野生児少女の生存日記

花見酒

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二章 学園少女と遺物

捜査開始

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 犯人探しを始めた翌日の放課後。四人は昨日の話に出てきた先輩に話しを聞く為医務室へやって来た。
 
「いらっしゃい、どうしたの?」
「あ、いえ怪我とかじゃなくて、マリナ先輩はいらっしゃいますか?」
「マリナさん?居るよ?ちょっと待ってね。」

 そう言って教員は近くで別の教員の手伝いをしていたメガネを掛けた女性に話し掛け一緒に戻って来た。

「どうかしたの?」
「あの、先輩に聞きたい事があって少しのお時間いいですか?」
「いいよ、取り敢えず廊下で話そうか。」

 皆が廊下に出てるとアリスは質問を切り出した。

「あの変な事を聞くんですが。先輩は最近やって来た聖女様一行の事知ってますか?」
「聖女様一行?知ってるよ。何で?」
「もし良ければ知ってる範囲で良いので、彼女達の事教えて頂ければなと。」
「何で?」
「いや…その…ちょっとした好奇心です。」
「ふ~ん…君達、もしかして最近起きた事件の調査の為とか言わないよね。」
「え!?いや…そういう訳じゃないです、ちょっとした好奇心ですよ。本当…」
「ふ~ん、まいいけど。私が知ってるのは三人の人物の事だけ。情報に関してはあの国じゃみんな知ってるような事だけだよ。」
「それでも良いので是非!」
「ん~じゃあまず今回のやって来た筆頭的な役割の【聖女フロラ】様から。私がまだ聖国に居た頃は、まだシスターだったけど、天才って言われる程かなり有名な人だよ。それからもう一人は【シスター・イブ】。この人はかなり…というか異常なまでに信仰心が強い人っていう印象かな。あと一人は【シスター・フェフレラ】彼女は何というかこう…真面目というか、固いというか。そんな印象かな。私が知ってるのはこの三人くらいかな。もう一人のシスターに関しては知らないな。」
「成る程、ありがとう御座います。それじゃあ…三人に関して他には知ってる事は無いですか?こう…その人の生い立ちとか。」
「生い立ちか…フロラ様は、元々孤児で道端で暮らしてたらしいけど。偶々通り掛かった神父様が見つけて引き取ったっていう話を聞いた事ある。シスター・イヴはご両親が殺害されて、その両親の死体の横で祈り続けてたらしい。凄い信仰心だなって初めて聞いた時思ったな。シスター・フェフレラは特に無いな。良くも悪くもあんまり目立たない人だからな。あ、でも一時期はシスター達のリーダ的な立ち位置で仕事してたっていうのは聞いた事あるな。まぁこのくらい、これ以上は無いな。」
「そうですか…ありがとうございました。いきなり変な質問してすみません。」
「別にいいよ。君達が何の目的で情報収集してるか知らないけど。変な事に首突っ込んじゃ駄目だよ。」
「はい…」
「それから、これは個人的な見解だけど。フロラ様とシスターイヴは犯人じゃないと思うな。」
「何故?」
「この二人は神様への信仰心が本当に強くて私が幼い頃、お祈りしようと教会に訪れた時にタイミングは違うけど。何時間もぶっ続けでお祈りしてる姿を見た事あるから。」
「そうなんですか。」
「ま、とにかくあんまり首突っ込んじゃ駄目だよ。」
「あ!それから聞きたいことがあるんですが。」
「何?」
「ローニャちゃん…この娘が教会で焦げた様な臭いがしたって言うんですか。何か知ってますか?」
「焦げた臭い?あ~、多分【清めのお香】じゃないかな?」
「清めのお香?」
「うん。教会内で焚いてるお香でそれの匂いや煙を少しの体に付けることで体を清める物たりする物だよ。まぁ効果があるかは知らないけど。」
「成る程。ありがとうございました。」
「それじゃあね。」

 四人は頭を下げお礼を言ってるその場を去った。

 マリナから有力そうな情報を得た四人はその情報を元に翌日に再び教会を訪れた。
 教会には信者が椅子に座って祈りを捧げていた。四人は椅子に座って信者が去るのを待ち、少しして三人の信者が立ち上がり教会を出たのを確認し、その信者を追い掛けた。四人は手分けして教会を出たのを者達に聞き込みを行った。

 アリス、マテリアは一人の老婆に話し掛けた。

「ごめんなさいお婆さん。少し良いですか?」
「なんだい?お嬢ちゃん。」
「少しお聞きしたい事があるのですが。良いですか?」
「良いよ。」
「ありがとうございます。ではお聞きしますが。最近教会に聖女様とシスターが来たと思うんですが。何か気になる事や不審なものを見たという事はないですか?」
「あぁ~そういえば来たね。気になる事ね。特に無いね。今まで通りお祈りして帰るだけだけだからね。」
「そうですか…ごめんなさい引き留めてしまって。ありがとうございます。」
「いいえ、何してるか知らないけど。頑張ってね。」
「はい。さようなら。」

 二人は老婆にお辞儀をし教会へ戻った。

 ローニャとレーナは一組のカップルに声を掛けた

「すみません、ちょっといいですか?」
「はい?」
「最近教会で聖女やシスターが不審な事をしていたのを目撃した、とか無いですか?」
「いや?別に?」
「私達偶にしか来ないし。別にいつも通りだったよ?」
「そうですか…すみません変な事聞いて。」
「別にいいよ、じゃあね。」
「ありがとうございました。」

 二人はカップルにお辞儀をし教会に戻った。

 四人は教会前に再び集まり情報共有を始める。

「こっちは特に無し。そっちは?」
「こっちもだ。まぁそんな簡単に目撃される程犯人も馬鹿じゃないだろうな。」
「そっか…流石に他の人も同じな気がするな。」
「二三人で諦めるのは早いと思うし、後何人かに聞いてみよう。」
「そうだね。」
「そうだ。騎士の人にも聞いて見ましょう。なにか知ってるかもしれませんわ。」
「そうだね。そうしよう。」
「あ、三人で聞いてきて。私は先に中に入っとく。なにか見つかるかも。」
「分かった」

 アリス、マテリア、レーナの三人は見張りをしていた騎士に話し掛けた。ローニャは教会の中に入っていった。

 ローニャは教会の最前列に座り。祭壇さいだん近くを観察する。しかしこれと言って何か見つかる事はなかった。
 少しして三人がローニャの隣に座る。騎士に聞き込みをしたところ、やはり何も無いとの事。四人は引き続き教会で座って待つ事にした。

 その後数時間き込み等を繰り返したが有力な目撃情報や証言しょうげんは無くただ時間だけが過ぎた。
 昼過ぎ頃座って待っていると、教会の奥から神父とその後に続いて聖女とシスターが現れた、祈りを始めた。四人は今度はそれを最後まで見ようと数時間椅子に座って祈りの様子を見届けた。

 二時間後、神父が祈りを終え、その場から去り、聖女達もその場から去った。四人は息を吐き、立ち上がり教会をさろうとした。そこでローニャがあるものに目を留めた。

「どうしたの?」
「床が濡れてる。」

 ローニャが目を留めたのは。絨毯の敷かれた床にぽつぽつとできた水のシミだった。

「それはさっきの神父様が聖女様とシスター達に振りかけてたやつだと思うよ。確か知ってる。確か…なんだっけ、【聖水】だったかな、それがどうしたの?」
「何か…やけにシミの数が多いところが…」
「確かに。まぁ結構飛び散るみたいだからそんな事もあるんじゃない。」
「まぁそっか…」

 ローニャは少し気がかりに思ったが気のせいだと思うようにし教会を後にした。
  
 その後四人は昼食を取りながら教会での情報を整理したが全く手掛かりは無く、やはり自分達では見つけられないのではとも考えたが、もう少し続ける事にした。

 昼食を済ませ、再び教会を訪れ、今度は教会の周りを調査してみようと教会をぐるっと回り込んだ時、教会の裏口の前に聖女とシスターが立っていた。四人は彼女らからも情報を得ようと話し掛けた。

「あの~…ごめんなさいもしかして聖女様ですか?」
「え?ええ。」
「やっぱり!突然ごめんなさい。休憩中ですか?」
「ええ。少し外の空気を吸いたくて。なにか御用ですか?」
「あ、いえ、偶々好奇心で来てみたら皆さん見えて、聖女様には一度お会いしてみたかったので。」
「そうですか。でも私達とはあまり会わない方が良いですよ。」
「例の事件のせいですね。」
「ええ。本当に悲しい事です。私達は神に仕え、祈りを捧げる者。あのような非人道的な行いなどする訳が無いのに。しかし時期が悪かった。国民が不安がるのは仕方無い事です。ですから私達は今は皆さんが私達が何もしていないとは信じてくれる様に辛抱するだけです。」
「とても心の広いかだなんですね。こんなにお優しい方あった事無いです。」
「褒めても何も出ませんよ。」
「その通りです。聖女様は誰よりも優しく、美しい方なのです。少なくともこの方が犯人なんて絶対に無いですから。」

 後ろに居た一人のシスターが得意げに語り、他のシスターがうんうんと首を縦に振る。そして一人のシスターが口を開いた。

「貴女達は学生さんですか?」
「あ!ごめんなさい、申し遅れました、私の名はアリスと言います。それから…」
「マテリア・コインズと申しますわ。」
「レーナです。」
「ローニャ…です…」
「宜しくお願いします。私は【フロラ・パッション】。ご存知の通り聖女をしています。まだ候補ですが。」
「私は【イブ】シスターイブと及びください。」
「ラチアです。私もシスターです。」
「私はフェフレラです。」

 彼女だけは少し怪訝な顔をしていた。

「宜しくお願いします。」

 それぞれが自己紹介を行い、世間話等の他愛のない話をした後アリスが事件について切り出した。

「あの~…こんな事聞くのはとても不謹慎で良く無いとは思うんですけど。皆さんは例の事件について何か知っていたりしませんか?」
「はぁ…そうですね、少なくとも私達は絶対に違うと言うしか無いですね。しかしお城の宝物庫に入れる人間はかなりの手練か、或いは入る事が不自然でない人間かのどちらか。確かに事件当日私とこちらのイブは城に居ました。しかし監視の目があったので有り得ません。なので少なくとも私達の中には居ませんね。」
「そうですか。すみません失礼なこと聞いて。」
「いいえ。私達はそろそろ戻らないと行けないのでこれで。皆さんも学業を頑張って下さいね。」
「はい。ありがとうございました。」

 お互いにお礼を言い去ろうとした時、ローニャが最後に質問を投げかけた。

「あの…最後に良いですか?」
「はい?」
「皆さんはさっきまでお祈りをしていたんですよね。」
「ええ、それが?」
「いえ、それが聞きたかっただけです。」
「?そうですか。では。」
「はいありがとうございます。」

 そうして聖女達は教会の中へ入っていった。

「ローニャちゃんどうしたの?突然。」
「いや…何でも無い、気にしないで。」
「そう…なら良いや。この後どうする?聞き込み続ける?」
「いや、俺そろそろ帰らないと。」
「そうなんだ…なら三人で、いや帰ろうか。」
「そうですね、明日また聞き込みをしましょう。」

 そうしてその日の調査は終了した。

 翌日
 この日も休日の為朝から街の人に目撃情報等の聞き込みを行った。しかし結果は昨日と同じだった。結局夕方頃まで何の成果も得られ無かった。そこで四人は再び教会の裏口を見に行った。そこには聖女は居らずシスターイブだけが立っていた。

「あ、イブさん。」
「おや?皆さんはまたお会いしましたね。」
「今日もここで休憩を?他の方は?」
「今日は私だけです。皆さん忙しいようで。」
「そうですか。」
「今日も何かを探してたのですか?」
「いえ何となくまた会えるかな~と。」
「そうですか。」

 そんな会話をしている時ローニャが険しい顔で質問をした。

「あの、貴女は時間的にさっきまでお祈りをしてたんですよね。」
「ええそうですよ。」
「体を洗ったりしました?」
「いいえ、体を洗うのはもう少ししてからですね。」
「そう…ですか…。すみません失礼なこと聞いて、気にしないでください。」
「?そうですか。」
「あ~、私達はこれで失礼しますね。お仕事がんばってください。それでは。」

 四人はそそくさとその場を去った。

「ローニャちゃん何さっきの質問。」

 アリスがそう質問を投げかけくるがローニャは難しい顔をして俯いている。

「ローニャ?ローニャ!」
「え?何?」
「さっきからどうしたの?。」
「いや…何でも無い。気にしないで。」
「え~教えてよ。」
「いや…本当になんでも無いから。」
「隠し事するのは良いが、悩み事があるならすぐ言えよ。」
「大丈夫、ありがとう。」
「そう?じゃあこれ以上聞かないけど、本当に悩み事があったらいつでも相談に乗るからね。」
「んじゃ今日はここまでにしようぜ。」
「そうだね。明日はどうする?レーナちゃんは都合は悪い?」
「あ~そうだな。明日は三人でやっててくれ。」
「わかった。じゃあレーナちゃんまた明日ね。」

 その日の調査はそれで終了した。
 寮へ戻り部屋へ向かっている時。何処からか鳥の羽ばたく様な音が聞こえて来た。その音の主は目の前の塀の上に止まった。

「やあ君達。頑張ってるみたいだね。」
「ホッホさん。どうしたの?」
「いやね。学園うちの生徒が何やら色んな人に事件について質問してまわってるって噂を聞いてね。それが君達であると知ったから、一応声を掛けておこうと思って。」
「あ…え~と…それは…」
「別にあいつに告げ口したりしないよ。無理に止めたりもしない。ただ一応の忠告として。事件について嗅ぎ回るのは程々にね。何か起こってからでは遅いからね。」
「はい…」
「それじゃ私は戻るよ。忠告したからね。」

 フクロウはそう言って飛び去って行った。三人は顔を見合わせて溜息を付いて部屋へ戻った。

 翌日
 三人は放課後に再び教会を訪れた。三人が教会内に入ろうと近付いた時、教会の扉からシスターフェフレラが現れた。

「あなた達また来たのですか?」
「あ、こんにちは。」
「こんにちは。じゃなくて、あなた達昨日もお祈りをするわけじゃないのに来ているでしょ?ここは神様に祈りを捧げる場なの。あまり不必要に出入りするのは感心しないわ。」
「あ…その…ごめんなさい。」
「好奇心旺盛なのは結構だけど。以後自重するように。」
「はい…」

 シスターは三人にそう言って監視役と思われる騎士をと共に何処かへ去っていった。

「彼女の言葉は一理ありますね。今日はやめておきましょうか。」
「そうだね。捜査は週に数回にしておこう。」
「…してたな…」

 ローニャはシスターが向かった方を向いてそう呟いた。

「何か言いました?」
「え?ううん何も。」
「そっか…じゃあ帰ろうか。」

 三人はその日は結局帰ることにした。

 「全く、最近の子供は教会を遊び場か何かと勘違いしているのかしら。」
 
 シスターフェフレラが商店街を歩きながらそう愚痴を溢す。

「まぁまぁ、元気でいいじゃないですか。」
「そうだけれど。」
「そんなにカッカしないでください。ほら着きましたよ。それにしてもシスターなのに“宝石集めが趣味”なんて結構珍しいですね。」
「私にだって趣味の一つや2つくらい有ります。」
「そうですか。」

 そんな雑談をしながら二人は宝石店へと入った。

 数日後 休日
 ローニャが久しぶりの依頼を終え帰路についていた際、無意識に教会の前を来ていた。

「あれ…道間違えた。どっから行くんだっけ。…レーナに頼も。」

 独り言を吐いて引き返そうとした時。教会から人が出てきたのが見えた。信者だと思って気にせずにいようとしたがふと気になって出てきた人の方を見た。教会から出てきたのは聖女とシスターイブ、それと監視役の騎士の三名だった。
 ローニャがその三人の事を見ていると聖女がローニャに気付き近付いて来た。

「お久しぶりですね。え~と…確かお名前は…」
「ローニャです…」
「そう!以前お会いしましたよね。あれから御変り無いですか?」
「はい…特に変わった事は…」
「そうですか。」
「貴女はこれから何処かへ?」
「ええ。少し二人と散歩に。」
「大丈夫なんですか?誰かに狙われたりとか。」
「今までも何度も出かけていますし。何より騎士様が付いて来てくださるので大丈夫だと思いますよ?」
「はぁ…まぁ…それなら良いですけど。」

 そんな会話の中、ローニャはある事に気付く。

 (この人はするな)

 心のなかでそう呟いた。

「ローニャさん?どうかしました?」
「え?いえ、何でも無いです、お気おつけて。」
「はいではご機嫌よう。」

 そう言ってお辞儀をし三人は去る。

「あれ?」

 三人の去り際に違和感を感じ首をかしげるも、考えすぎだと思いローニャは帰った。

 ローニャと別れたあと聖女とシスターイブは少し他愛のない話をしながら街を歩く。子供の元気な声が聞こえてくる。

「僕の家にはすっごいお宝があるんだぞ!」
「はいはいま~たお金持ち自慢かよ。」
「馬鹿にしてるんか!?」
「じゃあ今日見せてみろよ!」
「いいぜ!驚いたら負けな!」

 子供たちは元気に走って行った。

「元気な子供を見ると、私も何だか元気になれますね。」
「そうですね。この街の活気は私達の故郷に引けをを取らないくらい素晴らしいです。」
「ふふ、そうですね。」
「お二人共、時間は限られておりますので。参りましょう。」
「ええ、さ、行きましょう。」
「はい聖女様。」

 二人はその後も散歩を続けた。

 その日の夜

「アリス、ローニャさん、明日捜査を再開しませんか?やっぱりもやもやして仕方ないんです。」
「私は良いよ、むしろ賛成、少し確かめたい事があるから。」
「…やっぱりローニャちゃん、何か気付いてるよね?」
「え?いや、少し引っかかる事があるだけ。」
「それって?」
「う~ん…今は言わない。」
「どうして?」
「言ったらそれだけに意識が行って、他の手掛かりが見つけられないかもしれないから。二人は他を探してみて欲しい。私は私でやっとくから。確証が持てたら言うよ。」
「そう…わかった。じゃあ、明日ね。おやすみ。」
「おやすみ」
「おやすみ」

 部屋の明かりを消し三人は眠りについた。

 翌日 昼頃
 街の人に目撃情報の聞き込みをした後、三人で教会を訪れた。

「なんか今日騎士の数少ないね。」
「確かに、前は五人くらいいらしてたのに。」

 以前は五人以上は居たはずの騎士が今は三人以下になっていた。

「騎士も忙しいんでしょ。」
「それもそうですね。そんな事より行きましょう。」

 少しだけ違和感を持ったものの特に考える事無く三人は教会に入った。

 教会内はこの時間は丁度聖女達が祈りを捧げる時間だった。
 今回は怪しまれぬよう、しっかりと手を合わせたお祈りをしてみる。ローニャが率先して最前列の席に座り、三人が座って目を閉じお祈りをする。そんな二人とは違いローニャは手を合わせ目をつむるふりをしながら祭壇前に居る聖女とシスターを観ていた。

 聖女達が祈りを終え去った後、座ったまま少し周りを見渡し観察する。その中でローニャは祭壇前のポツポツと濡れた床を眺めていた。

「やっぱり…いや…でも…偶々の可能も…」

 ブツブツと何かを呟く。そして三人は教会から出た。

「何もなかったですわね。」
「そうだね、ローニャちゃんは何か気付いた?」
「う~ん…どうだろう。あくまで、かも知れないだけど。」
「それでも良いから教えて。」
「えっと~」

 ローニャが言い出そうとした時だった。

「ちょっと待ってください、なんか騒がしくないです?」

 とマテリアが指をさす方向を見る。その方向では大勢の人が往左往している。気になった三人は騒ぎの元へと向かった。
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