野生児少女の生存日記

花見酒

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二章 学園少女と遺物

マルクール邸

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 学園から馬車に乗り、マルクール邸へ到着したローニャ達はマルクール婦人の後に続き邸の中へ案内された。四人は大きなテーブルの有る部屋に通される、部屋にはカーバッツ、ロザリア、その他複数の使用人が待っていた。四人が席に着くと婦人が話しを始めた。

「先ずわ改めて自己紹介を、私は【エステリーゼ・マルクール】、現マルクール家の当主よ。宜しくね。」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
「皆ごめんなさいね突然連れて来てしまって、皆の予定が空いてて良かったわ。」

 そう語る婦人に対し貴族との会話に慣れているマテリアが言葉を返す。

「いえ、こちらこそ、お招き頂きありがとう御座います。」
「突然の事で驚いたろう、事情は来る途中で聞いたと思うが、今日は君達にお礼をしたくてな、せっかくだからついでに食事も一緒にしようって事で来てもらったんだ。」
「はい、先程婦人から伺いました。四人とも一致でぜひご一緒させていただきますわ。でも何故お礼をしたいと?」
「ああ…それは…」
「以前貴女達がこの邸に来た時の事を覚えてる?」
「ええ、確かにちょっとした注意喚起に来ました。」
「その時の貴女達の予感は的中していた。貴女達が考えていた通り、事件の犯人は我が家に襲撃に来た、でもあの時私は忠告を無視してしまったの、あの時ちゃんと話を聞いていれば娘のロザリアも怪我をする事は無かったし、被害も最小限に出来ていたかもしれなかった。だから今回貴女達を招いたのは謝罪とお詫びをしたくてね、勿論忠告してくれたお礼も兼ねて。私があの時ちゃんと聞いていれば貴女達が巻き込まれることもなかったのに、本当にごめんなさい。」
「いえ!そんな…そもそもあの時は私達も殆ど予想の範囲でしたし、本当にマルクール家が狙われるなんて思っても見なかったので。」

 マテリアの言葉に三人はうんうんも頷いた。

「そうだとしても貴女達には何かお返しをしなきゃ気が済まないわ。」
「はぁ…」

 四人は顔を見合わせた。

「そういう事でしたら喜んで。」
「良かった!それじゃ先ず受け取ってほしい物があるの。」

 婦人の言葉に数人の使用人が一斉に動き出し袋やそれぞれ大きさの違う包を四人の前に置いた。

「お詫びとお礼の気持ちよ、気に入ってくれると良いけど。」

 四人は先ず袋を恐る恐る開けてみる。中にはかなりの額のお金が詰め込まれていた。具体的な金額は分からないが見ただけでも十万は超えている。それがそれぞれに渡されている、あまりの量に四人は驚愕した。

「こ、こ、こんなに!?いいい、良いんですか!?」
「勿論よ。さ、そっちの包も開けてみて?」

 婦人にそう言われ四人は包を開ける。その中身はアリスとローニャにはいくつかの宝石と宝石で出来たナイフ、マテリアには最高級のドレス。レーナには希少な鉱石を複数個。包まれていた。

「勝手ながらマーリンのやつに四人が喜びそうな物を聞いて用意した。ただローニャとアリスちゃんに関しては何が好きかわからなかったから宝石類を用意した。もし不満があれば言ってくれ欲しい物を用意しよう。」
「いいいい…いえ!そんな十分です!ね!ローニャちゃん!」
「うん、私もこれでいい、このナイフ綺麗だし。気に入った。」

 そう言ってローニャはシャンデリアの光を通して光るナイフを眺める。

「そうか?なら良かった、まぁもし要らなくなったら売る何なり好きに使ってくれ。」
「そんな売るなんて!勿体ない!一生大事にします!」
「ははは、喜んで貰えたなら良かった。」
「さて!次は食事ね!と言ってももう少し時間があるから自由にしてて、邸を見学してても良いわよ。…聞いてる?」
「あ、はい。」

 貰った物を嬉しそうに眺める四人はさっと姿勢を正した。

「皆どうする?見学したい人居る?」
「あ、じゃあ…」

 婦人の質問に対しローニャ以外の全員が手を上げた。

「わかったわ、それじゃあ付いて来て、案内するわ。」

 婦人が立ち上がりそれに三人が付いて行き、部屋を出ていった。
 そして婦人達が部屋を去った後ロザリアが残ったローニャに話しかけた。

「久しぶりだね、元気だった?」
「うん、元気だよ。」
「そっか、学園はもう慣れた?」
「まだ完全に慣れたとは言えないけど、友達も出来たし、嫌ではないかな。ロザリアはどうしてたの?長い事見かけなかったけど。」
「うん…事件があって安全の為に自宅待機してた。本当はもっと早く復帰する筈だったんだけど犯人が襲撃して来て、その時に大怪我言っちゃってね、休みが長引いちゃってたんだ。」
「そっか。」
「俺がもうちょっと早く帰ってればな。それにもっと警戒すべきだった。」
「それお母さんの前で言っちゃだめだよ?お母さん未だに気にしてるから。」
「分かってる。まぁ何だ、本当にありがとな。お前さん等のお陰で事件も解決出来たし、被害も最小限で済んだ。本当に感謝しか無い。」
「ふふん、もっと敬え。」
「お前そんなキャラだったけか?」
「言ってみただけ。…実のところ私にはあの行動が正しかったかどうかは分かんないな、実際学園長には怒られてるし。結果的に彼女が犯人だったけど、もし違ってたらって今でも少し悩む時がある。」
「そうか…まぁなんだ…あんま考え過ぎんな、どうあれ事件は解決したんだ。」
「…そうだね。」
「しっかしまあ俺もたるんじまったな。小娘一人どうのって大口叩いた癖に結局お前さん等に任せちまった。全く…情けねよえな。」
「でもギルマスが居たからどうにか出来たんだよ。そう気を落とさないで。」
「はぁ…子供に励まされるとは、俺ももっと精進しねぇとな。」
「二人共暗いよ!明るい話しよ!そう言えばこの間―」

 それから三人は食事の時間になるまで談笑した。

 その後時間を潰している間に食事の時間に成った。全員が席に着く。運ばれてくる料理はそれはそれは豪華で皆その時豪華さに感動していた。

「さ、皆食べて。遠慮はしなくていいからたぷっり楽しんでね。」

 四人は振る舞われる料理をじっくり味わいながら豪華な食事を楽しんだ。

 食事を終え、食休みがてら少し雑談をしていた時、シスター・イブとの戦闘に参加しなかった二人がシスター・イブが変異した事について質問を投げかけた。

「こんな時に聞くのはあれですが、あの時、シスターイブがあんな姿に成ったのって一体何故なんですが?」
「二人から聞いてないか?まぁ改めて説明するとあれは【堕天】と言う現象だ。まぁ詳しい話しは妻に任せよう。」
「そうねわかったわ。貴女達が見たと言う現象は私達【マルクール家】が、勇者である【アーサー・マルクール】から代々受け継いで来た、家宝である【天使の遺物】と呼ばれている物の一つ、【天使化の首飾り】によって発生する現象よ。私達はそれを【堕天】と呼んでる。原理は全く持って不明。何が引き金になってあんな怪物に成るのかもね。わかっているのは、あの首飾りが何かしらの条件を受けると所有者が怪物に変異してしまうという事。」
「今までその【堕天】を起こした人は居るんですか?」
「記録では二人ほど。一人は名前は分からないけど、その人は完全に正気を失って完全な怪物となった為に討伐されたそうよ。もう一人は私の先々代の当主の娘の一人が【堕天】を起こしたそうよ。でもその娘は正気を失わず、むしろその力を魔物討伐なんかに活用してたそうよ。」
「へぇ~、その人はどうなったんですか?」
「病気で亡くなったって。」
「そうですか。」
「私はあの首飾りの力を使った事が無いから確かな事は言えないけど、人を天使にする程の強大な力が有るからには、それ相応の代償がある、【堕天】は力を使った人間に対する代償なんだと思うわ。」
「思ったんですが、そもそも【天使の遺物】って何なんでしょうか?」
「私にもさっぱり。大昔の滅んだ技術による物のなのか、或いは自然が作り出しだ物なのか、もしくは、あの御伽話が事実に基づいた物なのか。それは私にはわからない、とにかく人間が気軽に扱って良い物では無いわね。」
「そうですか…すみません、もう一つ、その首飾りって勇者様から受け継いだって仰言いましたが、勇者様はどうやってそれを?」
「記録では何処かの骨董品店で買って奥様の贈り物にしようとしていたそうよ。」
「そんな簡単に?」
「五百年も前だからね、当時は遺物の存在は知られてなかったと思うわ、だからその価値も低くて、ただの首飾りでしかなかったのかも。」
「そうなんですか…ありがとうございます、教えていただいて。」
「いえ、また気になることがあったら聞いて。」
「はい。」

 エステリーゼ婦人の話が終わるとロザリアが口を開いた。

「話し終わった?じゃあ今度は明るい話しよ?皆の学園での面白い話し聞きたいな。」
「面白い話ですか…そうだな。」

 それから少しの間皆で談笑をし有意義な時間を過ごした。
 マルクール一家との団欒が終わり気付けば外はすっかり暗くなっていた。ローニャはマルクール婦人よ好意でその日は邸に泊めてもらう事なった。

 マルクール邸 客室

「このベッド凄いですわ!実家のベッドよりふかふかだわ!」
「ホントだね。」
「今度私の実家もこれにしてもらいましょ!」
「盛り上がってんな。俺には比較対象が家のクソカタベッドだからすげーとしか言いようねぇな。」
「私も寮のベッドか半分腐りかけの草寝具しか知らないな、ここまでふわふわなのは始めてみた。」
「後者のはどんなだよ。しっかし良い事するって、良い気分だな。大層な事してないけど。」
「そうだね~、何だっけ…なさけは…人の為ならず…だっけ?学園長が言ってた。良い事をすればその分自分に帰って来るんだって。」
「良い言葉ですわね。今後も誰かの為に成る事をしましょう。」
「余裕があればな。無理に人の為に生きてたらそれはそれで自滅しそうだ。」
「自分達の出来る範囲で頑張ろ。その前に学業だね。」
「う…考えたくないですわ、明日も授業あるし、楽しい時間は一瞬ですわね。」
「そうだな、ま、とりあえず寝ようぜ明日も授業有るんだし。」
「そだね、お休み。」

 灯りを消し四人は直ぐに眠りについた。

 リビングにてマルクール婦人とカーバッツが二人で紅茶を飲みながら会話をしているた。

「子供達は?」
「寝たみたいだ。」
「そ、前々からあなたが言ってた子、ずいぶん人に慣れたみたいね。」
「ああ、学園に入学させるのは正解だったみたいだな。」
「だけどやっぱり保護者が居ないのは流石に心配になるわ、まだ十代でしょ?しかもそれなりに名も知れ渡ってるし、誘拐とかされたりしないかしら。」
「あいつは勘が鋭い、人の良し悪しは直ぐ判るだろう。そこまで心配は要らないさ。」
「そお?なら良いけど。」
「最悪、マルクールうちがあいつの保護者になる事も出来るが、あいつがどう思うかだ。」
「人見知り…というか人嫌いなのよね。」
「ああ…ま、あくまで、もしもの話だ。あいつが今のままで良いならそれまでだ。そっとしておこう。」
「ええ…」
「あんま考え過ぎんな。あいつは絶対大丈夫だ。そもそも心配される程あいつは弱くない。魔獣だって倒せるんだ、俺等が思ってる最悪な事は起こらねーよ。多分な。」
「だと良いわね。」
「んじゃ俺はそろそろ寝る。お前もちゃんと寝とけよ、最近ずっと忙しくて疲れてるだろ。」
「ええ、分かってるわ。おやすみなさい。」
「おう。」

 カーバッツは紅茶を一気に飲み干しリビングを出た。婦人はカーバッツが部屋を出た後机に置いてあった読みかけの本を開き紅茶を飲みながら読み進めた。


 暗い森の中ローニャは一人で歩いている。木の枝や葉が空を覆い、月明かりすら届かずただ夜の暗闇だけが広がる。ローニャは暗闇に慣れた薄っすらとした視界で森の中を進み続ける。すると突然、『ホーホー』と動物の鳴き声が聞こえてくる。ローニャはその鳴き声に聞き怯え始める、不安げな表情で辺りを見渡すも、生き物の気配が無い。ローニャは恐怖の余りその場を逃げ出そうとした次の瞬間、ローニャの背後から大きな鳥がローニャに襲い掛かる。ローニャは鳥に押し倒された。ローニャは必死に藻掻もがいた、然し鳥の鋭い爪がローニャを強く掴み身動きが取れなくなる、それでも必死に抵抗し藻掻いた。必死の抵抗の末ローニャは鳥を振り払いその場を走り去ろうした瞬間、正面に回り込んだ鳥の鋭い爪がローニャの腹に突き刺さっり、そして鳥はローニャの腹の肉を抉り取りった。ローニャはその場に倒れ込んだ。そこへ鳥がローニャの上にの乗りローニャのはらわたを食い始めた。ローニャは少しの間藻掻き振り払おうとしたが、抵抗も虚しく腸を食い荒らされ息絶えた。
 その瞬間ローニャは目を覚まし、飛び起きた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 全身がから冷や汗を流し、荒い息を立てる。ふと窓を見ると外は明るかった。正確な時間は分からないが、まだ三人が起きていない事から七時には成ってはいないのだろう。最悪な夢を見て目覚めの悪い朝、流石に二度寝する気には成れずベッドから出て、部屋を出た。
 暇潰しの為適当に邸内を散歩していると広い庭を見てけ、ローニャは風に当たる為庭に出た。庭の端で大きく伸びをし、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。然しそれでも夢の光景が頭にこびり付いて離れない。ローニャは大きく溜息を吐いて再び伸びをし、深呼吸をした。
 そこへ偶々通り掛かったカーバッツが声を掛けて来た。

「よ、おはよう!」
「ギルマス…おはよう…」
「ずいぶん早いんだな。」
「何時もだよ…森に居た時にからね…でも今日は特に早いかな…。」
「どうした?ずいぶん元気無いな。寝起きだからか?」 
「いや~…嫌な夢見ちゃって…」
「あ~成る程。なら紅茶かコーヒーでも飲むか?少しは落ち着くぞ。」
「う~ん…遠慮しとく。」
「そうか…因みにどんな夢だったんだ?」
「う~ん…何ていうか…私が…鳥に食べられる夢。」
「鳥に?」
「うん…梟…嫌いなんだ…。」
「そういやそんな事言ってたような。ずいぶん不吉な夢だな。よく見るのか?」
「ううん…始めて。」
「始めてか…なら何かの予兆とか?」
「さぁ、あんまり考えたく無い。」
「と言うか、何でそんなに梟が嫌いなんだ?他にも怖いな生き物に襲われて来ただろう。」
「私にもよくわからないんだ、森に住み始めた時に熊に追い掛けられて死にそうになった事は何度もあったけど、三年の間に平気になったし、虫だって食べようと思えば食べれる。けど梟だけはどうにも…なんというか、拒絶反応みたいな感じで怖く見えちゃうんだ。」
「まぁ好き嫌いは誰にでもあるからどうこう言う気は無いが、だいぶ特殊だな。ま、トラウマがあるなら悪夢だって見るか。取り敢えず今は気を紛らわせるか。そうだな…お前この街に来て1年ちょっとか…街は楽しいか?もう慣れたか?」
「急だな…う~ん…そうだね、まだ街に有る物とかは把握しきれて無いけど、森よりは楽しいよ。友達も出来たし。」
「ソイツは良かった!」
「けど…」
「ん?」
「時々森の方が過ごしやすいって思う事がある。」
「そうなのか?」
「うん…」
「何か嫌な事でもあったのか?いや…色々あったか…」
「別に街が嫌いって訳じゃ無いよ…ただ…森では出来た事が街じゃ出来なかったり、飲食にお金が必要だったりで偶に街が窮屈に思える事があるんだ。」
「まぁ確かに森の中にゃ法律何てね~し、食いもんもタダで手に入るからな。そう考えると森の方が自由に生きられるだろうな。」
「街の暮らしは好きだけど、偶に森に帰らないと何だか疲れるんだ。まぁ私がまだ慣れてないだけなんだろうけど。」
「そんな悲観すんな。森に居たのが三年で街じゃ一年ちょっとだろ?慣れねぇのは仕方ない、ゆっくり慣れていけば良い、無理でも偶に里帰りして心を落ち着かせるのも良い。安心しろお前のそれは悪い事じゃない、寧ろ正常な感情だ。」
「そっか…ありがと…」

 少しの沈黙の後、カーバッツが口を開く。

「なあローニャ、いいか?」
「ん?」
「お前―」
「あ!ローニャちゃーん!朝食用意してくれたって!早く来て!」

 カーバッツが何かを言いかけた所で目を覚ましたアリスが二人に呼びかけた。

「あ、うん!ごめん歩きながら聞くよ。」
「あ~…いや…いいや。」
「え?あ…そ。」

 カーバッツは結局続きを話さず二人はダイニングへ向った。

 その後四人は朝食を食べ、支度をして学園へ向かう準備をし、邸の門の前に停めてある馬車に前に集まった。

「本当にありがとうございました。とても有意義な一日でした。」
「こちらこそありがとう、マテリアちゃんはご両親に宜しく伝えておいて。」
「はい、勿論。」
「それからローニャちゃん、これからも夫と娘と仲良くしてね。」
「はい…。」
「本当にありがとね。それじゃ勉強頑張ってね。」
「はいさようなら。」

 四人は深くお辞儀をして馬車に乗って学園へ向った。

 同日 朝六時頃
 何処かの森の中にラッシュ・ノートンが一人でやって来た。ラッシュは獣道の途中で足を止め、深呼吸する。そして次に手を前に出し掌を一本の木にかざす。するとその木は生きているかの様にウネウネと動き出し、形を変えていく。ラッシュは次に両手に力を込め始める、するとラッシュの周りにある木や雑草が先程と同様に動き始める。雑草は宙に浮きラッシュの周りを旋回し始める、木々は形を変え長く細い触手の様に成りラッシュの周りを囲む、そしてラッシュは掌を一羽の鳥に対って翳す、すると触手の様な木が高速で鳥に対って伸びて行き鳥を貫いた。

「ふぅ…前よりかは正確に扱えるな。でもこんな程度じゃあいつには到底追い付けない、もっと上手く扱わなきゃ。」

 ラッシュはポケットからあの夜渡された物を取り出す。

「…本当にこんな物で強くなれるのか?…はぁ…まあ良いや、あいつの言葉が嘘ならそれはそれで構わない、あいつとは関わらなければ良いだけだ。とにかく僕は今はもっと強くなる事に集中しよう。でも一先ず帰ろう、そろそろ登校しなきゃ。」

 ラッシュはポケットに“それ”を仕舞い、もと来た道を歩き出す、仕留めた鳥には目もくれず、落ち葉の様に鳥の死骸を踏み潰して行った。
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