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しおりを挟む「サンドウィッチ、ツナと卵どっちがいい?あと牛乳にしたけど苦手じゃなかった?」
あれやこれやと凪都は志津希に世話を焼く。先に部屋に行ってろと言われて待っていたら凪都はわざわざ昼食を買ってきてくれた。志津希は黙って凪都の差し出す卵サンドとパックの牛乳を受け取る。
「よし、食べよう!机用意してくれたんだね。ありがとう、志津希。」
凪都は志津希の用意した机を見ながら笑う。明るい凪都が無理にそれを演じているようでなんだか違和感だった。だけど志津希からどういう話なのと聞く勇気もない。幽霊部屋は少し埃っぽくて窓を開けていた。運動部の声が遠くから聞こえてきて沈黙があまり怖くない。志津希が凪都をちらりとみると凪都も志津希を見ている。ばちっと目があった。
「やっぱり、気になる?」
凪都らしくない小さな声が響く。志津希は少し罪悪感が湧いてきた。こんなことになるなら稲瀬に質問なんかしなきゃよかった。
「…気にならないって言ったら嘘になる、けど凪都が言いたくないならいい。」
「志津希は優しいね。」
優しくなんかない。志津希は自分が可愛いだけだ。なるべくトラブルとは無縁でいたい。だから極力凪都と関わりたくないのも事実である。そんなこともう無理な気がしてならないけど。
「俺が寮生になれたのは伊勢山のおかげなんだ。」
伊勢山。凪都は昨日しつこいぐらい志津希に下の名前を呼ばせた。そのことがなにか関係あるんだろうか。志津希は黙ったまま凪都の話に耳を傾けていた。窓のほうを見る凪都はぼーっとしている。もともと茶色いであろう髪が光に透けて綺麗だった。
「俺の家は会社をやってて…昔から堅苦しい家なんだ。」
「会社?」
「そう、 SOUWAって言うんだけど…」
志津希は思わず牛乳を吹き出しそうになる。凪都の口から出た会社の名前は誰もが知っている大手家電メーカーだ。志津希は動揺で思わず手が震えそうだった。SOUWAってあのSOUWA?頭の中でSOUWAの文字が踊る。志津希の動揺を感じ取ったのか凪都は少し困ったように笑った。
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