつ登録用紙を受け取りペンを持った瞬間、早速躓いた。
「エナ……どうしよう」
「どうしました?」
「この世界の文字……読めないし書けないんだ」
一瞬間をおいてエナが「え?」と声を漏らした。
「まあまあ!この世界には文字の読み書きの出来ない人なんてごまんといるんですから、気にしなくて大丈夫ですよ!」
がっくりとうなだれながら椅子に座っていると、エナが必死に励ましてくる。
エナにサポートされながらようやく登録用紙を記入し終え、心身ともに憔悴しきった俺にエナの励ましがむなしく響く。
「もういいよ……文字も書けない俺なんてミジンコ当然だから……」
「なんでそこまで卑屈になってるんですか……?」
受付嬢曰く「ギルドに登録しに来る人で語学が堪能な人なんて年に10人もいないので気にする必要ないっスよ!」とのこと。
それって案に「冒険者はバカばかり」って言ってるのと大差ないよね?
まあ語学が堪能な奴が冒険者になるわけがないんだよな……それこそお城とかもっとお金もらえそうなところに勤めるだろうさ。
……そういえば登録用紙に記入してるときは気が付かなかったけど、エナって普通に読み書きできるんだよな?
「シューイチさーん!お待たせしまったっス!それじゃあ今から承認試験の説明をするっスよ!」
ふとした疑問が頭をよぎったが、受付嬢に呼ばれたので気を取り直して椅子から立ち上がった。
「まあ試験なんて大げさな言い方をしてるんスが、内容はなんてことのないお使いクエストっスよ!」
「それができないと冒険者どころか人として認めてもらえないってことなんですね?」
「だからなんでさっきからそんな卑屈になってるんですか?」
エナに呆れ顔で突っ込まれる。
「町の南口から出たところにちょとした草原があるんスけど、今からシューイチさんには2時間以内にそこへいってポーションの材料になる薬草を集めてきてもらうっス」
「草原で薬草集め?」
「そう!たったそれだけっス!同伴者に手伝ってもらうこともOKなんで、エナさんに手伝ってもらいながらのんびりと採集してくると良いっスよ」
受付嬢からポーションの材料が書かれた紙を受け取る。
相変わらず読めないが、今はエナがいるからさして問題にならないだろう。
よかった……これならミジンコの俺にもなんとかなりそうだ。
しかもエナに手伝ってもらってもいいだなんて……なんて優しい試験なんだ。
「それじゃあ今から試験開始ってことで時間計り始めるっスね……それでは試験開始!」
そんなこんなで俺のギルドに登録するための承認試験が始まったのだ。
「当たり前だけど、これだけ武器が並んでると圧巻だよなぁ」
おおよそ、日本にいた時からは考えられない光景だ。
ネットかなにかで見たことある気がするけど、実際に見るのとはやはり大違いだ。
いやはや……この世界に来てから驚きの連続だ!……この世界?
「そういえば、この世界って何て名前なの?」
この世界に来た時に初めに知っておくべき情報を、今になって隣にいるエナに尋ねる。
「ルナティカルですよ」
「ルナティカルですか」
「シューイチさんのいた世界はなんて名前だったんですか?」
「世界というか惑星というか……まあ地球って名前だったけどね」
「チキュウ?」
「更に言うとその地球って惑星の日本って国に住んでた」
「二ホンですか……シューイチさんの話を聞いてるとこの世界とは全然違う場所なんですよね?一度見てみたいですね」
まあもう戻ることはないだろうけどね。
もしかしたらこの世界中をくまなく探せば、異世界を渡る方法の一つや二つはあるかもしれないが、そこまでして元の世界に戻りたいかと言われると答えはノーである。
「シューイチさんは武器を使ったことがないんですよね?それなら扱いの簡単そうなメイスとかダガー……ショートソードあたりはどうでしょうか?」
「どれどれ?」
エナが指さしたメイスを取ろうと手を伸ばし―――
「おもっっっっ!!!」
手に持った瞬間想像してなかった重さに、メイスを落っことしそうになったが、すんでのところで持ち直し危うく店の床に穴をあけるかもしれない事態を回避できた。
両手で持てばかろうじて持ち上がるが、これを振り回して戦えと言われても正直自信がない。
「あかん、これあかんわ」
「そっそうですか……じゃあこのショートソードは?」
なんとかメイスを元あった位置に戻し、今度は刃渡り30cmほどのショートソードを手に取る。
さっきのメイスよりは全然軽かったが、手に感じる重さは中々のものだった。
「ゲームとかだと当たり前のように振り回してるから知らなかったけど、武器って重たいんだな」
そういえば昔、田舎のじいちゃんちにあった模造刀を持たせてもらったことがあったが、あれも結構重かった気がする。
「私もよく考えたら杖くらいしか使ったことなかったです……」
「エナはどう見ても僧侶って格好だもんな」
「えっと……その剣は大丈夫そうですか?」
「さっきのメイスよりは全然使えそう」
片手で振り回すとすっぽ抜けそうなので、両手で持たないとダメっぽいが、まあなんとかなると思う。
「シューイチさんはまず力を鍛えるところから始めないといけないかもですね」
「お恥ずかしい限りです」
こんなことなら筋トレとかしておけばよかったとは思うものの、こんな事態に陥ることなど予想できるはずがないので致し方なし。
全裸になれば無敵になる能力だなんて、最初はアホみたいだが凄い力を手に入れてしまった!なんて思ったが、冷静に考えると使いにくいことこの上ない能力だよなぁ。
逆に言えば服着てたら無敵でもなんでもねーよ?ってことだもんな。
森の中でシエルと散々検証した結果わかったことだが、ほんの一部分でも身体を隠す物を纏っていると無敵能力が発動しないのだ。
シエルはこの力で英雄にでもなったらどうだ?みたいなこと言っていたが、逆にこの力でどうやって英雄になったらいいのか聞いてみたい。小一時間聞いてみたい。
「まあ力は追々鍛えていくとして……武器はこのショートソードでいいや」
「じゃあ次は防具で……ん?」
防具を探そうとしたエナの視線が、ある箇所で止まる。
「あの女の子……こんなところで何をしているんでしょうか?」
「女の子?」
俺もその視線を追うと、そこにはこの武器屋に不釣り合いな少女が、キョロキョロと店内を見回している光景だった。
随分と小さいな。ざっと見たところ身長は140にも満たない感じ。
首を回すたびに、赤いリボンで結ばれた青い髪の長いツインテールがゆらゆらと揺れている。
日本にいたころにはなかなかお目にかかれない長さのツインテールだ。
「武器でも探してるんじゃないのか?」
「あんな子供がですか?見たことろそんな感じではないんですけど」
「まあ気にしててもしょうがないし、俺らは俺らでやることやらないと」
「……そうですね」
ふとその少女と目が合った。
その目はまるで恐怖に怯えているような……助けを求めているようなもの。
だが少女は苦虫をかみつぶしたような表情で、俺から顔ごと目をそらす。
その様子に異様な雰囲気を感じつつも、俺は少女から視線を外し防具選びを始めるのだった。
「あんがとよー!」
武器屋のおっちゃんの声を受けながら、俺たちは店を出た。
結局買ったのは、刃渡り30cmほどのショートソードに、布製の丈夫な服、皮でできた胸当てにグローブにブーツ、そして布のマントだ。
総額478SRなり。結構ぎりぎりだったな。
「いっぱしの冒険者っぽくなりましたね!」
「村人Aからは卒業だな」
これでどこからどう見てもこの世界の冒険者だ。
自分のファンタジーじみた出で立ちを見ると、封印してたはずの中二心がくすぐられる。
「それじゃあギルドに行って、登録と承認試験を受けに行きましょうか」
「おうよ!サクッと終わらしてやるぜ!」
―――と意気込んだところで武器屋の中で感じていたのと同じ視線を感じる。
「……付いてきてるな?」
「……付いてきてますね?」
店の中でも散々感じていた視線だ、気が付かないわけがない。
ちらっと後ろをみると、案の定あの青い髪の少女が俺たちの後を付いてきていた。
思わず保護欲を掻き立てられるその弱々しい姿に、どうしたものかとエナとともに首を捻る。
「私たちになにか話でもあるんでしょうかね?」
「だったら話しかけに来てもいいはずだけどな」
「う~ん……?」
「しょうがない、このままだと気になって仕方ないし……」
俺は少女に振り返り―――
「なあ?俺たちになにか用な」
声をかけた瞬間、少女が背を向けて脱兎のごとく逃げ出した。
凄い速さだ……思わず感心する。
「逃げちゃいましたね?」
「俺ってもしかして怖い顔でもしてるのかな?」
「こわ……怖くはないですよ?」
え?何今の間?
結局それ以降少女の視線を感じることもなく、俺たちは目的地である冒険者ギルドへとやってきた。
店に掛けられた看板を見ると何やら文字が書いてあるが、当然のごとく読めない。
日本語は普通に通じてるのにおかしな話だと思いつつ、早急にこの世界の文字を覚えないといけないという現実に少し憂鬱になる。
あの神様見習いもわけのわからんアホみたいな能力じゃなくて、こういう日常で役に立つ能力をくれればよかったのに……てなことを考えていると脳内のシエルに「自業自得じゃないですか!」と突っ込まれた。
知らんがな。
建物に足を踏みいれ見回してみるが、俺が想像していたよりは冒険者の数は少ないみたいだった。
もっと沢山いるもんだと思っていたが、エナがいうにはここは田舎ということなので、それが理由なんだろうなと勝手に納得した。
「ようこそ冒険者ギルドへ!……あれ?エナさんじゃないっスか?また仕事を探しに来たんスか?」
「こんにちはリンカさん!今日は仕事じゃなくてギルド登録しに来ました」
そう言ってエナが俺を見ると、受付嬢もつられて俺を見る。
「ああ、彼氏っスか?」
「ちちちちちががちががちががちちががいます!!!!」
動揺しすぎだろ、ビビるわ!
「お約束の冗談にそこまで反応されると軽く引くっスね……」
「むしろこんな否定のされ方をされた俺のハートがずたずたになりそうなんだが……」
「ごほんっ!!えっと……今日はこの人のギルド登録をしにきたんです!」
仕切り直すかのように大きく咳ばらいをしたエナが、真っ赤になりながら本日の目的を受付嬢に告げた。
「了解っスよ!そんじゃそこのおにーさん!この登録用紙の必要事項にサインをよろしくっス!」
受付嬢とは思えない元気なねーちゃんだな。
そんなことを思いつつ登録用紙を受け取りペンを持った瞬間、早速躓いた。
「エナ……どうしよう」
「どうしました?」
「この世界の文字……読めないし書けないんだ」
一瞬間をおいてエナが「え?」と声を漏らした。
「まあまあ!この世界には文字の読み書きの出来ない人なんてごまんといるんですから、気にしなくて大丈夫ですよ!」
がっくりとうなだれながら椅子に座っていると、エナが必死に励ましてくる。
エナにサポートされながらようやく登録用紙を記入し終え、心身ともに憔悴しきった俺にエナの励ましがむなしく響く。
「もういいよ……文字も書けない俺なんてミジンコ当然だから……」
「なんでそこまで卑屈になってるんですか……?」
受付嬢曰く「ギルドに登録しに来る人で語学が堪能な人なんて年に10人もいないので気にする必要ないっスよ!」とのこと。
それって案に「冒険者はバカばかり」って言ってるのと大差ないよね?
まあ語学が堪能な奴が冒険者になるわけがないんだよな……それこそお城とかもっとお金もらえそうなところに勤めるだろうさ。
……そういえば登録用紙に記入してるときは気が付かなかったけど、エナって普通に読み書きできるんだよな?
「シューイチさーん!お待たせしまったっス!それじゃあ今から承認試験の説明をするっスよ!」
ふとした疑問が頭をよぎったが、受付嬢に呼ばれたので気を取り直して椅子から立ち上がった。
「まあ試験なんて大げさな言い方をしてるんスが、内容はなんてことのないお使いクエストっスよ!」
「それができないと冒険者どころか人として認めてもらえないってことなんですね?」
「だからなんでさっきからそんな卑屈になってるんですか?」
エナに呆れ顔で突っ込まれる。
「町の南口から出たところにちょとした草原があるんスけど、今からシューイチさんには2時間以内にそこへいってポーションの材料になる薬草を集めてきてもらうっス」
「草原で薬草集め?」
「そう!たったそれだけっス!同伴者に手伝ってもらうこともOKなんで、エナさんに手伝ってもらいながらのんびりと採集してくると良いっスよ」
受付嬢からポーションの材料が書かれた紙を受け取る。
相変わらず読めないが、今はエナがいるからさして問題にならないだろう。
よかった……これならミジンコの俺にもなんとかなりそうだ。
しかもエナに手伝ってもらってもいいだなんて……なんて優しい試験なんだ。
「それじゃあ今から試験開始ってことで時間計り始めるっスね……それでは試験開始!」
そんなこんなで俺のギルドに登録するための承認試験が始まったのだ。
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