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一章 森の少女と獣
迷宮の守護者
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「構えろ!」
マルスの声と同時にスケルトンが一行に向かって走り出す、スケルトンがその巨大な剣を振り下ろし地面へ叩きつける。全員が攻撃を躱し反撃に出る。
「《ウィンドカッター》!」
「《サンダーショット》!」
カロンとクレアがスケルトンに魔法を浴びせ、レックスが切り掛かる、が小さな傷が付く位でびくともしない、畳み掛ける様に青年とルークがスケルトンに攻撃を仕掛ける。
鈍い音を立て、青年の槍が連続でスケルトンの足に当たる、しかしそれほど効いておらず、スケルトンは青年に向かって剣を振り払う、青年が回避をして距離を取る、その瞬間スケルトンの後ろからリックがスケルトンに駆け上り、首の骨をダガーで切り刻む。『ガガガ』と硬い音がしたが、あまり効果が無く切り傷が残るだけだった
「クソ!硬てー!」
スケルトンがリックに気を取られているうちにローニャがスケルトンの足に剣を振る。しかしローニャの剣ですら亀裂が入る程度で決定打にならない。スケルトンが二人を振り解こうとすると、スケルトンに蔓が絡みつく、動けなくなった瞬間、全員で畳み掛ける。
数秒攻撃を続け、ある程度ダメージが入ると、突然スケルトンが『グオオォ!』と咆哮を上げる、そして蔓を引き千切り剣を振り上げる。振り上げたと同時に剣が炎を纏い、そしてスケルトンはその剣を地面へ叩きつけた。
轟音を立て熱風と共に砂煙を上げ視界を奪う。
「《ウィンド》!」
カロンが風魔法で煙を払い除け視界を晴らす、その瞬間スケルトが案内役の胴体を切った。
「ぐえぁ!」
案内役の体が飛び散り、全員が驚愕する
「全員一旦距離を取れ!」
マルスが全員に指示を出した瞬間、ローニャが走り出した。
「待て!無茶するな!」
ローニャは味方が殺された事に怒っており、聞こえていない。真っ直ぐとスケルトに走って行き、スケルトはローニャに向かって剣を振り下ろす。振り下ろされる剣を躱し、その一瞬で自身の強化を強める。
(《筋力強化・極》!)
頭の中でそう唱えると地面に突き刺さった剣を蹴り飛ばした。スケルトンは吹き飛ばされる剣に引っ張られ体勢を崩す。その瞬間を逃さず、スケルトンの左足に向かって剣を振る。スケルトンの足は粉砕され吹き飛んだ。スケルトンは更に体勢を崩すが、膝ともう片方の足で体を支えて、ローニャを掴もうと手を伸ばす。その手を躱し距離を取るとスケルトンは剣を振る。
(《身体加速・極》、《反応速度上昇・極》!)
更に強化を重ね、剣を躱すと、消えるような速さでスケルトンとの間合いを詰め、剣を持っている右腕を切り落とす。しかしスケルトンは痛みを感じない。腕を切り落とされると同時にローニャに手をの伸ばし、掴もうとする。ローニャはそれに反応し躱そうとした時、スケルトンの手に蔓が絡みつき動きを止める。しかしそれに対応してスケルトンは大きく口を開き、口の中に炎を溜める、そこにレックスが魔法を放った
「《フレイムショット》!」
スケルトンの口は爆発し顎が外れる。怯んだ瞬間、ローニャが高く飛び上がり、縦に一回転してスケルトンの頭を叩き切る。
「うおりゃー!」
ローニャの剣でスケルトンの頭は真っ二つになり地面へ転げ落ちる。そしてスケルトンは動かなくなり、そのまま魔石を残して消滅した。
スケルトンを倒して数秒の静寂の後、レックスが歓声を上げた。
「や…やったー!」
その声を皮切りに全員が喜びの声を上げる。各々が抱き合うなどして喜ぶ合う、その隅でローニャは地面に膝を着き息を整える。そこにカロンが声を掛けて来た。
「大丈夫ですか?何処か怪我しましたか?」
「大丈夫…はぁ…魔法に反動で…疲れただけ…はぁはぁ…すぐ治る…」
ゆっくりと息を整えてすぐに落ち着いた。すると数人がローニャに駆け寄りローニャに労いと賞賛の言葉をかけた。
〈【ダンジョンガーディアン】ダンジョンの最新部を守るいわばボスモンスター。姿形はダンジョンによって違うがそのどれもが【A】ランク以上にも匹敵する力があり、並大抵の者はほぼ瞬殺される程の強さがある。そしてその【ダンジョンガーディアン】もまた【ラビリンス】が創り出した【ゴーレム】である。〉
休憩中マルスがローニャに話しかける。
「ローニャちゃん。さっきの動きは何だったんだ?」
「身体強化を無理やり引き上げたもの…あんまり使い過ぎると体に負担がかかる…」
「成る程…それであんな動きを…なんとなくは理解した、けどあんまり使い過ぎないように、今回は仕方ないとして、今後はよっぽどの事が無い限りは控えた方がいい」
ローニャは静かに頷いた。
その後、数分休憩し、遺体を追悼した後、部屋の奥の階段を降りて五層へ降りた。五層は特に何も無く、少し歩くとすぐに扉に辿り着いた。マルスは全員を確認すると、扉を開ける。扉の先には先程同様の広い空間と謎の結晶が部屋の奥に浮いていた。
扉を開けて部屋の前でマルスは動こうとしない、それに痺れを切らした青年が部屋に入ろうとする。
「おい、何止まってんだよ。さっさと入ろうぜ!」
と言い、皆を押し除けて部屋に足を踏み入れると、結晶が一瞬光を放つ。
「待て!」
マルスが咄嗟に青年を引っ張ると、青年の顔を光が掠めた。
「な!なんだ今の!?」
「君知らないのか?」
「なんか通ったね…」
「ああ…あの部屋の奥に有るクリスタル…あれが【ラビリンス】だ。あいつは部屋に何かが入って来た瞬間。無差別に光線を放って迎撃してくる。だから防御を張りながらじゃないと入れないんだ」
「なんだよそれ!早く言えよ!」
「ごめん…知ってると思って…とにかく、先ずは作戦を立てよう」
その後全員で話し合い、確実に倒せるように作戦を立てた。その際ローニャと少年は後ろで待機と成り、レックスは流れ弾から二人を守る事になった。
扉の前に立ち臨戦態勢になる。
「作戦開始!」
マルスの合図でルークが剣を構えながら前進する、ラビリンスがルークに集中攻撃を仕掛ける。光線を剣で受け止め注意を引く。その隙にマルスとリックがルークの後ろから出て、柱を盾にしながら回り込む。ラビリンスが狙いを近付いてくるマルスとリックに変える、その隙にルークが近付き、またラビリンスが狙いを変える、それを繰り返しながら、少しづつ近付いて行く。
ラビリンスが全方位に光線を放つ無差別砲を放つ。無差別砲で魔法を撃ち落とせ無くなると、魔術師二人が魔法で本体を狙う。魔法が当たりそうになると、ラビリンスは砲撃を止め、外装で本体を覆い、防御する。そうすることで、砲撃を一時的に停止させられる。その隙を逃さずマルス達が一気に距離を詰める。外装が開き瞬時に光線を放つ。目の前に居たルークだけに集中放火している間にマルスとリックが距離を詰め、そして力いっぱい剣を振り下ろす。
「はあぁー!」
二人の剣はラビリンスの本体に直撃し、ヒビが入る。ラビリンスはガタガタ振動し、光を放ち、そして弾け飛んだ。そうして見事ラビリンスは討伐された。
全員が喜びの声を上げ互いを褒め合う、一頻り喜びを分かち合った後、マルスが全員に号令を掛ける。
「ラビリンスは討伐された、ラビリンスの破片を回収次第、直ぐに撤収しよう!」
「了解!」
その後砕け散ったラビリンスの欠片を回収し終え、ダンジョンを脱出した。
ダンジョン脱出前
「ラビリンスのカケラって何に使うの?」
「ん?ああ…ラビリンスは魔石の塊みたいな物でね、魔力が沢山籠ってるんだ。スケルトンを倒すと魔石が出ただろう、あれはラビリンスの欠片なんだ。魔物を生み出すくらいの魔力だから、それなりに使い道が有る。人によっては喉から手が出るほどだ。使い道は…ゴーレムを作る際に核に使うとかかな。」
「そうなんだ…」
そんな話をしてダンジョンの出口に辿り着く、その後出口付近で青年に声を掛けられる。
「おい…ガキ!」
ローニャはその声に振り返る。
「お前…名前は?」
「…ローニャ…」
「そうか…俺は【ゼクト】だ…お前の名前覚えておいてやる」
そう言い残してゼクトは洞窟を出た。
「…?」
ローニャは首を傾げてあまり深く考えずに、そのままダンジョンを出た。
ダンジョンを脱出し馬車に乗り、帰路に着いた。馬車内でローニャが外を眺めていると少年が声をかけて来た。
「君…名前は何と言うんだ?一応覚えておいてやる」
「え…?…ローニャ…」
突然の事で驚きながら名乗る。
「僕は【ラッシュ・ノートン】だ覚えておけ!」
「あ…うん…」
「言っておくが僕は君なんか認めないからな!幾ら強くても君が僕より強いなんて有り得ないんだからな!」
「え…?あ…そう…」
「く…!ふん!」
「まあまあ…ちょっと落ち着いて…」
とクレアが割って入った。しかし
「おばさんには関係ありません!引っ込んでて下さい!」
「は?お姉さんでしょ!」
その後、馬車内がカオスな状態で街に向かって進み続けた。
数日後、街に到着し全員解散した。遺体は家族の元に送られた。その後数日は疲れを癒す為、クエストは受けず宿でダラダラと過ごしていた。しかし、どういうわけかラッシュに会うと、ラッシュは悪態を付いて来る。いい加減鬱陶しくなっていたローニャは、ギルドに行きロザリアに報告した。
「ロザリア…あいつ何とかして…」
「あいつ?ああラッシュくんの事?」
「あいつ…会う度に文句を言ってくる…さっきも言われたし…いい加減にしてほしい…」
「文句?ああ…あの子プライド高いからな~…そもそもあの子、この時間学園に居ないといけないはずなんだけどな…もしかしてサボり?ちょっと待ってね?ラッシュくーん」
とロザリアは突然ラッシュを呼んだ。ラッシュはその声に気付き、近寄って来る。側に来た途端また悪態をついて来る。
「何ですか?突然呼び出して。まさか君、大人に泣きついたんですか?全く子供ですね。困るんですよね僕は暇じゃ無いんです。一刻よ早く強くならないといけないので。」
饒舌に成り、喋り続けるラッシュにロザリアが笑顔で話掛ける。
「そんな事よりラッシュくん。君今日学園休みじゃ無いでしょ?良いのかな?こんな所でサボりなんかして。もしお母様に知られたら…」
とロザリアが言い放つとラッシュが突然動揺し始めた。
「な!そ…それは…その…今日は帰るとしましょう!お母さんには言わないで下さいね!」
ラッシュそう言い残してギルドを去って行った。
「多分これで大丈夫だと思うからいつも通りの生活を送れるよ」
「あ…うん…」
ローニャは状況を理解しきれずにいたが、あまり深くは考えないようにすることにした。
問題が一旦解決した所でロザリアがローニャに話し掛ける。
「さてと…どうする?クエスト受ける?」
「そうだ…これ」
とロザリアに依頼書を渡す。
「薬草採取?しかもすぐ近くの森だし、ほんとに良いのこれで?」
「うん…人の居ない所で息抜きしたい…」
と遠い目で言う。
「ああ…そっか…分かった…」
そう言ってロザリアは依頼を受理した。
依頼を受け、街から出る。目的地は街から三時間程の場所にある森に生える薬草を採取する事。ローニャは息抜きついでにその場所に向う。
珍しく馬車を使って目的地に向かった。目的地に着き、森に入って行く。そして目的の薬草を採取し鞄に詰める、その後二時間程森の中を散歩した。
森の散歩に満足して帰路に着く。その途中、歩いていると、猛スピードで走る馬車を見つけた。立ち止まってよく見てみると、どうやら馬が暴走しているようだった。見てしまっては放っては置けない、仕方無く助ける事にした。
ローニャはある程度近い場所に立ち、馬車を狙うように剣を構える、狙いを澄まし、剣を思い切り投げる。剣は馬の前ギリギリに突き刺さる。馬はそれに驚き、コントロールを失い転倒した。ローニャは馬車に近寄り、助けに向かった。
馬車の元に着くと見知った顔の御者が居た。
「あ…あの時の…」
ローニャの声に気付き、御者がローニャの方を向く。
「ん?お…おお!あん時の嬢ちゃん!久しぶりだな!何してんだ此処で!」
「依頼で…後、馬が暴れてたのが見えたから。」
「お?って事は…馬を止めてくれたのは嬢ちゃんか!いやー助かったよ!」
御者がローニャの肩を叩く。
「それより馬は大丈夫?」
「ん?ああ…ちょっと疲れてるみてーだが、幸い怪我は無かった。嬢ちゃんの腕が良かったのかもな!」
「いや…腕は関係無い…それよりなんで急に暴れ出したの?」
ローニャがそう質問すると御者は不思議そうにしていた。
「いやーそれが俺にも分かんねーんだよ…今まで普通に走ってたのに、急に暴れ出したんだ…」
(そういえば)
ローニャは御者が言った言葉にふと思い出した。森を散歩している時に一瞬感じた【何か】の気配を。ローニャはもしかしてと思ったが、御者が言っても分からないと言われるだけだと思い、敢えて言わなかった。
その後は御者に馬車を使うかと聞かれた為使う事にし、馬が回復した後馬車に乗って再び帰路に着いた。
帰路の途中、御者がこんな事を聞いて来た。
「なぁ嬢ちゃん、【聖国】の話し知ってるか?」
「?…知らない…せい国?」
「そっからか~…まあ神様を強く信仰してる国でな、其処で事件があったって話だ。なんでも【大聖堂】の宝物庫が誰かに荒らされたらしい。んで、居合わせた騎士が殺されたって話だ。」
「ふ~ん…知らない…」
素っ気ない返事をして適当に流す。
「まあ嬢ちゃんには関係無い話か。でも、一応注意しとけよ。」
「…そうする」
御者とそんな会話をし、少しして街に帰って来た。
「おいっと、着いたぜ。」
馬車を降り御者にお金を渡す。
「いや、いらねーよ。助けてくれた礼だタダで良いよ。」
「いや…流石に二回目は払うよ…」
「いいって気にすんな!」
「いや…でも…」
そんな譲り合いをし、結局ローニャは御者に金を無理やり支払い、別れを言い、ギルドに戻り依頼達成を報告した後、宿に帰った。
マルスの声と同時にスケルトンが一行に向かって走り出す、スケルトンがその巨大な剣を振り下ろし地面へ叩きつける。全員が攻撃を躱し反撃に出る。
「《ウィンドカッター》!」
「《サンダーショット》!」
カロンとクレアがスケルトンに魔法を浴びせ、レックスが切り掛かる、が小さな傷が付く位でびくともしない、畳み掛ける様に青年とルークがスケルトンに攻撃を仕掛ける。
鈍い音を立て、青年の槍が連続でスケルトンの足に当たる、しかしそれほど効いておらず、スケルトンは青年に向かって剣を振り払う、青年が回避をして距離を取る、その瞬間スケルトンの後ろからリックがスケルトンに駆け上り、首の骨をダガーで切り刻む。『ガガガ』と硬い音がしたが、あまり効果が無く切り傷が残るだけだった
「クソ!硬てー!」
スケルトンがリックに気を取られているうちにローニャがスケルトンの足に剣を振る。しかしローニャの剣ですら亀裂が入る程度で決定打にならない。スケルトンが二人を振り解こうとすると、スケルトンに蔓が絡みつく、動けなくなった瞬間、全員で畳み掛ける。
数秒攻撃を続け、ある程度ダメージが入ると、突然スケルトンが『グオオォ!』と咆哮を上げる、そして蔓を引き千切り剣を振り上げる。振り上げたと同時に剣が炎を纏い、そしてスケルトンはその剣を地面へ叩きつけた。
轟音を立て熱風と共に砂煙を上げ視界を奪う。
「《ウィンド》!」
カロンが風魔法で煙を払い除け視界を晴らす、その瞬間スケルトが案内役の胴体を切った。
「ぐえぁ!」
案内役の体が飛び散り、全員が驚愕する
「全員一旦距離を取れ!」
マルスが全員に指示を出した瞬間、ローニャが走り出した。
「待て!無茶するな!」
ローニャは味方が殺された事に怒っており、聞こえていない。真っ直ぐとスケルトに走って行き、スケルトはローニャに向かって剣を振り下ろす。振り下ろされる剣を躱し、その一瞬で自身の強化を強める。
(《筋力強化・極》!)
頭の中でそう唱えると地面に突き刺さった剣を蹴り飛ばした。スケルトンは吹き飛ばされる剣に引っ張られ体勢を崩す。その瞬間を逃さず、スケルトンの左足に向かって剣を振る。スケルトンの足は粉砕され吹き飛んだ。スケルトンは更に体勢を崩すが、膝ともう片方の足で体を支えて、ローニャを掴もうと手を伸ばす。その手を躱し距離を取るとスケルトンは剣を振る。
(《身体加速・極》、《反応速度上昇・極》!)
更に強化を重ね、剣を躱すと、消えるような速さでスケルトンとの間合いを詰め、剣を持っている右腕を切り落とす。しかしスケルトンは痛みを感じない。腕を切り落とされると同時にローニャに手をの伸ばし、掴もうとする。ローニャはそれに反応し躱そうとした時、スケルトンの手に蔓が絡みつき動きを止める。しかしそれに対応してスケルトンは大きく口を開き、口の中に炎を溜める、そこにレックスが魔法を放った
「《フレイムショット》!」
スケルトンの口は爆発し顎が外れる。怯んだ瞬間、ローニャが高く飛び上がり、縦に一回転してスケルトンの頭を叩き切る。
「うおりゃー!」
ローニャの剣でスケルトンの頭は真っ二つになり地面へ転げ落ちる。そしてスケルトンは動かなくなり、そのまま魔石を残して消滅した。
スケルトンを倒して数秒の静寂の後、レックスが歓声を上げた。
「や…やったー!」
その声を皮切りに全員が喜びの声を上げる。各々が抱き合うなどして喜ぶ合う、その隅でローニャは地面に膝を着き息を整える。そこにカロンが声を掛けて来た。
「大丈夫ですか?何処か怪我しましたか?」
「大丈夫…はぁ…魔法に反動で…疲れただけ…はぁはぁ…すぐ治る…」
ゆっくりと息を整えてすぐに落ち着いた。すると数人がローニャに駆け寄りローニャに労いと賞賛の言葉をかけた。
〈【ダンジョンガーディアン】ダンジョンの最新部を守るいわばボスモンスター。姿形はダンジョンによって違うがそのどれもが【A】ランク以上にも匹敵する力があり、並大抵の者はほぼ瞬殺される程の強さがある。そしてその【ダンジョンガーディアン】もまた【ラビリンス】が創り出した【ゴーレム】である。〉
休憩中マルスがローニャに話しかける。
「ローニャちゃん。さっきの動きは何だったんだ?」
「身体強化を無理やり引き上げたもの…あんまり使い過ぎると体に負担がかかる…」
「成る程…それであんな動きを…なんとなくは理解した、けどあんまり使い過ぎないように、今回は仕方ないとして、今後はよっぽどの事が無い限りは控えた方がいい」
ローニャは静かに頷いた。
その後、数分休憩し、遺体を追悼した後、部屋の奥の階段を降りて五層へ降りた。五層は特に何も無く、少し歩くとすぐに扉に辿り着いた。マルスは全員を確認すると、扉を開ける。扉の先には先程同様の広い空間と謎の結晶が部屋の奥に浮いていた。
扉を開けて部屋の前でマルスは動こうとしない、それに痺れを切らした青年が部屋に入ろうとする。
「おい、何止まってんだよ。さっさと入ろうぜ!」
と言い、皆を押し除けて部屋に足を踏み入れると、結晶が一瞬光を放つ。
「待て!」
マルスが咄嗟に青年を引っ張ると、青年の顔を光が掠めた。
「な!なんだ今の!?」
「君知らないのか?」
「なんか通ったね…」
「ああ…あの部屋の奥に有るクリスタル…あれが【ラビリンス】だ。あいつは部屋に何かが入って来た瞬間。無差別に光線を放って迎撃してくる。だから防御を張りながらじゃないと入れないんだ」
「なんだよそれ!早く言えよ!」
「ごめん…知ってると思って…とにかく、先ずは作戦を立てよう」
その後全員で話し合い、確実に倒せるように作戦を立てた。その際ローニャと少年は後ろで待機と成り、レックスは流れ弾から二人を守る事になった。
扉の前に立ち臨戦態勢になる。
「作戦開始!」
マルスの合図でルークが剣を構えながら前進する、ラビリンスがルークに集中攻撃を仕掛ける。光線を剣で受け止め注意を引く。その隙にマルスとリックがルークの後ろから出て、柱を盾にしながら回り込む。ラビリンスが狙いを近付いてくるマルスとリックに変える、その隙にルークが近付き、またラビリンスが狙いを変える、それを繰り返しながら、少しづつ近付いて行く。
ラビリンスが全方位に光線を放つ無差別砲を放つ。無差別砲で魔法を撃ち落とせ無くなると、魔術師二人が魔法で本体を狙う。魔法が当たりそうになると、ラビリンスは砲撃を止め、外装で本体を覆い、防御する。そうすることで、砲撃を一時的に停止させられる。その隙を逃さずマルス達が一気に距離を詰める。外装が開き瞬時に光線を放つ。目の前に居たルークだけに集中放火している間にマルスとリックが距離を詰め、そして力いっぱい剣を振り下ろす。
「はあぁー!」
二人の剣はラビリンスの本体に直撃し、ヒビが入る。ラビリンスはガタガタ振動し、光を放ち、そして弾け飛んだ。そうして見事ラビリンスは討伐された。
全員が喜びの声を上げ互いを褒め合う、一頻り喜びを分かち合った後、マルスが全員に号令を掛ける。
「ラビリンスは討伐された、ラビリンスの破片を回収次第、直ぐに撤収しよう!」
「了解!」
その後砕け散ったラビリンスの欠片を回収し終え、ダンジョンを脱出した。
ダンジョン脱出前
「ラビリンスのカケラって何に使うの?」
「ん?ああ…ラビリンスは魔石の塊みたいな物でね、魔力が沢山籠ってるんだ。スケルトンを倒すと魔石が出ただろう、あれはラビリンスの欠片なんだ。魔物を生み出すくらいの魔力だから、それなりに使い道が有る。人によっては喉から手が出るほどだ。使い道は…ゴーレムを作る際に核に使うとかかな。」
「そうなんだ…」
そんな話をしてダンジョンの出口に辿り着く、その後出口付近で青年に声を掛けられる。
「おい…ガキ!」
ローニャはその声に振り返る。
「お前…名前は?」
「…ローニャ…」
「そうか…俺は【ゼクト】だ…お前の名前覚えておいてやる」
そう言い残してゼクトは洞窟を出た。
「…?」
ローニャは首を傾げてあまり深く考えずに、そのままダンジョンを出た。
ダンジョンを脱出し馬車に乗り、帰路に着いた。馬車内でローニャが外を眺めていると少年が声をかけて来た。
「君…名前は何と言うんだ?一応覚えておいてやる」
「え…?…ローニャ…」
突然の事で驚きながら名乗る。
「僕は【ラッシュ・ノートン】だ覚えておけ!」
「あ…うん…」
「言っておくが僕は君なんか認めないからな!幾ら強くても君が僕より強いなんて有り得ないんだからな!」
「え…?あ…そう…」
「く…!ふん!」
「まあまあ…ちょっと落ち着いて…」
とクレアが割って入った。しかし
「おばさんには関係ありません!引っ込んでて下さい!」
「は?お姉さんでしょ!」
その後、馬車内がカオスな状態で街に向かって進み続けた。
数日後、街に到着し全員解散した。遺体は家族の元に送られた。その後数日は疲れを癒す為、クエストは受けず宿でダラダラと過ごしていた。しかし、どういうわけかラッシュに会うと、ラッシュは悪態を付いて来る。いい加減鬱陶しくなっていたローニャは、ギルドに行きロザリアに報告した。
「ロザリア…あいつ何とかして…」
「あいつ?ああラッシュくんの事?」
「あいつ…会う度に文句を言ってくる…さっきも言われたし…いい加減にしてほしい…」
「文句?ああ…あの子プライド高いからな~…そもそもあの子、この時間学園に居ないといけないはずなんだけどな…もしかしてサボり?ちょっと待ってね?ラッシュくーん」
とロザリアは突然ラッシュを呼んだ。ラッシュはその声に気付き、近寄って来る。側に来た途端また悪態をついて来る。
「何ですか?突然呼び出して。まさか君、大人に泣きついたんですか?全く子供ですね。困るんですよね僕は暇じゃ無いんです。一刻よ早く強くならないといけないので。」
饒舌に成り、喋り続けるラッシュにロザリアが笑顔で話掛ける。
「そんな事よりラッシュくん。君今日学園休みじゃ無いでしょ?良いのかな?こんな所でサボりなんかして。もしお母様に知られたら…」
とロザリアが言い放つとラッシュが突然動揺し始めた。
「な!そ…それは…その…今日は帰るとしましょう!お母さんには言わないで下さいね!」
ラッシュそう言い残してギルドを去って行った。
「多分これで大丈夫だと思うからいつも通りの生活を送れるよ」
「あ…うん…」
ローニャは状況を理解しきれずにいたが、あまり深くは考えないようにすることにした。
問題が一旦解決した所でロザリアがローニャに話し掛ける。
「さてと…どうする?クエスト受ける?」
「そうだ…これ」
とロザリアに依頼書を渡す。
「薬草採取?しかもすぐ近くの森だし、ほんとに良いのこれで?」
「うん…人の居ない所で息抜きしたい…」
と遠い目で言う。
「ああ…そっか…分かった…」
そう言ってロザリアは依頼を受理した。
依頼を受け、街から出る。目的地は街から三時間程の場所にある森に生える薬草を採取する事。ローニャは息抜きついでにその場所に向う。
珍しく馬車を使って目的地に向かった。目的地に着き、森に入って行く。そして目的の薬草を採取し鞄に詰める、その後二時間程森の中を散歩した。
森の散歩に満足して帰路に着く。その途中、歩いていると、猛スピードで走る馬車を見つけた。立ち止まってよく見てみると、どうやら馬が暴走しているようだった。見てしまっては放っては置けない、仕方無く助ける事にした。
ローニャはある程度近い場所に立ち、馬車を狙うように剣を構える、狙いを澄まし、剣を思い切り投げる。剣は馬の前ギリギリに突き刺さる。馬はそれに驚き、コントロールを失い転倒した。ローニャは馬車に近寄り、助けに向かった。
馬車の元に着くと見知った顔の御者が居た。
「あ…あの時の…」
ローニャの声に気付き、御者がローニャの方を向く。
「ん?お…おお!あん時の嬢ちゃん!久しぶりだな!何してんだ此処で!」
「依頼で…後、馬が暴れてたのが見えたから。」
「お?って事は…馬を止めてくれたのは嬢ちゃんか!いやー助かったよ!」
御者がローニャの肩を叩く。
「それより馬は大丈夫?」
「ん?ああ…ちょっと疲れてるみてーだが、幸い怪我は無かった。嬢ちゃんの腕が良かったのかもな!」
「いや…腕は関係無い…それよりなんで急に暴れ出したの?」
ローニャがそう質問すると御者は不思議そうにしていた。
「いやーそれが俺にも分かんねーんだよ…今まで普通に走ってたのに、急に暴れ出したんだ…」
(そういえば)
ローニャは御者が言った言葉にふと思い出した。森を散歩している時に一瞬感じた【何か】の気配を。ローニャはもしかしてと思ったが、御者が言っても分からないと言われるだけだと思い、敢えて言わなかった。
その後は御者に馬車を使うかと聞かれた為使う事にし、馬が回復した後馬車に乗って再び帰路に着いた。
帰路の途中、御者がこんな事を聞いて来た。
「なぁ嬢ちゃん、【聖国】の話し知ってるか?」
「?…知らない…せい国?」
「そっからか~…まあ神様を強く信仰してる国でな、其処で事件があったって話だ。なんでも【大聖堂】の宝物庫が誰かに荒らされたらしい。んで、居合わせた騎士が殺されたって話だ。」
「ふ~ん…知らない…」
素っ気ない返事をして適当に流す。
「まあ嬢ちゃんには関係無い話か。でも、一応注意しとけよ。」
「…そうする」
御者とそんな会話をし、少しして街に帰って来た。
「おいっと、着いたぜ。」
馬車を降り御者にお金を渡す。
「いや、いらねーよ。助けてくれた礼だタダで良いよ。」
「いや…流石に二回目は払うよ…」
「いいって気にすんな!」
「いや…でも…」
そんな譲り合いをし、結局ローニャは御者に金を無理やり支払い、別れを言い、ギルドに戻り依頼達成を報告した後、宿に帰った。
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異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
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山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
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⚠️超絶不定期更新⚠️
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
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1月5日 誤字脱字修正 54話
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拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
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